「北欧のテキスタイルと暮らし展 Beauty for All」、暮らしに息づく北欧デザインの原点へ
本展では、スウェーデンとフィンランドを中心に、19世紀の手工芸からミッドセンチュリー期の黄金時代、そして現代のアートへと連なるテキスタイル約90点を紹介する。
家族のために織られたテーブルクロスやベッドカバー。名もなき女性たちの手仕事には、実用品を超えた祈りや誇りが織り込まれている。思い出の詰まった布を大切に使い続けるという感覚は、北欧の暮らしの芯にあるものだ。

ジャケット アンナ=カーリン・ヨブス・アルンベリ 2004 photo: Kentauros Yasunaga

ベッドカバー 作者不詳 1904 photo: Kentauros Yasunaga
本展の核となるのが、スウェーデンの社会思想家エレン・ケイによる『Beauty for All(美しさをすべての人に)』。「美しいと感じるものと暮らすことが幸せをもたらす」という彼女の言葉は、芸術を一部の特権から解き放ち、日常へと引き寄せた。その考え方は北欧全域へと広がり、ものづくりの現場から社会の価値観にまで影響を与えていく。

エレン・ケイが暮らしたストランド荘 photo: 須長檀
会場では、1899年設立のスウェーデン手工芸協会の活動や、リリィ・ジッケルマンによる伝統文様の記録にも触れられる。守ることと革新すること、その両輪が北欧の美を支えてきた背景が立ち上がる。
やがて織物は、空間を象徴する存在へと昇華する。マルタ・モース=フィエッターストロームが設立したMMF工房を軸に、バーブロ・ニルソンらが手がけたラグ作品は、教会などの特別な空間を彩り、織りの芸術性を確立した。

ラグ《貝殻》バーブロ・ニルソン 1943〔MMF工房〕 photo: Kentauros Yasunaga

テーブルクロス《庭園のクロス》バーブロ・ニルソン 1926 photo: Kentauros Yasunaga
一方で、プリント技術の発展はテキスタイルをより自由なものへと変えていく。マイヤ・イソラの《ウニッコ》《タンゴ》、ヴィオラ・グロステンのプリント布などは、人々が自ら選び、部屋をコーディネートする楽しさを広げた。
さらに、アグネータ・フロックやメリッサ・サンマルヴァーラによるタペストリーは、テキスタイルが個人の表現として広がる現在地を映す。布はもはや背景ではなく、空間の空気をつくる主体となる。

プリント布《ウニッコ》マイヤ・イソラ 1964〔マリメッコ〕 photo: Kentauros Yasunaga

プリント布《トゥリプー》ヴィオラ・グロステン 1951〔NK百貨店〕 photo: Kentauros Yasunaga

タペストリー《Joy》メリッサ・サンマルヴァーラ 2021 photo: Kentauros Yasunaga

若者たちが結成した織物工房「スーパー7」の制作の様子 photo: Kentauros Yasunaga
北欧の基礎学校で行われる手工芸教育「スロイド」にも触れながら、美しさが特別なものではなく、誰にでもひらかれているという価値観が静かに伝わってくる。
【開催情報】
北欧のテキスタイルと暮らし展 Beauty for All
会期:2026年3月4日(水)~3月16日(月)
会場:日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール
入場時間:午前10時30分~午後7時(午後7時30分閉場)
※最終日3月16日(月)は午後5時30分まで(午後6時閉場)
会期:2026年3月25日(水)~4月13日(月)
会場:大阪髙島屋 7階グランドホール
入場時間:午前10時~午後6時30分(午後7時閉場)
※最終日4月13日(月)は午後4時30分まで(午後5時閉場)
入場料(税込):一般1,200(1,000)円、大学・高校生1,000(800円)、中学生以下無料
※( )内は前売り料金。前売り券はローソンチケット、セブンチケット、イープラスにて各会場の会期前日まで販売。
主催:北欧のテキスタイルと暮らし展実行委員会
後援:スウェーデン大使館、フィンランド大使館
監修:川上玲子(北欧建築・デザイン協会 前会長)
協力:カスタール、スウェーデンハウス、天童木工
企画協力:JR東海エージェンシー、Handcrafteriet
お問い合わせ:03-3211-4111(日本橋高島屋S.C.代表)
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