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AIには生み出せない、デザイナーの想いや意思から生まれるクリエイション|Rakuten Fashion Week TOKYO 2024S/S

Sep 16, 2023
2023年8月28日~9月2日に実施された Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 S/S。
2024年度のテーマは「OPEN,FASHION WEEK」。
ファッションウィークでは初めてキーヴィジュアルをフル3DCGで作成し、AIの進化など多様化する社会や価値観とテーマを象徴するモデルとして、AIやCGを駆使して表現された。
また、キービジュアルのアート展覧会「生成AIと解放」も実施し、一般のお客様にもフル3DCGのキーヴィジュアルを発表する機会を設けた。

AIには生み出せない、デザイナーの想いや意思から生まれるクリエイション|Rakuten Fashion Week TOKYO 2024S/S

Sep 16, 2023 - FASHION
2023年8月28日~9月2日に実施された Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 S/S。
2024年度のテーマは「OPEN,FASHION WEEK」。
ファッションウィークでは初めてキーヴィジュアルをフル3DCGで作成し、AIの進化など多様化する社会や価値観とテーマを象徴するモデルとして、AIやCGを駆使して表現された。
また、キービジュアルのアート展覧会「生成AIと解放」も実施し、一般のお客様にもフル3DCGのキーヴィジュアルを発表する機会を設けた。

生成AIやchatGPTが身近になり人間の仕事だけでなく、
「創造力」までAIに奪われる日が来るのかという議論が活発化している。
しかし、AIは本当に人間の脅威になるのだろうか。

故坂本龍一氏は生前「音楽にAIは必要ない」と宣言。
人が楽しむために勝手に奏でた音が「音楽」になる
音楽は、暇を埋めるための「遊び」であり、そこに“効率化自動化”の価値はないという。

一方で、AIで過去のアーカイブから新たなデザインを考えるブランドが出てきているように、AIを真正面から活用する事例も出てきている。

AIは、過去のデータから統計的に“もっともらしい”回答を与えてくれる。
しかし、AIの活用が広がれば広がるほど、AIには決して作り出すことのできない“デザイナーの本人の意思”に価値が生まれてくる。デザイナーから生み出される“非合理的な部分やの泥臭さい部分”は、返って魅力的に映る。
「人生の余白に彩りをつける営みがファッション」であるならば、なおさらそうだろう。
余白とは、定義はなくあいまいなもの。我々、人間は“数値化できない、言語化できない何か”にとても魅力を感じる生き物だ。

確かに、AIは、それなりのものは作るのかもしれないが、
本当に感動するものは、“デザイナーの想い、意思”がクリエイションに反映されているものなのかもしれない。

Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 S/S の中で、
AIには決して作ることのできない、デザイナーの意思が表現され、心を動かされたブランドを紹介したい。

 

<SHINYAKOZUKA(シンヤコヅカ)>

まずはショーのスタートにエレファントカシマシの「夜月の散歩」が流れ、観客の心を鷲掴みにした。
連日熱帯夜が続いていたが、ショー当日は風が吹き珍しく少し肌寒い。そして月夜と、全てが演出に味方をした。

コレクションテーマである「夜の散歩」は、例えばすぐ帰宅するのをやめて、少し遠回りしたり、暇つぶしに缶ビールを買ったり、少し無駄なことをしながら帰宅したことは、誰もが経験したことがあるだろう。シンヤコヅカのショーのランウェイは、そのような観客一人一人が体感した思い出の「散歩」に置き換えられ、各々の「心」と繋がった。

初めて見るコレクションでも感傷的になった人も多いだろう。目的がなければ「不要」な時間としまう散歩。しかし人間には無駄なことによって、感情をコントロールしたり、鬱憤を晴らしたりできる生き物だ。効率化・時短・根拠、全てを求められる社会において、何もない、理由もない、気の向くままという時間は必要不可欠。

