Where to now — starring Miku Uehara
女優・上原実矩のいまいるところ。
look1:dress / Ai Watanabe(aikokeshi1)、tops / Hibiki kawahara 、pants / kaoism(e)、shoes stylist own
look2:jumpsuit / kaoism(e)、earring 、shoes stylist own
Interview with Miku Uehara
— 映画『青葉家のテーブル』で上原さんが演じた与田あかねという役について「自分以外が演じているところはみたくない」とコメントされていましたが、役のどんなところに惹かれ、どのように演じましたか?
『青葉家のテーブル』は全体的にすごく優しい映画で、悪い人が出てこないし、おもしろいシーンも結構あって、脚本を読んだときにとても好きだなと思ったんです。そしてその素敵な世界観をぶち壊しにいくかのような与田という女の子がいて(笑)。すごくもがいて頑張っている与田を、私ならああやりたい、こうやりたいというイメージが浮かんできたんです。物語のなかで少し異質な存在になれたらいいなと思いながら演じました。
— 脚本を読んだときに、どんどんイメージが膨らんでいった感じだったんですね。上原さんご自身と似ている部分はありましたか?
えー、どうだろう? 似ているというよりも、たぶん与田のことが好きだったんだと思います。与田はちゃんとしっかり自分のやりたいことを持っていて、でもまだ若いからそれを思い詰めてしまっている感じがあって。これもやりたくて、あれもやりたいという、若いからこそのエネルギーがすごく好きでしたね。私自身が似ているのは、どちらかといったら(与田の友人で、栗林藍希さんが演じる国枝)優子の方だと思います。
— 好きだからこそ、惹かれたのでしょうか?
与田になりたいから与田を演じたい!という気持ちだったんだと思います。でも、私と与田は全く違うというわけではなくて。強さだったり弱さだったり、人間的なところは共感できる部分でした。
— 以前「衣装を着ることによって役が掴めたり、スイッチが入ったりする」とお話されていましたが、今作で髪をピンク色にしてみていかがでしたか?
脚本に「ピンクの髪の子が~」って書いてあったことがすごく印象的で、それは与田のアイデンティティのひとつなんだろうなと思って。キレイな色味というよりも、与田が田舎から出てきていることとか、与田がどういう人なのかということを考慮しながら色を決めていきました。
美容師の方もいろいろ考えてくださって髪を染めたんですけど、最初に染めたときはブリーチを入れるのが初だったこともあり、ちょっと違うな…みたいな感じになって。その翌日に「もう1回気合い入れて染めたいです」と伝え、あの色になりました。
— 与田という役への想いが、髪の色ひとつにもすごく込められていたのですね。
そうですね。脚本を読んだときから「なんかすごく好きな子だな」と思っていたので頑張りました。
— 与田は美大を目指す女の子の役でしたが、上原さんもフォトグラファーの増田彩来さんたちと「Huun.」という素敵な企画をやっていますよね。
(所属事務所のヒラタオフィスの)同じチームにクリエイターの方が多いので、「とにかくやってみようか」という感じではじめました。もともと何かを自分たちで発信することは好きなので、クリエイターの人たちに話を聞いて、いろいろ試行錯誤しながら楽しんでいます。
— 「Huun.」をはじめてみて、上原さんのなかで何か変化はありましたか?
「Huun.」をはじめたのは、表面に出ているものだけでなくその裏側や作られる過程を知りたいという気持ちが大きくなったからなんです。映画はもちろん好きだけど、「この映画のメイキングが観たい」みたいな感覚に似ているかもしれません。
事務所で同じチームに所属している監督や写真家の方の現場に見学に行かせてもらう機会もあって、俳優部として現場に入っていると見えない部分や知ることができない部分をより近くで見せてもらうことでも視野が広がっています。今までは作られた舞台に自分なりの考えを持って行くということが多かったんですけど、そこで自分は(役者として)どんなことを出すべきなんだろうということが一周回って見えるようになってきました。
— 作品の脚本を読むときに、より深い部分が見えてきたりすることも?
