「アルベルト・ヨナタン・セティアワン− Sugar Poetry」ZENBI-鍵善良房-で開催中、砂糖と陶が織りなす幾何学の詩情がひらく
鍵善良房で三世紀近く受け継がれてきた菓子作りの主原料である砂糖に着目し、和三盆と陶土という二つの素材を往還させながら、反復的な幾何学の連なりを立ち上げる展覧会である。
砂糖を手彫り木型に押し固めてさまざまな動植物の形を作る老舗の営みから着想し、作家は同モチーフを独自の素材・技法に置き換え、新たな解釈として提示する。ドローイング、映像、インタラクティブなパフォーマンスまで、素材が「文化的な意味」を帯びていく、その儚くも繊細な変容を、多層的に視覚化する試みである。
展示では、微細な粒子をもつ日本の砂糖(和三盆)と、作家が長年扱ってきた陶土が呼応する。反復配置されたモチーフは、親密さと違和感をたがいに喚起し、静謐で瞑想的な気配を帯びる。
「Sugar Poetry」のタイトルが示す“詩”は、砂糖のようにありふれた材料が文化的な意味を持つものへ変わる、その相反する側面の変化の過程を映し出している。代表作のテラコッタ群像《Concordance & Continuum》(2025)もあわせて紹介され、空間のスケールとリズムで鑑賞者の知覚を静かに揺らす。

《Concordance & Continuum》 2025年 テラコッタ 97×196×2cm 撮影=宮島径 ©Albert Yonathan Setyawan, Courtesy of the artist and Mizuma Art Gallery

《Sugar Poetry #6》 2025年 和三盆、餅粉、水飴、水 35 x 35 x 2.5 cm 撮影=伊藤信
会期中は、作家によるギャラリートークや、パフォーマンスの開催も予定されている。展覧会オリジナルグッズに加えて、会期限定の特製菓子がmuseum shop Zplusに並ぶ予定で、菓子文化を受け継いできた場ならではの体験が期待できる。
砂糖と陶土という身近な素材が織りなす「詩」は、儚さと永続性のあわいに漂いながら、文化が生まれる瞬間をそっと映し出している。
【作家プロフィール】
アルベルト・ヨナタン・セティアワン
1983年インドネシア生まれ。2012年バンドン工科大学修士課程修了、2020年京都精華大学大学院博士号取得。第55回ヴェネチア・ビエンナーレ(2013)、「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現在まで」(2017)などに参加。近年はジョグジャ国立美術館での個展「Capturing Silence」(2023)、「第11回アジア・パシフィック・トリエンナーレ」(2024–25)に出品。現在は東京を拠点に活動。
Instagram
【開催情報】
展覧会名:企画展「アルベルト・ヨナタン・セティアワン− Sugar Poetry」
会期:2025年8月9日(土)~12月21日(日)
会場:ZENBI-鍵善良房- KAGIZEN ART MUSEUM(〒605-0074 京都市東山区祇園町南側570-107)
開館時間:10:00~18:00(最終入館17:30)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)
観覧料:一般1,000円/大学・高校・中学生700円/小学生以下無料
主催:ZENBI-鍵善良房-
特別協力:ミヅマアートギャラリー
企画:井村優三(イムラアートギャラリー)
TEL:075-561-2875
URL:https://zenbi.kagizen.com
Instagram