NEW GENERATIONS vol.19 - Kenshiro & Lisas|Creative Duo“beans.” / Model
ヴィジュアルディレクターの中本健士郎、スタイリストのLisasからなるクリエイティブデュオ。ともにBARK IN STYLEに所属し、モデルとしても活躍している。
beans.:@beans.duo
中本健士郎:@la_la_la_0_8 / Lisas:@lisas__ns
自分に似合う服を着ることを表現に繋げてみたかった
——おふたりはQUIとしては初めましてではなく「ファッション業界人が注目しているブランド図鑑」にご協力いただきました。その節はありがとうございました。
中本:こちらこそありがとうございます。
——あの企画でおふたりに声をかけたのはSNSをチェックしていて、私服のセンスがすごくいいと思ったからなんです。自分の記憶にあるおしゃれへの目覚めはいつ頃ですか?
中本:目覚めは小学生の高学年で父親の影響でした。僕は身長が186cmですが父親もやはり長身でした。アメカジが好きでスラッとしていたのでリーバイスのデニム姿がすごくサマになっていて、自分に似合う服をちゃんと選ぶことでスタイリングがかっこよく決まるというのは父親から自然と学んだような気がします。今思えば父親は木村拓哉さんをロールモデルにしていた気がしますね(笑)。
Lisas:身内からの影響は僕も同じです。姉がヒップホップが大好きで、部屋からいつも爆音で流れていました(笑)。ミュージシャンが表紙を飾る雑誌が家にあって、タンクトップ姿でルーズなようでもかっこよかった。ファッションを意識したのはミュージシャンのスタイルへの憧れからですね。僕も小学生でした。
——自分が着たいと思う服はどうやって探していましたか?
Lisas:高校生になってMVを見る機会が多くなって、そこからミュージシャンが着ている服やブランドにどんどん関心を持つようになり、いろいろ調べるようになりました。スマホを手にしてからはランウェイやショーの映像も頻繁にチェックしていました。
中本:最初は父親に付いて古着屋を巡っていましたが、僕も高校生になってスマホを持つようになってから入手できるファッションの情報が一気に広がっていきました。そこから自分が好きなファッションのテイスト、傾向などが明確になっていった感じです。
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——おふたりはモデルとして活動していますが、それはファッションを好きになって意識した職業でしたか?
Lisas:僕はモデルの前は車の整備士をやっていたんですけど、それも車が大好きだったからです。でも稼いだお金を自分の車のカスタムに使うこともなく、全て服に注ぎ込んでいたんです。そこで「あれ?自分は車より服の方が大事なのかも」って他人事のように思って(笑)。
——車よりもファッションへの熱量の方が優っていたことに気づいたんですね。
Lisas:ファッションに携わる仕事はたくさんありますが、僕の場合は自分が服を着て、それを表現に繋げたいという思いがあったんです。そうなるとファッションモデルなのかなと。
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中本:僕がモデルを目指した経緯も近いかも。僕はもともとはアパレルで働くつもりで大学生の時はインターンで販売員も経験しました。ただ、そこで服をうまく売ることができなかったんです。
——接客が苦手だったとか?
中本:そうではないんです。僕は自分にいちばん似合う服を着るのがファッションだと思っています。でも、あまり似合いそうもない服を選ぼうとしているお客さんもいて、そういう方に自信を持ってその服を薦めることができなかったんです。それでアパレルには向いていないと感じて、「自分に似合う服を着る仕事」として選んだのがモデルでした。
——服を着て表現に繋げるということでモデルという選択は間違っていなかったですか?
Lisas:やりたいことはできていると思います。
中本:僕も同じです。モデルという道で正解だったと思っています。
キャリアを積むことで高まったクリエイターへの関心
——現在は中本さんはディレクション、Lisasさんはスタイリストとモデルと並行して活動の領域を広げています。モデルというのは観られる側ですが、演出する側にも意識が向かったのはどうしてですか?
中本:モデルを続けていくうちに現場で演出の指揮を執るプロデューサーやディレクターと「ビジュアルで表現したい世界観」などについて意見交換をする機会が多くなったんです。そうなるとディレクターの考えを理解してからじゃないとカメラの前には立てないとも思うようになりました。モデルは服を着るだけのマネキンではない、現場の全てのスタッフと想いを共有したいと全体感を構築するディレクションに興味が生まれたんです。
Lisas:僕は自分のステップアップとしてロンドンに挑戦した時期があるんです。でも結果としてモデルとしての仕事は特にない日々で、それでも僕が毎日考えていたのは服のことでした。モデルとして服を着ることも楽しいのですが、ずっと服を触っていたいぐらいの欲求があって帰国後にスタイリストのアシスタントを始めました。スタイリストって一年中服のことばかりを考えるような仕事なので自分にとって幸せだろうなって。
——モデルとクリエイターという2つの視点を持っている自分たちだからこその強みのようなものはありますか?
Lisas:モデルのモチベーションを把握することに関しては自信はあります。気持ちが乗っていないとか、リラックスできていないとか。それは自分がモデルをやっているからこそ察知できることで、だからこそ僕が言葉をかけたり行動を起こすことで現場の空気を変えていくこともできる。
中本:モデルに説得力のある指示を出せるというのも強みかもしれないです。モデルからするとポーズや表情に関して厳しい要求をしてくると思うこともあるかもしれませんが、それは無茶なことを言っているわけではなく、ビジュアルのクオリティのために必要なことで、そのモデルのポテンシャルであれば可能だと信じているからこその指示なんです。
——現在は撮影現場にはモデルとしても参加することもあれば、クリエイターとしてアサインされることもあると思いますがスイッチの切り替えは大変ではないですか?