そうですね。新しい読み方というか、選択肢が増えてきたように感じています。少し隙間があってもいいのかな、って思うようになりました。
前までは見えないことが怖かったから、自分の中で(役を)作りすぎてしまっていた部分があって、「こうしてください」って言われたときにそこから抜け出せなくて壊れてしまうようなことがよくあったんです。でも最近は、もう少し柔らかく捉えられるようになった感じがあります。
— お仕事にもいい影響が生まれているんですね。
誰も求めていないのに勝手に自分で完璧を求めすぎてしまって「キツいなー」となっていた時があったんですけど、それは違うなと気付けるようになってきました。今まではすごく凝り固まった考え方で、それはそれで大切だったとは思うんですけど、それだけでは駄目だなと。
でも自分1人でその考えに辿り着いたわけじゃなくて、いろんな人にいろんなものを見せてもらったおかげですね。「ここまで崩してもいいんだ」ということを他の現場で見せてもらって参考にしたり、でもここはもう少し頑固になっていかないとダメだなとか、ここまでは自分を守っておこうと思ったり。言葉よりも体現している人や実践している人を見たときに、閃くような感覚があります。
— これからますますお芝居が楽しくなってきそうですね。
自分のなかでいろいろな変化があるんですけど、『青葉家のテーブル』の与田はあのときの自分にしかできなかったなとはすごく感じています。10代のときのエネルギーをすごく発散できるキャラクターだったなと。
— 与田は若さゆえの素直になれない感じというか、「わかるなー!」というシーンがたくさんありました。
私も10代のころ上手く生きられなかったので、与田には幸せになってほしいなと思っています(笑)。与田にとって優子はすごく大切な友達で、優子のぽやっとした性格にすごく助けられた部分があるんだろうなって。これからも喧嘩をすることもあると思うんですけど、生きづらい部分を生きやすくしてくれている1人なのではないかなと思いました。
— 『青葉家のテーブル』では若者たちが“才能”に向きあう場面も描かれていましたが、上原さんはめちゃくちゃ才能がある人と出会ったときどんな感情になります?
えーーー。事務所で同じチームの藤井(道人)監督や松本(優作)監督をはじめ、周りには才能がある人たちばっかりなんです。だから死なないように頑張ろうって思っています(笑)。
皆さんすごいなって思いますけど、いいところだけ吸収しようというスタンスではいますね。もちろん藤井監督や松本監督にしかできないことやエネルギーとかもあるのでそれを羨んでしまう気持ちもあるんですけど、それはそれでいい刺激になっています。
— 同じ役者の方々に対してはどうですか?
私は私にしかできないことがあるという謎の自信はあるので、その部分で頑張ればいいかなって。先輩たちには人間力とか感覚とか人としてすごく素敵だと思わされることが多いですし、そういう人間になりたいと思わせてくれる人たちが周りにたくさんいる環境はすごくありがたいですね。
昔はいかに楽をするかという生き方だったんですけど、最近では逆に「もっと苦しむことができるところはどこだろう?」みたいな感覚も生まれてきて(笑)。それも周りのみんなから「負けてられない!」と刺激をもらえているからなのかなって思っています。
Profile _ 上原実矩(うえはら・みく)
1998年生まれ、東京都出身。女優・モデル。主な出演作に、映画『暗殺教室』(15)『暗殺教室〜卒業編〜』(16)『来る』(18)、20年公開の『私がモテてどうすんだ』中野あまね役でコメディパートを演じ注目を集める。モデルとしてファッション誌にも出演するなか、CMやMVにも多数出演し、多岐にわたり活躍中。
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Information
上原実矩さん出演映画『青葉家のテーブル』
2021年6月18日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国順次公開
なりたい私と、なりたかった私。
監督:松本壮史
脚本:松本壮史・遠藤泰己
出演:西田尚美・市川実和子・栗林藍希・寄川歌太・忍成修吾・久保陽香・上原実矩・細田佳央太・鎌田らい樹・大友一生・芦川誠・中野周平(蛙亭)・片桐仁
配給:エレファントハウス
© 2021 Kurashicom Inc.
- Model : Miku Uehara(Hirata Office)
- Photography : Sakai De Jun
- Styling : Masami Okita
- Hair&Make-up : Kotoe Saito
- Art Direction : Kazuaki Hayashi(QUI / STUDIO UNI)
- Text : Sayaka Yabe
- Edit : Yusuke Takayama(QUI / STUDIO UNI)