生々しさと違和感のあいだに触れる大規模個展「ロン・ミュエク」が、森美術館で開催
(《イン・ベッド》2005年 ミクストメディア 162 × 650 × 395 cm 所蔵:カルティエ現代美術財団 展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウル館、2025年 撮影:ナム・キヨン 画像提供:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館)
オーストラリア生まれ、英国を拠点に活動するロン・ミュエクは、革新的な素材と高度な技術によって、驚くほどリアルな具象彫刻を生み出してきた作家だ。実物より極端に大きく、あるいは小さくスケールを操作された人物像は、現実に迫る質感を持ちながらも、どこか現実からずれた感覚を呼び起こす。
本展では、初期から近作まで約11点を紹介。総制作数が50点ほどとされる寡作の作家にとって、これほどまとまった作品群が一堂に会する機会は稀であり、その多くが日本初公開となる。
・約18年ぶりの日本での大規模個展
・初期作から近作までを網羅的に紹介
・展示作品の多くが日本初公開
会場の核となるのは、巨大な頭蓋骨を積み重ねたインスタレーション《マス》(2016–2017)。約100点の頭蓋骨で構成されるこの作品は、展示空間に応じて再構成され、森美術館でも約300㎡にわたるスケールで展開される。個々に異なる表情を持ちながら、集合体として迫ってくるその光景は、生命や死、個と群の関係といった根源的な問いを静かに浮かび上がらせる。

《マス》 2016-2017年 合成ポリマー塗料、ファイバーグラス サイズ可変 所蔵:ビクトリア国立美術館(メルボルン)、2018年フェルトン遺贈 展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウル館、 2025年 撮影:ナム・キヨン 画像提供:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館
また、《買い物中の女》(2013)や《エンジェル》(1997)といった作品では、日常の中に潜む疲労や孤独、あるいは神話的イメージの反転が繊細に立ち上がる。いずれも精巧な造形ゆえに現実と見紛うほどでありながら、その視線やスケールの違和が、鑑賞者の感覚を揺さぶる。

《買い物中の女》 2013年 ミクストメディア 113 × 46 × 30 cm 所蔵:タデウス・ロパック(ロンドン・パリ・ザルツブルク・ミラノ・ソウル) 展示風景:「ロン・ミュエク」韓国国立現代美術館ソウル館、 2025年 撮影:ナム・キヨン 画像提供:カルティエ現代美術財団、韓国国立現代美術館
さらに、写真家ゴーティエ・ドゥブロンドによる制作過程の記録も展示される。長年にわたり作家のスタジオを追い続けた写真や映像からは、ミュエクの作品がどのように生まれるのか、その静かな時間の蓄積に触れることができる。
リアルであるほどに、どこか現実から滑り落ちていく感覚。ミュエクの彫刻は、私たちの身体や存在そのものを見つめ返す鏡のようでもある。
そのまなざしと対峙する時間は、自分自身の輪郭をあらためて確かめるような体験へとつながっていく。
作家プロフィール
ロン・ミュエク(Ron Mueck)
1958年オーストラリア生まれ、英国在住。広告や映画の分野で活動した後、1990年代半ばより彫刻制作を開始。人間を精緻に観察し、哲学的な思索を重ねた具象彫刻で国際的に評価される。作品は孤独や不安、回復力といった人間の内面を掬い上げる。
キュレーター
近藤健一(森美術館シニア・キュレーター)
チャーリー・クラーク(本展アソシエイト・キュレーター)
キアラ・アグラディ(カルティエ現代美術財団キュレーター)
開催情報
展覧会名:ロン・ミュエク
会期:2026年4月29日(水・祝)~9月23日(水・祝)
会場:森美術館
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階
開館時間:10:00~22:00(火曜日は17:00まで、ただし一部日程は22:00まで)
※最終入館は閉館30分前まで
休館日:会期中無休
入館料:一般 平日2,300円/土日祝 2,500円 ほか(日時指定券制)
ウェブサイト
Instagram:@moriartmuseum

