6人の探究心が導く、21_21 DESIGN SIGHT企画展「デザインの先生」が11/21(金)より開催
本展は、20世紀のヨーロッパを中心に活躍した6人のデザイナーにフォーカスする。ブルーノ・ムナーリ、マックス・ビル、アキッレ・カスティリオーニ、オトル・アイヒャー、エンツォ・マーリ、ディーター・ラムス――いずれも独自の哲学と実践で、デザインを超えた新たな視座を提示してきた“先生”たちだ。
展覧会では、6人の“先生”たちを「構想者」「設計者」「プロジェクトする者」とも紹介している。これは、彼ら自身が名乗った「ゲシュタルター(Gestalter)」「エントヴェルファー(Entwerfer)」「プロジェッティスタ(Progettista)」という職能の呼び方に基づくものだ。それらの言葉が示すのは、「かたち」をつくることにとどまらず、人の生き方や社会、さらには環境とどう関わるかを見据える姿勢。そこに、デザインという営みの本質が浮かび上がってくる。

ブルーノ・ムナーリ「Falkland(フォークランド)」(1964年デザイン)

ヴァネチア・ビエンナーレ スイス館の模型をもつマックス・ビル(1948年) Ernst Scheidegger, max bill / pro litteris

アキッレ&ピエル=ジャコモ・カスティリオーニ「Arco(アルコ)」(1962年デザイン)

エンツォ・マーリ「Timor(ティモール)」(1967年デザイン)

ディーター・ラムス「SK 5」(ハンス・グジェロとの共同デザイン、1958年デザイン) ©rams foundation
展覧会ディレクターを務めるのは、ジャーナリストの川上典李子と、イタリアを拠点に活動するキュレーター・ライターの田代かおる。展示では、6人の“先生”たちの思考と実践を複数の角度からたどる構成となっている。
そのひとつが、本人の言葉や活動を紹介する映像インスタレーション。武蔵野美術大学の協力で制作された、映像作家・菱川勢一によるインスタレーションでは、6人の“先生”の声が空間に響き、彼らの活動が立体的に立ち上がる。一般に公開されてこなかったオトル・アイヒャーの映像も含まれており、貴重な資料に触れられるのも注目だ。
また、ウルム造形大学や「DANESE(ダネーゼ)」など、彼らが関わった教育機関やブランドの理念を紹介する展示。あわせて、日本とのつながりに焦点を当てた構成も見どころのひとつ。深澤直人、金井政明、向井知子ら、現代にその精神を受け継ぐ人物たちによるインタビュー映像が展開される。
さらに本展では、マックス・ビルやオトル・アイヒャーと親交を深めた向井周太郎の歩みにも光が当てられる。彼の思想と教育実践は、2人の“先生”たちと響きあいながら、日本のデザイン文化に深く根ざしている。
好奇心と勇気に満ちた“先生”たちの言葉と姿勢にふれることで、デザインがもつ本質的な問いとその可能性を、今、あらためて見つめ直したくなるはずだ。
【出展デザイナー:6人の“先生”】

ブルーノ・ムナーリ Photo: Ugo Mulas ©Ugo Mulas Heirs. All rights reserved.
ブルーノ・ムナーリ(1907–1998)
20世紀イタリアを代表する芸術家のひとりであり、未来派に参加したのち、グラフィック、彫刻、写真、インダストリアルデザインなど、分野横断的な活動を展開。アイロニーとユーモアに満ちた「役に立たない機械」や、子どもたちの創造力を引き出すワークショップ、教育活動にも力を注いだ。絵本や知育玩具の制作、ダネーゼ社との協働など、遊びと知性が響きあう実践は、今なお世界中で読み継がれている。

マックス・ビル Ernst Scheidegger, max bill / pro litteris
マックス・ビル(1908–1994)
スイス生まれの建築家・芸術家・グラフィックデザイナー。バウハウスで学び、数学的思考を基盤にした造形理論を探究。具体芸術運動を主導し、ウルム造形大学をオトル・アイヒャーらと共に設立。初代学長として、教育にも大きく貢献した。「文化財としての生産品」という理念のもと、名作「ウルムスツール」や時計など、日常に根ざしたデザインを数多く手がけた。

アキッレ・カスティリオーニ Photo: J.B. Mondino, courtesy of FLOS
アキッレ・カスティリオーニ(1918–2002)
イタリア・ミラノを拠点に活動した建築家・デザイナー。兄たちと共に照明器具や家具などの工業デザインを手がけ、「アルコ」「タッチア」などのプロダクトで知られる。トリノ大学、ミラノ工科大学でも教鞭をとり、教育者としても後進を育成。イタリア工業デザイン協会(ADI)の設立にも関わるなど、実践と制度設計の両面でデザイン界に大きな影響を与えた。

オトル・アイヒャー ©Karsten de Riese / Bayerische Staatsbibliothek
オトル・アイヒャー(1922–1991)
戦後ドイツを代表するグラフィックデザイナーであり、タイポグラフィと視覚コミュニケーションの革新者。ミュンヘン五輪のビジュアル計画や、ルフトハンザ航空のCIなどを手がけた先駆的存在。マックス・ビルらと共にウルム造形大学を設立し、新たなデザイン教育の道を切りひらいた。日常を取り巻く環境そのものをデザインする思想は、現在の情報設計にも通底する。

エンツォ・マーリ 撮影:筒井義昭 ©アクシス
エンツォ・マーリ(1932–2020)
美術家、デザイナー、思想家として活躍したイタリアの知性。ブルーノ・ムナーリの紹介でダネーゼ社と協働し、数多くの家具やプロダクトを発表。機能と形態の背後にある倫理や哲学を重視し、講演や著書でも積極的に発信を行った。丸富漆器や良品計画、飛騨産業など日本企業とのコラボレーションも展開し、その思想は現在のデザイン倫理にも深い影響を与えている。

ディーター・ラムス Photo: Sabine Schirdewahn ©rams foundation
ディーター・ラムス(1932–)
ドイツのインダストリアルデザインを象徴する存在。1955年にブラウン社に入社後、数々の名作製品を生み出し、長年にわたり同社のデザイン部門を牽引した。代表作には「SK 4」や「ET 66」などがあり、著書『Less, but better(より少なく、しかしより良く)』で提示した「良いデザインの10ヶ条」は、今日のプロダクトデザインにも強い影響を及ぼしている。
【開催情報】
展覧会名:企画展「デザインの先生」
会期:2025年11月21日(金)~2026年3月8日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2(東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン)
開館時間:10:00~19:00(入場は18:30まで)
休館日:火曜日、年末年始(2025年12月27日~2026年1月3日)
観覧料:一般 1,600円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
特別協賛:三井不動産株式会社
公式サイト:www.2121designsight.jp
Instagram:@2121designsight