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揺れるフリンジ、一輪の花。春から夏へと辿る手仕事をRe-Seeで見つめる—— Bottega Veneta 2027年春夏コレクション

Oct 5, 2026
ランウェイの会場では、真っ白な空間に一人ひとりのために用意された椅子が並んでいた。その上には、柔らかなレザーを手仕事で仕立てた一輪の花。チューリップからシャクヤク、ユリへと続く小さな花々が、静かな会場に彩りを添えていた。2027年春夏の<Bottega Veneta(ボッテガ・ヴェネタ)>が描いた、春から夏への軽やかな移ろい。その余韻を辿るようにショーの後に行われた展示・Re-Seeを訪れると、ランウェイでは捉えきれなかった一つひとつの手仕事が浮かび上がってきた。

揺れるフリンジ、一輪の花。春から夏へと辿る手仕事をRe-Seeで見つめる—— Bottega Veneta 2027年春夏コレクション

Oct 5, 2026 - FASHION
ランウェイの会場では、真っ白な空間に一人ひとりのために用意された椅子が並んでいた。その上には、柔らかなレザーを手仕事で仕立てた一輪の花。チューリップからシャクヤク、ユリへと続く小さな花々が、静かな会場に彩りを添えていた。2027年春夏の<Bottega Veneta(ボッテガ・ヴェネタ)>が描いた、春から夏への軽やかな移ろい。その余韻を辿るようにショーの後に行われた展示・Re-Seeを訪れると、ランウェイでは捉えきれなかった一つひとつの手仕事が浮かび上がってきた。

ルイーズ・トロッターが掲げたテーマは、「春から夏へと移ろう身体」

今季のコレクションを手がけたクリエイティブ・ディレクター、ルイーズ・トロッターが目を向けたのは、春から夏へと移ろう季節の感覚だった。重ねていたものを少しずつ脱ぎ、身体が軽くなっていく。

ショーの会場では、ニュートラルな色調で構成された空間に、一人ひとりのゲストのための椅子が並ぶ。そこに添えられていたのは、柔らかなレザーを手仕事で仕立てた一輪の花。チューリップからシャクヤク、ユリへと続く小さな花々が、それぞれの座席に異なる彩りを添え、これから訪れる夏の気配を漂わせていた。

会場に漂っていた軽やかな空気は、そのままコレクションの素材や色彩にもつながっている。今季は、レザーのイントレチャートを軸に、フリンジやニット、クロシェ、ビーズなど異なるテクスチャーを重ねながら、それぞれの素材が持つ表情を引き出している。細やかな手仕事によって生まれる凹凸や揺らぎは、身体が動くたびに表情を変え、春から夏へと移ろう季節の軽やかさを服に映し出した。

家具から音楽まで、アーティストとつくるショーの空間

その感覚をさらに広げるように、今季はアーティストとの協働も取り入れられている。ベルリンを拠点に活動するイリヤ・ゴールドマン・グービンが手がけたKarton Hocker(カルトン ホッカー)は、段ボール箱を自身の身体で抱え、押しつぶすことで形づくられたもの。運搬のために使われる身近な素材を、身体を支える彫刻的なオブジェへと変換する彼の制作は、素材との直接的な接触から生まれる一点ごとの表情を特徴としている。互いに組み合わさる箱のふたは、レザーのフェットゥーチェを編み込むイントレチャートを想起させ、会場のオブジェとコレクションに通底する手仕事の感覚をつないでいた。

音の面でも、素材と同じように異なる要素を重ねる試みが行われた。フロリアン・ヘッカーによるサイトスペシフィックな音響作品では、スピーカーとステンレススチール製の音響反射板を組み合わせた20基の構造体が、それぞれ異なる音を発し、その場、その瞬間だけのコンポジションを形成。ショーにはさらに、英国人アーティストのマーク・レッキーによるオリジナルサウンドトラックが添えられ、1960年代から1990年代までのさまざまなジャンルや時代の音をサンプリングしながら、楽観的なエネルギーと未来への視線を描き出した。

