Max Mara 2025秋冬コレクション、歴史的ブランドが描く女性の本質を見出す物語
<Max Mara>の2025秋冬コレクションの着想源となったのは、19世紀イギリスの文学界で活躍したブロンテ姉妹が描く、愛と誠実の本質を見出していく女性の主体性を強調した革新的な物語「ジェーン・エア」や文学史上『世界の三大悲劇』の一つとして評されるしなやかでたくましい女性たちの感情の激しさと破滅的な愛を描いた「嵐が丘」。
“抑えきれぬヒロイン”と題された2025秋冬コレクションのファーストルックは、成熟した深みが官能的なベリーレッドで全身を包み込んだ。足元まですっぽりと覆うロング丈のオーバーサイズコートがエレガントでシックなムードを漂わせる。ウエストマークを強調する同色のベルトは、16~19世紀にかけてのヨーロッパで流行したコルセットのような強度を感じさせる。その後も全身ベリーレッドにベルトを装着したルックが続き、凛々しく闊歩するモデルの力強さが物語の輪郭を浮き上がらせていく。
ブロンテの故郷であるヨークシャーの荒野を彷彿とさせるベージュのカラーパレットは、異素材のレイヤードによって奥行きを生む。<Max Mara>だけが知る特別なカラー「Cascia(カッシャ)」の登場に安堵すると、森の奥深くに広がる苔や湿った土を想起させる深いモスグリーンのルックが続いた。
ボディラインに沿うようにすっきりとしたシルエットを実現するリブニット、ウエスト部分のフィット感と裾にかけて広がるボリュームが華やかなウール地のスカート、実用性を兼ね備えた無骨なキルティングのライナー付きレディングコートは、エレガントな女性像に新たな一面を覗かせる。
古典的なジョッパーズは、膝に柔らかいプリーツと幅広のウエストバンドを備えたモダンなパンツへと進化。短丈のジャケットは長い脚のシルエットを引き立て、袖山に立体感をもたせるシャープな仕立て。ベストは、ジャケットの下に着るコンパクトなサイズ感で登場し、カントリースタイルを実現するアイテムとしてシャープなコートを上に重ねたスタイルを提案した。
静かに移り変わるベリーレッド、ベージュ、モスグリーン、ブラックのカラーグラデーションが都会的なスタイルに命を吹き込み、上質な素材への探求が落ち着いた品位を体現する。密度の高いダブルフェイス、光沢のあるドレープ、羽のように軽やかなウーステッド、ピュアカシミヤの優しい肌触。これらは時代を超えて愛される、疑いのない美しさを示す証。終盤にかけて登場した素肌を覗かせるルックは、重厚な闇を軽やかに切り裂き、ゴシックな幻想世界へと誘う。肌とファブリックが織りなすコントラストが、光と影を巧みに操りながら、劇的なロマンスを描き出す。格式ある<Max Mara>のコードに、新たな解釈が吹き込まれる瞬間。伝統の中に息づく革新が、ブランドの歴史を次なる時代へと押し進めていく。
Back Stage PHOTO
Max Mara(マックス マーラ)
イタリアのレッジョ・エミリアでアキーレ・マラモッティによって創業され、現在はイアン・グリフィス(Ian Griffiths)がクリエイティブ・ディレクターを務める。創業当初からクオリティに妥協することなく、最高の素材と製造者を揃え、女性が望んで身にまといたくなる、共に生きる衣服を目指し、アウターウェアからアクセサリーまで様々なカテゴリーのワードローブを提案している。
- Text : Miwa Sato(QUI)