人と人の真ん中で作る服。浜中健太郎|EFFECTENデザイナー
浜中さんが手がけるセレクトショップUTILITY(ユーティリティ)を訪れると、フロアのあちこちに無造作に置かれたシルクスクリーンの原版が目に入る。これまでのコレクションで使用されてきたアーカイブだ。学生時代からテキスタイルを学び、自宅でせっせとシルクスクリーンを刷ってきたという浜中さん。ストリートのカルチャーをベースに、彼がブランドを立ち上げるまで、そして服作りに込める想いをきいた。
1982年、函館生まれ。文化服装学院テキスタイル科を卒業後、アッシュペーフランス、(株)スミスを経て2010年に仲間とセレクトショップutilityを立ち上げる。(株)colorless代表取締役兼effectenディレクターとして活躍する一方、飲食店のディレクションやドッグウェアブランドのディレクションなど活躍は多岐に渡る。あくまでも誰が来てもまったりできる空間utilityを維持する事をベースにしている。
僕のファッションの入り口は音楽なんです
僕、北海道の函館出身で。中三とか高校ぐらいのときに、すごいおしゃれな同級生が2人現れたんですよ。それどこで売ってるの?って一緒に服屋さんに連れていってもらったとき、Sex Pistolsのポスターを見て。衝撃を受けたんです。現代アート的な感じじゃないですか、色使いとかシルクスクリーンとか。それで、パンクのカルチャーにはまったんですよね。
僕は82年生まれで、当時ブルーハーツとかブランキー・ジェット・シティとかミッシェル・ガン・エレファントなんかを聴いていて、ロックってすごい格好いいなと思ってたんですけど、ミュージシャンになりたいという思考にはまったくならなくて。そういう人たちに着てもらう服を作りたいと思っていました。だから、僕のファッションの入り口は音楽なんです。
それで高校を卒業して、文化服装学院に入りました。テキスタイルデザイン科。僕、コレクションがどうこうとかあまり興味なくて、それより家でシルクスクリーンの版を作って、お風呂場で刷って…みたいなストリートなやり方が好きだったんですよね。
コミュニティから生まれるものにこそパワーがある
文化を卒業してからは、アパレル系の会社でマネジメントやバイイング、商品企画なんかを経験して、2010年に仲間と一緒にセレクトショップのUTILITYとオリジナルブランドのEFFECTENをスタートしました。僕は、ブランドが作りたかったというより、まず、この“空間”が欲しかったんです。
大西という文化時代からの友人と、前職がいっしょだった吉田と3人ではじめたんですが、ほかにも皮の職人とか、ブーツ作ってる職人とか、マルチにデザインできる同級生とか、スタイリングができる後輩とか…そういういろんな人たちが、空間があれば集まるじゃないですか。勝手にみんながつながって仕事をしていく感じが面白いと思った。いまエフェクテンのコレクションを撮影してもらっている写真家の高橋優也も、もともとは学生の頃からうちのお客さんだったんですよ。そうやって、コミュニティから生まれるものにこそパワーがあると思っています。
譲れない部分は、カルチャーをベースにもの作りをすること
エフェクテンのコレクションは、毎シーズンがらっとテイストを変えるんです。だから、前シーズンは好きだったけど、今季は買うものがないってこともあるかもしれない。でも絶対譲れない部分はあって、それはカルチャーをベースにもの作りをするということ。シルエットだったり、プリントの手法だったり、表現方法は時代に合わせてどんどん変えちゃっていいんじゃないかと思っています。あと、今季のテーマはこれだ!とか、そういうコンセプトを大きい声で伝えなくてもいいかな、と思っていて。伝えると押し付けになっちゃうから。
今の若い人たちってみんなすごくおしゃれじゃないですか。全身ファストファッションでもかっこよく着こなせるし。そういうところで千円で売っているロンTが、うちだったら1万円ぐらいする。じゃあなんでそういう服を作っているんだろうって興味を持ってもらえたら、その価値がわかってもらえるようにきちんとお話して、僕らの服作りのことを知っていただきたいですね。そうすることで、もっとファッションが好きになってくれたらいいなと思います。
頼りがいのある兄貴肌に、人なつっこい笑顔。人が人を呼び、創造的なコミュニティが生まれるのも納得だ。ファッション好きはもちろん、現代アートやストリートカルチャーに興味がある方もEFFECTENのコレクションに共感できる点は多いはず。今後も人と人との繋がりが生み出す多角的なクリエーションに期待したい。
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- text : Midori Sekikawa
- Photography : Yasuharu Moriyama