アジア初の美術館個展「ルイジ・ギッリ 終わらない風景」、東京都写真美術館で開催中
本展は東京都写真美術館の開館30周年を記念して開催され、ギッリが写真を通して問い続けた「見るという行為」に静かに触れることができる。

《グリッツァーナ・モランディ、1989-90》〈ジョルジョ・モランディのアトリエ〉より 1989–90年 東京都写真美術館蔵 ©Heirs of Luigi Ghirri
測量技師としてのキャリアを経て、1970年代より本格的に写真家として活動を始めたギッリにとって写真とは、現実世界の複製ではなく、フレーミングされた「見られた」視覚的断片によって風景を作り出すための手段だった。彼はこの表現手段を通じて、通り過ぎる風景の中に現実とイメージの関係性を見出し、「在」と「不在」、外的世界と内的世界について思索を深めようとした。

《カプリ、1981》〈イタリアの風景〉より 1981年 ©Heirs of Luigi Ghirri

《モデナ、1978》〈静物〉より 1978年 ©Heirs of Luigi Ghirri
本展では、初期の代表作〈コダクローム〉〈静物〉シリーズをはじめ、故郷レッジョ・エミリアや画家ジョルジョ・モランディ、建築家アルド・ロッシのアトリエを撮影した作品など約130点を紹介。また、妻でありグラフィック・デザイナーとしてギッリの活動を支えたパオラ・ボルゴンゾーニの書籍デザインや作品資料も併せて展示されており、写真家としてのギッリを立体的に読み解く手がかりとなっている。

《ザルツブルク、1977》〈F11、1/125、自然光〉より 1977年 ©Heirs of Luigi Ghirri

《レッジョ・エミリア、1985》〈イタリアの風景 – エミリア通りの散策〉より 1985年 ©Heirs of Luigi Ghirri
さらに会期中は、2022年公開のドキュメンタリー映画『Infinito』(無限の意)を日本語字幕付きで日本初公開。撮影風景や関係者のインタビューを通して、ギッリの作品世界への理解を深める内容となっている。上映後にはギッリ作品に造詣が深いゲストによるアフタートークも開催される予定だ。
一見無造作に切り取られたような風景に潜む、視覚と思考の連なり。ギッリが写真を通して見出そうとした「終わらない風景」が、東京・恵比寿の展示室で静かに示されている。
【作家プロフィール】
ルイジ・ギッリ Luigi Ghirri(1943-1992)
イタリア・レッジョ・エミリア県スカンディアーノ生まれ。1970年代より本格的に写真制作に取り組み、色彩や空間に対する美的感覚とユーモアを融合させたカラー写真を制作。自身で出版社を立ち上げるなど、多岐にわたる活動を展開した。
【開催情報】
展覧会名:総合開館 30 周年記念 ルイジ・ギッリ 終わらない風景
会期:2025年7月3日(木)~9月28日(日)
会場:東京都写真美術館 2階展示室(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
開館時間:10:00~18:00(木・金曜は20:00まで、8/14〜9/26の木・金曜は21:00まで)
※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(祝休日の場合は開館、翌平日休館)
観覧料:一般800円(640円)、学生640円(510円)、高校生・65歳以上400円(320円)
※中学生以下、障害者手帳保持者と介護者2名まで無料
※サマーナイトミュージアム割引あり(8/14〜9/26の木・金曜 17:00-21:00)
URL:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-5073.html