それはファッションも同じなのではないか。流行り・トレンドよりも、何より自分が好きと思えるもの。自分が好きになれる服。24SSのコレクションには彼が好きな物が詰まっているように感じた。デザイナー自身で描いた風景画がプリントされたパーカ。少し背伸びしたよそ行きのジャケット、近くのコンビニ間隔のスウェット、ゴールドのカーディガン。どんなシチュエーションでもデザイナー小塚氏がそばにいてくれているようだ

夏の夜風が心地よい日の空気は、孤独の寂しさを優しく包み込んでくれる。それはシンヤコヅカが散歩で体験した感情が反映されたコレクションと同じなのかもしれない。フィナーレの曲「友達がいるのか」は最初一人の散歩から僕たちがいるよと寄り添ってくれているようだった。

<YOHEI OHNO(ヨウヘイオオノ)>

彼のコレクションの素晴らしさは、見た目の奇抜さ「バズり」効果を狙ったわけではなく、デザイナーの人生において「切ない時間」「掘り起こしたくない思い出」を布を使い、着れるモノに変換し、ある種のパーソナルな恥部を観客の前でさらけ出したことだ。もしかしたら、制作している最中、手が震えて制作の手が止まる事もあっただろうと察する。

またヨウヘイオオノは、ブランドを初めてから約10年選手のプロ。今回ファッションウィークに参加しているブランドの中でも注目株としてはトップクラス。これまでどおり安定したコレクションを発表しても非難されないだろう。

そのような中で彼は「画一化したデザインは安心で良い」という世の中に警鐘を鳴らしたのだ。

それは例えば平成が生んだ携帯電話(ガラケー)。デザインに遊びがあり、新作ごとにボタンの色・形を変え装飾できるストラップも豊富、折りたたみからスライド式になったり、私たちは新しいデザインへ期待を持ちワクワクしていた。現在のスマホはガラケーよりもはるか上のスペックだが、デザインは画一的になっている。いまの技術と比べると「ダサい」と思われるかも知れないが、人によっては「愛着」に転じる。

愛着は過去の経験から影響されるため数値化できない感情。私が24SSのコレクションに心を動かされたのは、ヨウヘイオオノらしい着眼点が光って見えたからであろう。

<fluss(フルス)>

JFW NEXT BRAND AWARD 2024 EXHIBITION 審査員特別賞した<fluss>。ファッションウィークの本会場であるヒカリエにて特別展示を行った。

デザイナー児玉氏が作り出すコレクションは、男性の可愛さを引き出す魅力がある。ジェンダーレスとは違う、繊細で未成熟な少年のピュアさ。従来の男性像とは筋肉質であり強いというのがいわゆる「男らしさ」である。現在でもその象徴は社会で色濃く残っているが、多様化の時代に違和感を私は持っている。フルスは、男性性を持ちながらも中に秘めている「可愛い男性」を肯定しているように感じた。ブルマ型スラックス、ドットで草木花が施されたニット、シェアーなパンツ。男性服としては馴染みがないものの、彼の手にかかれば違和感がなく、むしろ男性服の幅を広げているように感じた。

中でも透け感のあるニットはスパンコールが編まれており、煌びやかで色気がある。「男性も着れるニットドレスですか?」と尋ねると「丈の長いトップスです」とデザイナー児玉氏は回答。アイテムの呼び方によって着る側の印象が変わる。「ドレス・ワンピース」となればまだハードルが高いが「丈が長いトップス」だと思えば興味が湧くだろう。

ドレスと丈の長いトップスの境界線はあいまいで、誰も定めてないからこそ、そのあいまいな空間に魅力と可能性を秘めている。大事なことは呼び方ではなく自分で着こなすことだ。ルックのスタイリングは全て児玉氏が行なっているそうだ。ぜひ1度は彼が作るショーを拝見したいものだ。

 

SHINYAKOZUKA 2024SS COLLECTION RUNWAY
YOHEI OHNO 2024SS COLLECTION RUNWAY
fluss 2024SS COLLECTION LOOK

  • text : Keita Tokunaga

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