山谷佑介の初個展「ONSEN」、タカ・イシイギャラリーで開催
山谷の「ONSEN」は約15年前から彼の個人的な趣味として始まった野湯探しをテーマとしたシリーズだ。野湯とは、自然の中に自噴する人工的な整備が施されていない温泉で、火山ガスや温泉成分の影響で草木が生えず、岩場が顕にされた荒涼とした風景が広がる。「まるであの世とこの世が交差するような、剥き出しの風景」に心を奪われたと山谷は述べている。
日本は火山大国で、その恵みである温泉は人々の娯楽となっている。山谷の撮る剥き出しの風景の中に見る人間の肌は、脆く傷つきやすい不確かなものであり、自然と人間の関係性へと私たちの意識を立ち返らせる。
本展では、本シリーズの新たな試みとして、ルーメンプリント作品を展示する。山谷は野湯探しの道中に同行者の間で交わされた「たわいのない会話」を録音し、その言葉を日本、アメリカ、中国、フランス、インド、ロシアなど世界各地から収集した、様々な時代の印画紙に焼き付けた。有効期限を過ぎ長らく眠り続けた印画紙は、それぞれの場所で保管されていた状態により、カビや感光ムラ、薬品の違いにより様々な表情を見せる。山谷はこれらの紙の上で起きている時の流れを通して、時代や場所を超えた人間の普遍的な言葉を浮かび上がらせる。
また、本展の開催に合わせ、作品集『ONSEN MMXXIV』が刊行される。
展示詳細
山谷佑介「ONSEN」
会期: 2024年11月15日(金) ‒ 12月14日(土)
会場: タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム
新刊情報
山谷佑介『ONSEN MMXXIV』
flotsam books 刊
2024年11月発売
3,850円(税込)
148 × 220mm 320頁
図版 216点
野湯同行者たちとの会話テキスト 102頁(日本語)
山谷佑介
山谷佑介は1985年新潟県生まれ、立正大学文学部哲学科卒業後、外苑スタジオに勤務し、その後移住した⻑崎で出会った東松照明や無名の写真家たちとの交流を通して写真を学び、作家としての活動を開始。現在は東京を拠点に活動。
主な展示には「KYOTOGRAPHIE」(2015年)、「東京国際写真祭」(2015年)、個展「KAIKOO」 (Yuka Tsuruno Gallery、2021年)、「VOCA 展 2021」(上野の森美術館、2021年)、「第14回恵比寿映像祭」(東京都写真美術館、2022年)、個展「ONSEN」(スタジオ 35分、2024年)、個展「温泉-Assemblage, Environments & Happenings-」(空蓮房、2024年)を初め、ニューヨーク のコンデナスト本社ビルでの展示など、国内外で作品を発表。
主な作品集に『Tsugi no yoru e』(私家版、2013年)、『ground』(lemon books、2014年)、『RAMA LAMA DING DONG』(私家版、2015年)、『Into the Light』(T&M Projects、 2017年)、 『Doors』(ギ ャラリー山谷、2020年)、『ONSEN I』(flotsam books、2023年)がある。