漆が呼吸し、光を放つ瞬間に触れる、「田中 信行 触生 — 漆黒・呼吸する光」がケンジタキギャラリー名古屋で開催中
1959年に東京で生まれ、現在は金沢を拠点に活動する田中信行は、長年にわたり漆という素材に向き合いながら、その本質に迫るような作品を生み出してきた。今回は、壁面作品の新作と近年手がけた大型作品を織り交ぜ、漆のもつ存在感と静かな力を体感できる展示内容となっている。
田中にとって漆は、単なる素材ではなく「木の血」のようなもの。生命的で、呼吸し、変化を続ける存在だという。彼の制作は、漆が乾くまでの長い時間を「待つ」ことを含んだ、まさに対話のプロセスだ。そうした時間の中で立ち上がる感覚を、田中は「触生(しょくせい)」と呼び、それを形にしたものが作品として立ち現れてくる。
滑らかな漆黒の表面に内包される光と時間。作品は祈りのような行為の痕跡であり、見る者とのあいだに新たな関係を立ち上げる「開かれた場」として空間に存在する。その空間に身を置くことで、自らの呼吸もまた、漆とともに重なっていくような感覚が生まれるだろう。
深く静かな光に包まれるような体験が、訪れる人の感覚にゆっくりと沁み渡る。
田中信行
1959 東京都生まれ
1983 東京芸術大学美術学部工芸科卒業
1985 東京芸術大学大学院美術研究科漆芸専攻修了
2003 第14回タカシマヤ文化基金タカシマヤ美術賞受賞
2012 第18 回MOA 岡田茂吉賞大賞受賞
2021 第1回蘇州国際工芸トリエンナーレ優秀賞受賞
金沢市在住
ホームページ
Instagram:@nobuyuki1504
田中 信行 触生 — 漆黒・呼吸する光
会期:2025年10月4日(土)〜11月15日(土)
会場:ケンジタキギャラリー
住所:愛知県名古屋市中区栄3-20-25
開館時間:11:00〜13:00、14:00〜18:00
休館日:日・月・祝
観覧料:無料
TEL:052-264-7747
公式サイト
Instagram:@kenjitakigallery