ファッション業界人が注目しているブランド図鑑 vol.4【H 〜 I】
ここでは、ファッション業界人100名が注目しているブランドを紹介。
大御所ブランドから、新進気鋭ブランドまで、業界人ならではの視点にも注目したい。
HATRA — 徳永 啓太 / ライター
<HATRA(ハトラ)>はファッション・デザイナーであり、研究者でもあると私は感じています。
その根拠としてブランドを象徴する2種類のアイテムを取り上げます。
1つ目はパーカー。ブランド創設時のコンセプトである「部屋」を中心とした居心地の良さを追求し、布団の中に包まるような心地よさと、外部からの情報を遮断しパーソナルスペースを保管してくれるフードウェアは、現代人にとってどこにいても居心地の良いアイテムでしょう。”パーカーをラグジュアリーに”素材からポケットの位置、ジップの選択などの機能美。口元まで覆うボリューム感とフードの形状を何シーズンもブラッシュアップを重ねた後、現在の形に完成しています。私はパーカーという庶民的なアイテムへのデザイン研究と、ファッションである以上ラグジュアリーに昇華させるデザイナーとしての姿勢に感銘を受けました。外にいてもパーソナルスペースが必要という現代の感覚にも共感し、<HATRA>のパーカーを数点所有しています。
2つ目はニットウェア。ファッションテック企業「Synflux(シンフラックス)」との協業で、2020年からスタート。毎シーズンテーマに合わせ、未知の世界のようでどこか既視感のある絵柄を生成AIと対話しながら展開。色鮮やかな絵柄なのに使用する糸は6色のみで再現。最低限の糸数で多彩で多展開を可能にし、人間の欲望を最大限に叶えたアイテムと言えます。
この活動はファッションの領域を超え、2022年に東京藝術大学美術館で開催された「新しいエコロジーとアート」展に選ばれる。坂本龍一やスプツニ子!など名だたるアーティストが参加している中でファッションデザイナーは<HATRA>のみ。
2000年以降、楽観的に生産と消費を繰り返した人類の皺寄せが2024年に生きる我々にきています。物作りとして社会問題に向き合いながらも人類の営みを豊かにするファッションを提供するために最新技術と模索しながら、現代人にとって「着心地」の先にある「居心地」を提案。
ラグジュアリーという概念に軸足をおきながら、デザインと研究を同時並行で進めている<HATRA>は、最新テクノロジーや現代アート、社会問題など枝分かれした情報を服に集約し、我々に伝えてくれる唯一無二のファッションブランドです。
HATRA
https://www.instagram.com/hatroid/
Hedie.+ — 秋元 剛 / AKIMOTO Inc. ディレクター
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私がルックのディレクションとスタイリングを手掛けた2024春夏コレクションよりデビューした<Hedie.+(エディクロス)>。ウィメンズウエアのデザイナーとして長年経験を積んだ女性ディレクターによって生まれた初のメンズブランドです。男性アイテムの限界からくる不自由さに対して、より自由なファッションのあり方を提案しています。ジャンル・ジェンダーに囚われないアイテムラインナップが特徴です。
Hedie.+
https://instagram.com/hedie.cross_official/
HIROMI YAMAMOTO — 松尾 梓 / KIAM PARLOUR オーナー
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ハンドクラフトジュエリーブランドの<HIROMI YAMAMOTO(ヒロミ ヤマモト)>は、想像上の生き物や植物など多岐にわたるユニークなモチーフが小さなパーツに施されています。無垢でかわいらしい印象ですが、たしかな技術によって品の良さを感じる所が魅力です。細かな技法と愛おしさを感じるいびつさが絶妙で、不完全な美しさを感じる唯一無二のブランドだと思います。作品のイメージに合わせて作られたパッケージの絵にもこだわりを感じ、さらに惹き込まれます。
HIROMI YAMAMOTO
https://www.instagram.com/_hiromi_yamamoto_/
HODAKOVA — YUI YAMANAKA / make up artist
<HODAKOVA(ホダコヴァ)>は、スウェーデンのストックホルムを拠点に2021年に設立されたブランドです。
今年の「LVMHプライズ」でグランプリを獲得したことで知り、すぐにファンになりました。
サステナブルであることをコンセプトに、様々なものを服や小物に再構築しています。素材感やアシンメトリーなデザイン性は唯一無二ですが、全体のカラーはモノトーンやアースカラーが多いのでリアルクローズに取り入れやすく、服好きとしては良いところ取りです。パリのコレクションでもとても素敵なクリエイションを展開されていたので、今後の期待も込めてとても注目しています。
HODAKOVA
https://www.instagram.com/hoda_kova/
HOLIDAY — 春海 茜 / Harumi Showroom PR Director
2008年にスタートし、2016年にリニューアルをした<HOLIDAY(ホリデイ)>。“Borderless(ボーダーレス)に固定概念や既成概念にとらわれず自由にファッションを楽しむ”をコンセプトに今を提案しています。カジュアル・アウトドア・スポーツ・テーラードのカテゴリが得意で、その中にフリルやラッフル、柄などで大人の私でもチャレンジできる可愛さを取り入れてくるニクいブランドです。また、<HOLIDAY>が運営するフラッグシップサロン「OFFICE」では、スタッフによる日常のスタイリング提案がとても秀逸で、Instagramに上がるコーディネートと写真に“センスがいいなあ”とPR目線でも注目しています。2023年の9月にはリニューアル移転オープンをしており、より居心地の良い空間になっています。
HOLIDAY
https://www.instagram.com/holiday_pr/
INSCRIRE — 稲垣 大貴 / alpha PR
元々ウィメンズのブランドとしてスタートした<INSCRIRE(アンスクリア)>は、ワーク、ミリタリー、トラッド、ヴィンテージなど、伝統あるスタイルを構築し時代にとらわれない考え方をベースに提案しています。トレンドというよりは、トラディショナルなデザインや素材を洋服に落とし込むことで、フォーマルとカジュアルを結びつけるようなアイテムが魅力です。2021春夏からはメンズの展開をスタートし、ものづくりの本質を理解する女性デザイナーの感覚と視点で作る洋服にとても注目してしています。
INSCRIRE
https://www.instagram.com/inscrire_official/
IRENISA — 坂神 大地 / THE WALL Sales Manager
<Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)>出身の小林さんと<support surface(サポートサーフェス)出身の安倍さんのデュオによるブランドです。2020秋冬にメンズブランドとしてデビューしたのち数々の賞を受賞。すでにメンズ市場では人気のブランドですが、2025春夏から満を持してウィメンズコレクションを発表しました。元々ウィメンズにバッグボーンを持ち、パターンや企画にも精通しているお二人なので、メンズのデザインをそのままサイズダウンさせるのではなく、ウィメンズウェアだからこそ活かせる素材やこだわりのパターンによってファーストシーズンから非常に洗練されています。すでに高感度なショップから多くのオファーがあり、大人の女性シーンでこれから話題になってくると確信しています。
IRENISA
https://www.instagram.com/irenisa_official/
ISLA DE GAR — Hiroko Aoyama / Overseas Brands’ PR for Japan, Translator, Writer
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2024春夏のパリ・ファッション・ウィーク期間中に開催されたポップアップで<ISLA DE GAR(アイラ ド ガー)>を知りました。この大人かわいいバッグを見た時、サテンの上品な色つやところんとしたフォルムがまさにわたし好みで、一瞬で心を奪われました。新しいカラーやヘアアクセサリーも増えていて、ワクワクが止まらない注目ブランドのひとつです。
ISLA DE GAR
https://www.instagram.com/isladegar/