ステフ・ファンによる日本初個展「When an Encounter Takes Place」、9/10(水)よりペロタン東京で開催
「物質性の詩人」と称されるファンは、ファウンド・オブジェクトや可塑性のある素材を用いた彫刻やインスタレーションを通じて、普遍的な人間の経験をかたちにする。記憶や場所、時間を行き来するような作品群は、地中海の海辺での安息や、家族との集い、日本の街角といった情景を織り交ぜながら、観る者を静かで詩的な旅へと誘う。
展覧会タイトル「When an Encounter Takes Place(出会いが起こるその時)」には、解釈の余地が多分に含まれている。出会いの不確かさと希薄さを示唆する一方で、異なる文化や背景、物事が交差する無限の可能性への希望も読み取れる。

Steph Huang, Late Night Gas Station, 2025. Hand-blown glass, mild steel, 40 × 25 × 25 cm. Photography: Chi-Hung Chu. Courtesy of the artist and Perrotin.
ブロンズやコンクリートを用いた《Earth, Wind, Fire》(2025)は、家族や友人との集いの記憶、そしてバーベキューの煙や匂いを思い起こさせる作品。重なり合う素材から立ち上るのは、音もなく記憶の奥に沁み込むような、あたたかな光景だ。

Steph Huang, Earth, Wind, Fire, 2025. Painted mild steel, bronze, concrete, tin, 43 × 52 × 40 cm. Photography by Mark Woods. Courtesy of the artist and Perrotin.
《A Pipe Dream》(2024)は、金属パイプの上に連なるガラス球体が、流れる水のように展示空間に静かなリズムを与える。人の記憶や夢が泡となって漂うような、儚さと希望の入り混じった存在感が、観る者をじっと立ち止まらせる。

Steph Huang, A Pipe Dream, 2024. Powder-coated mild steel, fishing cable, hand-blown glass, 11 × 413 × 9 cm. Courtesy of the artist and Perrotin.
《Moon Exploration》(2024)は、月や街灯といった照明装置を超えて、視覚だけではない感覚を介した出会いのあり方を示唆する。ガラスと金属という素材が呼び起こす感触や気配が、静かにその意味を問いかけてくる。

Steph Huang, Moon Exploration, 2024. Mild steel, hand-blown glass, light, 38 × 39 × 30 cm. Photography by Mark Woods. Courtesy of the artist and Perrotin.
ステフ・ファンの作品群は、視覚を超えた感覚体験を通じて、鑑賞者の感情や記憶、時間の感覚に優しく揺さぶりをかける。都市の中にあって、忘れかけた感受性を呼び覚ますような展覧会になりそうだ。
【プロフィール】

Photo ©Sophie Stafford. Courtesy of the artist and Perrotin
ステフ・ファン
1990年台湾生まれ。現在はロンドンを拠点に活動。2021年にロイヤル・カレッジ・オブ・アート彫刻科修士課程を修了。近年の個展に「Lili Deli」(台北市立美術館、2025年)、「See, See Sea」(テート・ブリテン、ロンドン、2024年)など。2023年にはマーク・タナー彫刻賞とヘンリー・ムーア財団アーティスト賞を受賞。2022年に台北美術賞のグランプリを受賞。
【開催情報】
展覧会名:When an Encounter Takes Place
会期:2025年9月10日(水)〜10月25日(土)
会場:ペロタン東京
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F
開館時間:火曜〜土曜 11:00〜19:00
休館日:日曜・月曜
観覧料:無料