恵比寿の地下飲食街で立ち上がるクィアな記憶、「Under A Void|空隙之下」マンボウ・キー特別展示
昭和の大衆酒場の面影を残す「恵比寿 地下 味の飲食街」は、居酒屋やスナックが路地のように連なり、昼と夜、表と裏が交差する匿名性を孕んだ場所だ。マンボウ・キーはこの空間に、2019年から現在にかけて制作してきた作品群を配置する。本展で焦点が当てられるのは、台湾のクィア・コミュニティにおいて相互扶助や連帯の関係を育んできたドラァグクイーンのパフォーマンス・アーティストたちの姿だ。
展示には、『ル・ポールのドラァグ・レース』で優勝を果たしたNymphiaや、台湾の短編映画でドラァグ・カルチャーを体現した主人公として知られるMarianらが登場する。彼女たちの存在は、単なる肖像としてではなく、地下文化やナイトシーンの記憶と重なり合いながら、飲食街の風景の中に溶け込んでいく。

「Under A Void|空隙之下」というタイトルは、マンボウ・キーが2021年に台新芸術賞に選出された作品《Avoid A Void(碧兒不談)》に由来する。地下文化や、失われつつあるノスタルジックなナイト・エンターテインメント空間を見つめるなかで、作家は、ある時代に凍結された記憶や、その奥に宿る内面的な自由の感覚に触れてきた。本展でも、地下へと降りていく行為そのものが、日常のアイデンティティを一度脇に置く体験として立ち上がる。
台湾のクィア・カルチャーやアンダーグラウンド・カルチャーを起点に制作を続けてきたマンボウ・キーの視線は、恵比寿という都市の地下において、異なる時間や文化の層と響き合う。作品と空間、そして鑑賞者の感覚が交差することで、多声的な記憶が静かに浮かび上がってくるだろう。
【プロフィール】
Manbo Key(マンボウ・キー)
台湾・台北を拠点に活動するアーティスト。写真、映像、音楽、インスタレーションを主なメディアとし、家族の記憶やアイデンティティをテーマに制作を行っている。父親が撮影していた快楽や性に関するビデオテープを起点に、《Father’s Videotapes》《Avoid A Void(碧兒不談)》《Diverse: Identity》という映像三部作を制作。幼少期にこれらのテープを発見した経験から、アイデンティティや家族関係についての探究を始めることとなった。
2019年、《Father’s Videotape》で台北美術賞・最優秀賞を受賞。2022年には《Home Pleasure(居家娛樂)》を発表し、台湾のクィア・カルチャーとの関係性をより深化させた。2025年、PARCO MUSEUM TOKYOにて個展《Home Pleasure》を開催。
Instagram:@manbo_key
【開催情報】
展覧会名:Under A Void|空隙之下
会期:2026年2月6日(金)〜2月23日(月・祝)
会場:恵比寿 地下 味の飲食街(東京都渋谷区恵比寿南2-3-3 第一恵比寿マンション B1F)
開館時間:24時間営業
休館日:なし
観覧料:無料
主催:エイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社
協賛:株式会社アートブレーンカンパニー
会場構成:山際悠輔