Rhizomatiks個展「After Understanding」開催、金属に刻まれる予測と誤差の軌跡
本展のプロッターは、回転する円盤とその中心を通る直動レールで構成された極座標型の装置。ダイヤモンドの針によって一筆書きの線を刻み、一度入った溝は消したり塗り直したりすることができない。会期を通じて稼働し続けるため、円盤の状態も時間とともに変化していく。
機械は自らが刻んだ跡を読み取り、これから進む先の金属がどれだけ刻まれているかを予測する。実際の測定結果と予測に差があれば線を曲げ、差がなければまっすぐ進む。目標や報酬、良し悪しの基準、乱数は設定されておらず、線を曲げる要因となるのは予測の誤差だけだという。

参考画像:「After Understandig」八機械時間、720mの試作 (提供;Rhizomatiks)

参考画像:「After Understanding」八十機械時間、720mの試作(提供;Rhizomatiks)

参考イメージ:「After Understanding」八機械時間、720mの試作で見えた曲線の5つのパターン (提供;Rhizomatiks)
この仕組みを通して本展が扱うのは、「理解」と「知識」の関係だ。何かが生まれ、検証され、次の結果へとつながっていく一方、その過程のすべてを人間が読み戻すことはできない。規則自体は公開され検証可能でありながら、金属の表面からどの線が先に刻まれたのかを判別することはできない。
真鍋大度は本作に至る実験で、線の込み入り具合と機械が各作品につけた点数との相関も測定しており、その結果はほぼゼロだったという。また、見た目が完全に同一の2枚に機械が異なる点数をつける例も現れた。両者の違いは刻まれた時間のみで、その差は金属表面には残らない。こうした実験を踏まえ、本展では「人間に残る知性とは何か」という問いを提示する。
前回展「Rhizomatiks Beyond Perception」では、「AIと生成芸術」をテーマに、Rhizomatiks自身が制作し著作権を持つ映像から切り出した約17万枚の画像のみを学習データとする《Beyond Perception Model》を開発。既存の基盤モデルに依存せず、自らの表現を学ぶモデルそのものを作品として提示した。その発展形である「recursive」では、モデルが生成した画像を大型LEDに映し、その画面をカメラで撮影して再び学習に戻すことで、来場者や周囲の環境も介入する再帰的な創作プロセスを展開した。
「After Understanding」では画面の中のAIから離れ、物理的な身体を持つ機械へと焦点を移す。プロッターは外部の情報を取り込まず、自らが金属に刻んだ傷だけを読みながら、会期中も動き続ける。
プロフィール
Rhizomatiks(ライゾマティクス)
2006年設立、東京を拠点に活動。アーティスト、クリエイティブディレクター、作曲家として個人でも活動する真鍋大度と、エンジニアの石橋素が主宰するクリエイティブ・プラクティス。音、映像、空間、システムを横断し、人間と非人間、現実と生成、制御と偶然のあいだに生まれる知覚や経験を探求する。アートやインスタレーションの制作、新たな表現技法やメディアの研究開発、社会、文化、テクノロジーを横断するプロジェクトを展開している。
これまでに東京都現代美術館、金沢21世紀美術館、NTTインターコミュニケーション・センター、余杭美術館で展覧会を開催。作品は金沢21世紀美術館に収蔵されている。
ウェブサイト:https://rhizomatiks.com/
Instagram:@rhizomatiks
開催情報
Rhizomatiks「After Understanding」
会期:2026年9月12日(土)- 10月17日(土)
会場:KOTARO NUKAGA(天王洲)
住所:〒140-0002 東京都品川区東品川1-32-8 TERRADA Art Complex II 1F
開廊時間:11:30 - 18:00(火 - 土)
休廊日:日月祝 ※9月13日(日)、10月11日(日)、10月12日(月・祝)は開廊
ウェブサイト:https://kotaronukaga.com/
Instagram:@kotaro_nukaga