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FETICO 2026年春夏コレクション、設立5周年を迎え、女性の美学を追求したブランドの世界観の深淵をのぞく

Sep 18, 2025
2025年9月3日、<FETICO(フェティコ)>は楽天の「by R」の支援のもと、「The Depth of Her」をテーマに2026年春夏コレクションを発表した。

FETICO 2026年春夏コレクション、設立5周年を迎え、女性の美学を追求したブランドの世界観の深淵をのぞく

Sep 18, 2025 - FASHION
2025年9月3日、<FETICO(フェティコ)>は楽天の「by R」の支援のもと、「The Depth of Her」をテーマに2026年春夏コレクションを発表した。

2026年春夏コレクションで設立5周年を迎えた<FETICO>、デザイナーの舟山氏はドイツの芸術家レベッカ・ホルンとルーマニア人の写真家イリナ・イオネスコという二人の女性アーティストからインスピレーションを受け、「2人の表現に共通するのは、自身の内面を強く映し出していること。その創作への向き合い方に触れたことで、ブランドの世界観をより深く追求したいと感化されました」と話し、コレクションを通してブランドの核を見つめ直した。2020年のデビュー以来、「The Figure: Feminine(その姿、女性的)」をブランドコンセプトに掲げ、固定概念からの解放や女性の内面に潜む無数の感情を掬い上げることで、常に女性に寄り添いながら女性性を肯定してきた<FETICO>。これまで培ってきたアイデンティティと真摯に向き合い、女性の奥深さをより一層探求した2026年春夏は、人々の自由と自己愛を後押しする視覚的体験へと昇華された。

会場である代々木第二体育館に足を運ぶと、広々とした空間の中央に、白い壁で構成された箱のような空間がポツンと佇んでいて、その中に限られた観客がコンパクトに集約されていた。会場を最初に覆ったのは、官能的でありながらどこか不気味さを孕んだ赤い光だった。観客の頬も、壁も、すべてが紅に染まり、ざわめきの奥に潜む緊張と期待を煽る。何かが始まろうとする瞬間の、胸を締めつけるような高揚と不安が充満した空気を切り裂いたのは、鋭く走った白い光だった。舞台の奥に佇んでいた影が光によってその姿を露わにし、会場は一斉にモデルに釘付けになった。

ファーストルックに現れたのは、黒に沈む幻のような姿だった。顔を覆う網目のヴェールは、匿名性を与えると同時に、その存在を鮮やかに浮かび上がらせる。レースのトップスは、肌に触れるたびに囁くような親密さを孕み、スカートはひらひらと舞う蝶のように軽やかだった。彼女の歩みは静かで、けれど無防備さを晒すことなく会場を挑発する。網目のタイツからのぞく脚線は、日常と非日常の狭間にある不安定な夢のようで、誰もが視線を逸らせずにいる。かわいらしさだけではなく、凛とした美しさ。官能的な優美さが常に「女性であること」を肯定してくれる存在そのものだった。

柔らかく、けれど冷ややかで、肌をかすめるランジェリーの断片。織りや染めに宿る職人の技は、細部に宿る誇りのように服を支えていた。退廃の香りと春夏の光が交わる場所で、2026年春夏は、女性の造形を映し出す線をいっそう鮮明に描き出した。着想源であるレベッカ・ホルンの作品に登場する羽根のようなフリンジ、放射のプリーツは、空気を切り裂くたびにかすかな残像を残し、イリナ・イオネスコの退廃美を彷彿とさせるランジェリーやダマスク模様は、記憶の底から立ちのぼる古い写真のようだ。色は黒と白、その狭間に漂うベージュやアイボリー。そして突然、鮮烈な朱赤が流れ込み視界を揺らす。

ドレスの裾や袖に結ばれたスカーフのような布は、歩みとともに表情を変え揺れ続ける。桐生のジャカードで浮かび上がった赤い薔薇は、光に濡れた幻のように滲み透けるジョーゼットのドレスは、肌の奥に潜む感情までも映し出してしまう。フリンジが胸元や腰から零れ落ちるとき、抗いようのない力を帯びていた。

デニムは<FETICO>の手により、実用性を超えて構築美と官能性を兼ね備えた表現へと昇華。背中を大胆に切り取ったジャケット、刺繍の光を宿したハイウエストパンツ、ビスチェが描く曲線は、美しさと相反する緊張を孕んだ佇まいで観客を魅了した。軽やかなコートやラップジャケットには、贅沢なドレープが揺蕩い、裾から覗くレースが秘密のように揺れる。レースを縫い合わせたドレスは、ひとつひとつが異なる物語を持つ断片の集積であり、ひとりの女性の複雑な感情をそのまま衣服にしたかのようだった。

ブランド初となるアイコンバッグ「Arch(アーチ)」も登場した。名前の通り弧を描くフォルムはしなやかで、確固とした存在感を放つ。環境に配慮したLWG認証のイタリアンレザーを用い、日本で丹念に仕立てられたその質感は、柔らかさと強さのあわいにある。クロムなめしによって、傷や汚れを気にせず触れられることもまた、日常の中での優雅な実用を示唆している。

新作のシューズは、レースアップのバレエフラット。ラムレザーの滑らかさと、透き通るメッシュの軽やかさ。足首に結ばれる紐の緊張感は、解かれた瞬間の自由を予感させる。

三度目となる<BLANC>とのコラボレーションアイウェアは、オーバルのフレームが顔立ちに微妙な影を落とす。シルバーとシャンパンゴールドのメタルは、まるで夏の光を掬うようで、テンプルのブラックやヘーゼルが、静かにその余韻を受け止める。六つのバリエーションは、装いに小さな反逆を忍ばせる。

アクセサリーの数々は、身体を飾るというより、心の奥を映し出すようだった。放射状のプリーツリボンバレッタはレベッカ・ホルンの幻影をまとい、羽根のモチーフを纏ったハーネスはどこか儀式的な香りを漂わせる。フリンジのピアスは動くたびに囁きを残し、黒ビーズとパールはそれぞれに夜と朝を連想させる。チョーカーは二重に巻かれ、時に首を飾り、時に手首に絡みつく。

深いブリムのストローハットは、レースのストラップによって影を落とし、夏の日差しを甘美なものに変える。さらに今季は、機能性に優れたスイムウェアも登場。ハーネス風のカットアウトが施されたモノキニ、レースアップが連なるバルコネットワンピース、ギャザーを寄せたラッシュガード。それらは陸でも水でも、肌と布の関係を更新する。

<FETICO>のコレクションには常に、女性であることの複雑さが宿る。強さと脆さ、官能と純粋、退廃と軽やかさ。相反するものを抱え込みながらも、矛盾を矛盾のまま肯定する。今季はそれがさらに深い水脈へと潜り込んでいったように思えた。ファッションを“纏うもの”としてではなく、“感じるもの”として提示し、ファッションが持つ本質的な力を思い出させる。2026年春夏、<FETICO>は女性の奥行きを、そして人間の奥行きを、確かに照らし出したコレクションとなった。

FETICO 2026SS COLLECTION RUNWAY はこちら

  • Edit : Miwa Sato(QUI)

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