早稲田大学繊維研究会、2025年度ファッションショー「それでも離さずにいて(Still, Hold On)」閉幕、変化の奔流の中で“手放さずにいたい何か”を問う
本ショーは、社会情勢や身体の成長、心の機微、流行など、あらゆるものが変化する時代において「それでも持ち運び続けたい何か」を問い直すことをコンセプトに据える。

会場は科学技術館。繊維研究会が理念に掲げる「衣服を媒体としたファッション批評」の一環として、絶え間なく変化する流行と、それに付随して加速する消費スピードをテーマに空間を設計した。刹那的で安易な購買行動や資本主義の姿を具象化する狙いのもと、青白い照明、天井に張り巡らされたパイプ、3つのランウェイが重なり合って生まれる“交差点”を構成要素に設定。さらに会場中央を貫く柱を、不変的存在が変わりゆく世界を貫く「貫通」を想起させる装置として位置付けた。

当日は1部・2部ともに事前に満席となり、動員は各部約130名規模に到達。来場者が青く照らし出された会場にひしめく光景は、交差する社会の営みを擬似的に再現するかのようだという。来場者からは「製作者一人一人の価値観、解釈が存分に現れている」といった声も聞かれた。
ルックは総勢23名が手掛け、全29体を発表。
ルックタイトルと製作者
・萩原紬希「無垢」
・長野桃子「不揃いの秩序」
・石塚然「facade in motion」
・横田知歩「境界線のスーツ」
・阿部櫂斗「布」
・杉田美侑「世界は仮象となる 仮象は本質となる」
・齋藤菜摘「ゆめのなか」
・大川穂乃果「影を留めて、息を止める」
・加藤莉緒「手の記憶」
・藤原一花「昇華された離歌から」
・柳小春「you are preserved in me」
・岡田麻央「不易流行」
・笹壁結衣「からっぽな居場所」
・貝塚紗世「めぐるトポス」
・笹壁結衣「むすび」
・松浦愛里「愛の記憶」
・加藤莉緒「無機質な情熱」
・内山みのり「泡沫におぼれたい」
・片野仁愛「あの日の翼」
・山本佳奈「余波」
・柳小春「but I'ma creep」
・西野朝香「記憶の製」
・南希和「変わらないもの」
・グイ蘭丸「un pied pensant」
・宇都木陽名「消えない輪郭を抱いて」
・小林千鶴「大(きな)人コドモ」
・阿部櫂斗「働き方改革」
・萩原細希「the unwavering core」
・長野桃子「矜持を縫う」
今年度の特徴として、初の試みとなるメンズルック3体を製作。「あの日の翼」(片野仁愛)、「you are preserved in me」(柳小春)、「布」(阿部櫂斗)を発表した。さらに初となる取り組みとして、全ルックにおいて携行可能なファッションアイテムを製作。手縫いで刺繍を施したハンドバッグやウサギのぬいぐるみに加え、アルミ製の薔薇の花束、内部に液体を湛えた透明のボール、黒いベールの下で鼓動を刻む心臓など、ショーピースならではのアイテムも披露された。




Photo:@ippei0222