N°21 2025秋冬コレクション、リボンが生み出すシルエットの革新
コレクションでは、リボンは単なる装飾にとどまらず、シルエットの変化やボリュームの強調、そして全体のムードを表現する重要な要素として登場した。リボンを大きく目立たせることで、ファッションの構造がより印象的かつ魅力的に仕上げられている。
今季クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・デラクアは、ソフィア・コッポラ監督の映画からインスピレーションを受けた。『ロスト・イン・トランスレーション』では、ミニマルなカットとシンプルな黒いドレスのエレガンスを、『ヴァージン・スーサイド』からは、透明感や男性的要素と女性的要素の融合を、『マリー・アントワネット』からは、パステルカラーの遊び心を取り入れた。これらの映画的な要素はリボンという共通項を通して、ひとつのコレクションとしてまとめられている。
コレクションの冒頭に登場するのは、女性らしいフレアを描くマットウールコート。ネオプレンの裏地を施したコートは、シンプルでありながら、女性らしさと力強さを兼ね備えている。
その後に続くのは、ダルメシアンスポットのポニースキンやレザーコートで、さらにスリムなネオプレン/ウールセーターには、大きなフレアスリーブが加えられ、視覚的にインパクトを与える。これらに施されたリボンは、シルエットを引き立て、全体の印象をまとめる役割を果たしている。
特に注目すべきは、「プチ・ローブ・ノワール」へのオマージュとして登場する黒いシフォンのスリップドレス。エンパイアラインに沿ったリボンが、シンプルながらも洗練されたエレガンスを表現している。さらに、ヴィクトリアン刺繍が施されたシャツドレス風のスタイルや、低めのネックラインにリボンをあしらったドレスも登場し、ミニマルな美しさとロマンティックな要素を見事に融合させている。
コレクションでは、ブランドが得意とする重さと軽さのコントラストが際立つアイテムも目立っていた。
ふわっとしたカバンジャケットには、オーガンジースカートを合わせて軽やかな印象を与え、スカートの裾には切り取られたフェザーが施され、動きに合わせて揺れ動いていた。
また、軽やかなウールコートには男性的なコットンシャツの裏地が使われ、オーガンジードレスには切り取られたフェザーのクレストが施されている。
その他にもリボン付きのレザーアイテムや、パイレットスパンコールの装飾が施されたアイテムも登場し、コレクション全体に華やかさを加えている。
アクセサリーはシンプルながらも洗練されたデザインで統一。パステルサテンでドレープを効かせたサボサンダルやスリングバックシューズ、ジオメトリックな形状のバッグは、コレクション全体のエレガンスを引き立て、シックなムードを完成させる。
リボンを中心に展開することで、シンプルでありながらもロマンティックで洗練されたエレガンスを見事に表現している。
- Text : Yukako Musha(QUI)