Re-Seeで目を留めた、フリンジに見る新しいクラフツマンシップ

特に印象的だったのは、フリンジをはじめとする素材の扱い方。薄く削いだレザーやシルク、ラフィアなどを細く裂き、揺れや動きを生むフリンジへと変換された。レザーもまた、極限まで薄くすることで、従来のレザーが持つ重厚さから解放され、羽毛のような軽やかさを獲得している。素材の量感を削ぎ落としながら、動きによって豊かな表情を引き出すアプローチは、ルイーズ・トロッターが考える<Bottega Veneta>の新たなクラフツマンシップが表れているように思う。

ヨーロッパの夏を襲う酷暑や異常気象を思えば、これは単なる軽量化以上の意味を持つのかもしれない。何枚も重ね、贅沢な素材を纏うことだけが、ファッションの豊かさではない。暑さのなかでも心地よく、きちんとおしゃれを楽しみたい。そして、触れた瞬間にわかるような良いものの存在や、長い時間をかけて培われた技術も手放したくない。レイヤードやゴージャスな装いに心を躍らせる一方で、それを現実には許してくれないほど夏の暑さは年々苛烈になっている。そんな矛盾のなかで、クラフトの贅沢さを保ちながら、身体には軽やかでいられる服を提示する。

説明不要の職人技術が、ブランドのシグネチャー

ブランドのアイコンは、ロングコートをはじめ、ベルトやシューズなどの小物にまで広がった。バッグという定番の領域を越え、イントレチャートという技法そのものを、服や身体を取り巻くさまざまなアイテムへと開いている。ブランドを示すために大きなロゴを必要とせず、手仕事の痕跡そのものが<Bottega Veneta>であることを伝える。そのあり方には、今のラグジュアリーにおけるひとつの可能性が感じられた。

小物こそ、スタイルをつくる。<Bottega Veneta>が描く人物像

スタイリングを眺めていると、服そのものだけでなく、それを着た人の姿まで想像が広がっていく。特に目を引いたのが、特徴的なフォルムの帽子だ。紙でつくったかのような、どこか素朴で不完全な形をしたクロシェ編みの帽子や、ブリムの端を長く残し、かぎ針編みのフリンジをあしらったクロッシェフフリンジハットなど、手仕事の表情を感じさせる帽子が多く登場。日差しを遮る実用性を備えながら、均整の取れた美しさから少しずれた有機的なフォルムが、今季らしい空気をつくっている。それは、今回のコレクション全体に通底する、洗練されたものと有機的なもの、その「あいだ」にある感覚とも重なる。

バッグにも、その感覚は表れていた。クラッチバッグとショルダーバッグ、クラッチバッグをふたつ、あるいはショルダーバッグをふたつ持つなど、ひとつのルックのなかでバッグを重ねる提案が多く見られた。大きくても平たく細長い形が多く、「必要なものだけを持つ」ような実用性を備えているように、バッグそのものは決して過剰なものではない。だからこそ、複数のバッグを身体に重ねることで、それらは単なる収納ではなく、服と同じように身体を構成するひとつのレイヤーとして機能しているように見えた。

そして足元には、ヒールだけでなく、フラットなローファーやレザースリッポンが繰り返し登場。地面に近いシューズを合わせることで、ロングシルエットの服や繊細なクラフツマンシップを、ランウェイのための造形物として完結させない。むしろ、そのまま街を歩いていけるような日常の身体へと戻していく。

帽子をかぶり、いくつものバッグを携え、フラットな靴で歩いていく。その姿を想像すると、コレクションが描く人物像が立ち上がってくる。特別な場所のために完璧に装うのではなく、都市で生活しながら、季節の移ろいに合わせて少しずつ装いを変えていく人。冬の身体を覆う状態から、春夏に向かって少しずつ服を脱いでいくという今季の流れは、スタイリングにも通じている。アイテムを完成されたルックに固定するのではなく、重ねたり、外したり、持ち方を変えたりしながら、動くこと、持つこと、歩くことまでをひとつのスタイルとして捉えている。だからこそ、服だけでなく、その先にいる「人」まで想像させられるのだろう。

 


 

Bottega Veneta 2027年春夏コレクションはこちら

Bottega Veneta

ウェブサイト:https://www.bottegaveneta.com/
インスタグラム:@newbottega

  • Edit : Miwa Sato(QUI)

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