中本:現場に集まっているスタッフは役割はそれぞれですが、ひとつのビジュアル、世界観を作り上げるという目的は同じなのでそもそもスイッチの切り替えというのはあまり意識したことはないですね。
Lisas:確かに今日はモデルだ、この現場ではスタイリストだって、何かに徹しようと考えたことはないです。モデルをやっていてもスタイリストの視点を失うことはないですし、その逆もそう。
——モデル以外の道に興味を持った動機はバラバラですが、それでもおふたりが共作をスタートさせています。それは何かきっかけがあったのでしょうか?
Lisas:僕と健士郎はBARK IN STYLEのなかで、ファッションに特化した「MONOLITH」というディビジョンに所属しているんです。仕事を離れたら親友でもあり日頃から何でも話し合える関係でした。モデルとクリエイターの二刀流のようなことは僕の方が少し早かったのですが、健士郎もアシスタントとしてディレクションの勉強をしていることを知って同じような考えを持っているんだなって。
中本:「MONOLITH」がファッションに特化しているなら、SNSにアップする写真だって「MONOLITH」のカラーやビジョンを打ち出していく必要がある。そのために自分たちに何ができるか、というのはLisas君とはよく話しましたね。
Lisas:「MONOLITH」というディビジョンに足りないものなんだろう、とかね。
中本:エージェンシーを盛り上げるためにやるべきことの考えが同じだったので、ディレクションとスタイリングでそれぞれ強みを発揮していこうと自然に合流した感じです。親友だから何かやってみようってノリではなかったですね。一緒にやることはもっと必然的なことでした。
Lisas:「俺たちはチャンネルが合うよね」ってお互いよく言い合っています(笑)。
ファッションを軸にしながら未知の領域にも挑戦したい
——ビジュアルなどを制作するときはどのように進めていますか。チャンネルが合うといっても意見がぶつかることはないですか?
中本:「こういうビジュアルを作ろう」と話し合うとお互いの頭の中には驚くぐらい同じような世界観が浮かんでいるのですが、面白いのが描いている完成形は近しいのに、そのビジュアルを具現化するためのアプローチやアイデアは全く異なるんです。
Lisas:結果、どっちのアイデアもいいよねって褒め合う(笑)。
——どのアイデアも捨て難いとなると最終的なジャッジはどうしているんですか?
Lisas:僕も健士郎もビジュアル作りにおいてフォトグラファーの重要性はかなり上位に考えています。「今回はあのフォトグラファーに依頼しよう」となったら、その方に撮ってもらうべき案というのは自ずと決まってきます。
——初めて共作した時にクリエイターとしてどのような印象を相手に抱きましたか?
Lisas:健士郎が選んだロケーションであったり、モデルへの指示であったり、クリエーションに関しては自分と同じ景色を見ているなって感じました。自分がやってみたいスタイリングが挑戦的だったとしても、そこにもすごく共感してくれて。二人でやっていく意味はあると思いました。
中本:僕がもともとLisas君を好きになったのは私服でも軸がしっかりあって、センスも抜群だったからです。服オタクの彼が選ぶスタイリングに対して、こちらが意見しようとは最初から思わなかったですね。
—おふたりが組んだ最新の作品がアーティスト写真ですが、こちらのコンセプトは?
中本:静と動です。
——ここまでお話を聞いている感じだと冷静沈着なLisasさんが「静」で、パッションがほとばしる中本さんが「動」でしょうか?
中本:その通りです(笑)。なんでも「やってみよう」と言い出すのは僕で、すぐに実行に移そうとするのも僕。それをLisas君は後ろで見守ってくれている感じです。
——おふたりの共作としてアーティスト写真を作ろうと思った理由はなんでしょうか?
中本:僕たちにとってはコンポジットであり、ポートフォリオでもあると思っています。自分たちが得意とするディレクション、スタイリングを伝えるためのポートフォリオとして考えるならモデルは別にキャスティングしても良かったんです。でも、この衣装がいちばん似合うモデルが自分たちなら、自分たちが出演するべきだと思いました。
Lisas:撮影をしてくれたフォトグラファーも、衣装を提供してくれたブランドも、僕たちのことを応援してくれている方ばかりで、僕たちのキャラクターを熟知している、やりたいこと理解してくれている、作品の魅力をさらに引き上げてくれるスタッフを結集させて作ったものです。自分たちの生き写しのような作品にしたかったので、表情までものすごくこだわりました。
—こちらの作品を名刺代わりとしてクリエイターとしての活動を本格化させていくとは思いますが、将来的なビジョンのようなものはありますか?
中本:これから自分がやっていきたいことを話すと本業がモデルなだけにどうしても活動がファッションの領域だけだと思われがちです。でも僕もLisas君もファッション以外に興味のあることはたくさんあって、ジャンルに捉われず、むしろ何を専門にしているのかよくわからないようなクリエイターになりたいです。
Lisas:空間演出にもすごく興味があります。僕は鉱石や植物にも興味があるので、それらでオブジェクトを制作して展示するギャラリーのようなこともやってみたい。僕はDJをやっていたこともあって、料理も好きで、その場面に適した音楽の選曲も、最適な素材を組み合わせて作る料理もスタイリングだと思うんです。それらの特技や趣味、これまでの経験は全てクリエイター業に活かしていきたいです。
中本:未知の領域ににもどんどん飛び込んでいきたいです。自分たちが未経験の依頼はワクワクできるので大歓迎です。
- Photograph : Yuki Hatakeyama
- Direction : beans.
- Stylist : Lisas
- Clothing : PoC
- Text : Akinori Mukaino(BARK IN STYLE)
- Edit : Yukako Musha(QUI)




