はじめてのジャズならこの一枚|椿正雄のレコード・レコメンvol.3
この曲は聴いたことある人も多いんじゃない?グレン・ミラーの「THE POPULAR RECORDINGS 1938-1942」
まず、一枚目はグレン・ミラー。彼の名前にピンと来なくても、この「In The Mood」って曲を聴けば、「あ~この人か!」ってなる人も多いんじゃないかな。1930年代、ボールルームと呼ばれる場所で、ジャズの生演奏をしていた時代。まだアンプもないし、ラジオもテレビも普及していなかった頃だね。その当時、全米で一番人気を博したビッグバンドがグレン・ミラー。
本当はこのあたりってお店で全然売れないジャンルだったんだけど、最近はなぜか20歳前後の若者たちがこのあたりを探していて、「やったー!グレン・ミラー買えたー!」みたいなことが起きてるんだよね(笑)。彼の半生を描いた「グレン・ミラー物語」という映画もあるからあわせて観てみるといいと思う。
ジャズとブルースの関係性が分かる1枚。 コンピレーションアルバム 「symposium in Blues」
このアルバムは、ジャズピアニストであり、ジャズ評論家もあるレナード・フェザーが編集したコンピレーション。ここに収録されている音源に、ジャズだけじゃなくブルースが入ってるのがポイントかな。
その理由は、ジャズの起源の話になるんだけど・・・ジャズを最初に演奏したのは1900年代のバディー・ボールデンって言われているんだけど、簡単に言うとブルースは、ギターとボーカルの音楽。一方のジャズは「ラグタイム」と呼ばれるピアノのインストゥルメンタルの音楽が元になっていて。ブルースの特徴であるギターとボーカルの音を、サックスやトロンボーンなどの他の楽器に置き換えて演奏したのがジャズのはじまり。
バディー・ボールデンがジャズを生み出す様を目撃し、ジャズで最初に国際的スターとなった、トランペッター兼ヴォーカリストのルイ・アームストロング(愛称サッチモ)が唄うブルース・ナンバーが収録されているのもポイントだね。彼は、二十世紀を代表する音楽のジャズの申し子ともいえる存在だから。ジャズの一要素としてブルースがあり、お互いに影響を与えあっているジャンルだから、そういうセレクトになっているんだよね。そんなルーツがあるのを知ったうえで聴いてほしい一枚。
ビッグバンド同士の初コラボ。 デューク・エリントン アンド カウント・ベーシーの「FIRST TIME!」
1930~40年代のジャズ黎明期。当時のメインストリームだった「ビッグバンドジャズ」で人気を博した代表的な2組のバンドによるコラボレーションアルバム。
ステレオの右チャンネルにデューク・エリントン楽団、左チャンネルにカウント・ベーシー楽団を配し、それぞれの代表的レパートリーを一緒に演奏しているっていう面白い1枚。60年代になると、芸術性が高いジャズの方にトレンドがシフトしていく。だからこの2組がやっている娯楽的なダンス音楽としての「ビッグバンドジャズ」はもう旬じゃなくなっちゃうんだよね。そんな時代の中で、ヘッドライナーとして残った“二大巨頭の初共演”みたいな感じ。日本でいえば、山下達郎と桑田佳祐の初共演的なイメージかな(笑)。
ジャズ好きな人たちに、「偉大な10人のジャズアーティストを挙げて」って言ったら、デューク・エリントンは必ずランクインするだろうし、カウント・ベーシーも泥臭いスタイルを貫いていて、「Jumpin’ at the woodside」って曲は、ジャズの普遍のレパートリーにもなっているよ。
今回はジャズの最初のスタイルである「スゥイング&ビッグ・バンド・ジャズ」に限ってご紹介したけど、酒場でブランデーを傾けながら聴くような「モダン・ジャズ」は次の機会にご紹介させてもらおうかな…。
取材協力:Flash Disc Ranch(フラッシュ・ ディスク・ランチ)