“静寂の中に意志が宿るシック”のスタイリングアイデアをコレクションルックから紐解く
“静寂の中に意志が宿るシック”は、ミニマルでありながら芯のあるスタイル。情報も感情もあふれる今だからこそ、ファッションは静かに語りはじめている。
本記事では、“静寂の中に意志が宿るシック”を着こなすべく、ブランドのルックに注目。ブランドがコレクションのムードやスタイリングを提案するために作っているルックは、スタイリングのプロのテクニックを手軽に勉強することができ、いわば「スタイリングのバイブル」である。今日は、“静寂の中に意志が宿るシック”のスタイリングバランスを、コレクションのルックから紐解いていく。
“ブラウンファー”がもたらす、温もりと気品
今季注目したいのは、深みのあるブラウンのファーがもたらす静かな華やかさ。ロングやショートのファージャケット、マフラー、そしてバッグまで、シックな装いにさりげない立体感と柔らかさを加えるアイテムが揃う。
とりわけブラックとの相性の良さは秀逸で、秋冬の定番モノトーンにぬくもりと軽やかさを添えるスタイリングに最適。一方で、バーガンディやマスタード、ブルーグレーといった色物を取り入れたスタイルにも、ブラウンファーが落ち着きをもたらし、全体を優しく引き締めてくれる。
ファー特有の存在感も、ブラウンというニュートラルなトーンで取り入れることで、過剰にならず、むしろ静かな品格として際立つ。大ぶりなシルエットでリラックス感を出すか、小物でさりげなく効かせるか。スタイルに“足し引き”のバランスをもたらす、今季らしいファーのあり方がここにある。

JIL SANDER 2025AW COLLECTION RUNWAY

GABRIELA HEARST 2025AW COLLECTION RUNWAY

FENDI 2025AW WOMEN’S & MEN’S COLLECTION RUNWAY

GANNI 2025AW COLLECTION RUNWAY
“モノクロレース”が映す、軽やかなセンシュアル
今季のレースは、甘さや装飾性で見せるのではなく、“静かな色気”を宿す素材として再注目されている。中でも印象的だったのが、ブラックやホワイトで構成されたモノクロームのレースルック。色数を抑えた分、透け感や光の抜けが際立ち、装いに軽やかさと奥行きを添えている。
たとえば、ブラックのテーラードジャケットにホワイトの総レースドレスをレイヤードすることで、かっちりとした印象を優しくほどき、コントラストの中にセンシュアルな余白が生まれる。また、総レースのタイツや、ジップアップジャケットの裾から覗くレースも、単調になりがちな秋冬のスタイリングに動きと柔らかさを与えてくれる。
あくまで主張しすぎず、でも確実に効かせる。そんな“モノクロレース”ならではの静かな説得力が、センシュアルの新しいかたちを提示している。

KANAKO SAKAI 2025AW COLLECTION RUNWAY

FUMIKA_UCHIDA 2025AW COLLECTION

ISABEL MARANT 2025AW COLLECTION RUNWAY

JIL SANDER 2025AW COLLECTION RUNWAY

HERSKIND 2025AW COLLECTION RUNWAY
“テクニカルベルト”が効かせる、モードな輪郭
シンプルでそぎ落とされた今季のスタイリングを、グッと引き締め、シルエットにメリハリを生む“テクニカルベルト”が、静かなインパクトを放っている。
ポイントは、デザインや使い方にひと工夫あるベルトを選ぶこと。細ベルトなら、2〜3本を重ねてレイヤードすることで、印象的なテクスチャーや奥行きをつくり出すことができる。あえてベルトそのものを“装飾”に変えるような感覚で取り入れるのが今の気分だ。
一方、太ベルトやハーネスデザインのベルトは、テーラードジャケットやシンプルなコートの印象をガラリと変え、スタイルに緊張感と新しい輪郭を与えてくれる。ウエストをマークするだけではなく、着こなしの重心やバランスそのものを操作する“仕掛け”として機能するのが、このアイテムの真価だ。
過剰に盛るのではなく、フォルムに意志を宿すように効かせる。そんな今季らしい使い方が、ベルトをよりモードに、より自在な存在へと導いている。

TOD’S 2025AW WOMEN’S COLLECTION RUNWAY RUNWAY

Max Mara 2025AW COLLECTION RUNWAY

ISSEY MIYAKE 2025AW COLLECTION RUNWAY

FETICO 2025AW COLLECTION RUNWAY
静かに主張するアイテムこそ、今のスタイルに必要な強さを持っている。
ファーの柔らかな存在感、レースの軽やかなセンシュアル、そしてベルトの引き締め。
どれもが過剰ではなく、確かな余韻を装いに残す。
控えめに見えて、奥行きと空気を生むアイテムをどう効かせるか。
それこそが、今季の“シック”をつくる鍵である。

