武田は、偶然に生じたシミや傷が呼び起こすイメージを拾い上げ、そこから広がる感覚や記憶を絵画として定着させてきた。幼少期を過ごした田舎の森での体験は、視覚だけでなく、音や匂い、触感を通じても作品に立ち現れる。

絵を描く行為を「発掘」に例える武田にとって、制作は言葉や分類によって失われた無意識の領域を再び掘り起こす営みでもある。本展に寄せられたテキストでは、ストロークやドリップが重なり浮かび上がる「物」や「音」、光が差し込む森の一角、水底から舞い上がる濁りなど、多様な感覚の行き来が語られる。

写真や映像、パフォーマンスなど多様なメディアを経て、近年は絵画に焦点を当てる武田。本展では、約25点の新作ペインティングと2点のドローイングが並び、素材との対話から立ち上がる生成的なイメージが来場者を迎えるだろう。

武田龍　Ryu Takeda quetzalcoatl 2025 Oil on canvas 182.0 x 277.5 cm RT-Pa-25-001 Photo by Osamu Sakamoto © Ryu Takeda, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

武田龍　Ryu Takeda horus 2025 Oil on canvas 50.4 x 73.0 cm RT-Pa-25-002 Photo by Osamu Sakamoto © Ryu Takeda, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

武田龍　Ryu Takeda crinoids / partus / lethocerus / walrus 2025 Oil on canvas 116.8 x 90.4 cm RT-Pa-25-004 Photo by Osamu Sakamoto © Ryu Takeda, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

武田龍
1989年茨城県生まれ。2016年に武蔵野美術大学造形学部彫刻学科を卒業。現在は東京を拠点に活動。主な個展に「Griffin」（LAVENDER OPENER CHAIR、東京、2023）、「Drawings」（LAVENDER OPENER CHAIR、東京、2023）、「Devonian Touch」（TAV Gallery、東京、2024）。主なグループ展に「RANZANSTUDIO Presents」（ターナーギャラリー、東京、2019）、「どうぶつえん in TOKAS 2021」（TOKAS、東京、2021）、「HANNAH」（parcel、東京、2024）、「Futurama vol.1」（FOAM Contemporary、東京、2025）。KOSAKU KANECHIKAでの個展は今回が初となる。
Instagram：＠takedaron

武田龍展「Oracle Bone」
会期：2025年8月16日（土）− 9月27日（土）
※8月16日（土）17:00〜19:00 オープニングレセプション
会場：KOSAKU KANECHIKA
住所：東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA ART COMPLEX I 5F
開廊時間：11:00−18:00
休廊日：日・月・祝
入場料：無料
公式サイト
Instagram：＠kosakukanechika