AMI PARIS 2025秋冬コレクション、ノンシャランな“パリらしさ”を更新する美学
今回の会場はパリの伝統的なブラッスリー「ル・グラン・コルベール(Le Grand Colbert)」。1月のランウェイでは1910年代初頭のレンガ建築の無機質な空間だったが、対照的に日常的で親密な空気感にあふれるレストランを選び、コレクションはまた違った輪郭を見せた。
プレゼンテーションは朝から昼下がりにかけて開催され、ゲストには朝食がサーブされる中、モデルたちは互いに会話を交わしながら優雅にたたずむ。その温もりある空間演出で、空気そのもので語る構成が、コレクションの本質を際立たせていた。
<AMI>のクリエイションに通底するのは、壮大な物語よりも、リアリティに根ざした誠実さだ。ややオーバーサイズのシルエットに、肩の力が抜けた佇まい。そこには、今のパリに息づく等身大の美しさが映しだされている。エレガンスとカジュアルの絶妙なバランス感も健在。自転車で街を移動し、人々の日常を静かに観察するデザイナー、アレクサンドル・マテュッシ自身の視点が、コレクションの奥行きを生んでいる。
テーラリングは、依然としてブランドの核となる要素だ。滑らかに肩が落ちるオーバーサイズのコートは、<AMI>のアイコンともいえる存在に。ジャケットのラペルやシャツに施されたシルクのディテールが、確かな華を添えている。
色彩もまた、コレクションに静かな強さを与える。スカイブルーやパウダーピンクの柔らかなトーンが、グレー、ベージュ、キャメル、ブロンズといった中間色に洗練された軽やかさを加えていた。切りっぱなしのディテールがラフさを際立たせ、サテンやシャーリング・ファーといった触覚に訴える素材使いが、コレクションに豊かな広がりを与えている。
“パリらしさ”という象徴的な美意識を巧みに引き寄せながら、さらにはそれを自らの手で更新していくような<AMI>のクリエイション。 2月18日にはマレ地区に世界最大規模の旗艦店をオープンし、その歩みはさらに加速している。
<AMI>の躍進は、まだ始まったばかりなのかもしれない。
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- Text & Photograph : Ko Ueoka
- Edit : Yusuke Soejima