音が織りに変わる瞬間、カールステン・ニコライの「WAVE WEAVE ― 音と織物の融合」が11/13(木)よりHOSOO GALLERYで開催
電子音楽と織物——物質と非物質を行き来しながら、知覚の奥行きを探る展示だ。
<HOSOO>の工房を舞台にした映像作品《WAVE WEAVE》では、織機の運動や糸のリズムを、電子音の構造と重ね合わせながら再構成している。経糸と緯糸が交わる瞬間、映像と音が同じアルゴリズムで呼応し、織りと音響がひとつの“波”として現れる。もう一方の織物作品《SONO OBI》は、音のソノグラム(超音波によって得られるいわゆるエコー画像)を織物として可視化した作品。実際の帯としての形をもちながら、音楽のアーカイヴでもあるこの作品は、織物と音のあいだに新たな表現の地平を切りひらく。

WAVE WAEVE 2025、映像作品 © Studio Carsten Nicolai Produced by Studio Carsten Nicolai and HOSOO Courtesy Galerie EIGEN + ART Leipzig/Berlin

WAVE WAEVE 2025、映像作品 © Studio Carsten Nicolai Produced by Studio Carsten Nicolai and HOSOO Courtesy Galerie EIGEN + ART Leipzig/Berlin

WAVE WAEVE 2025、映像作品 © Studio Carsten Nicolai Produced by Studio Carsten Nicolai and HOSOO Courtesy Galerie EIGEN + ART Leipzig/Berlin
映像に映るのは、<HOSOO>の織物工房や織機、糸、そして織りのプロセスそのもの。ニコライ自身がディレクションと編集を手がけ、電子音響と映像のリズムを精密に重ね合わせている。織機の振動、糸の震え、光の反射——それらがひとつの“音の構造体”として再構成され、布を織るという行為が、視覚と聴覚のあいだに漂う抽象的な運動として立ち上がる。
西陣織は、明治期にリヨンからジャカード織機をいち早く取り入れ、パンチカードという“コード”の思想を通して、のちのコンピュータ技術へとつながっていった。ニコライは織機を「宇宙を創る装置」として見つめ、時間そのものを織り込む媒介としての織物に着目する。<HOSOO>による革新と職人の手技が交差する場で、電子音響と西陣の時間が静かに共鳴している。
伝統とテクノロジー、触覚と聴覚。
そのあいだに漂う“音の手ざわり”を、静かな空間の中で感じたい。
【プロフィール】

Photo:Andrey Bold
カールステン・ニコライ
1965年、旧東ドイツ(カールマルクスシュタット/現ケムニッツ)生まれ。ベルリンを拠点に活動。ドレスデン芸術大学タイムベースドメディア科教授(2015年〜)。数学、科学、視覚芸術、音を横断しながら、自己組織化やエラー、システムといった概念を参照に、芸術の枠組みを拡張し続けている。ヴェネツィア・ビエンナーレ、ドクメンタXなど国際展への参加や、シルン美術館、ハウス・デア・クンスト、ベルリン新国立ギャラリーなどでの個展も多数。電子音楽名義「Alva Noto」としても知られ、坂本龍一とのコラボレーションや、映画『蘇えりし者:ナント』(The Revenant)の音楽でゴールデングローブ賞にノミネートされた。
URL:https://www.carstennicolai.de/
Instagram:@carsten.nicolai @alvanoto
【開催情報】
展覧会名:WAVE WEAVE ― 音と織物の融合
会期:2025年11月13日(木)〜2026年3月8日(日) ※祝日・年末年始は休廊
会場:HOSOO GALLERY(京都市中京区柿本町412 HOSOO FLAGSHIP STORE 2F)
観覧料:無料
電話:075-221-8888
URL:https://www.hosoogallery.jp/
【HOSOOについて】
HOSOOは元禄元年(1688年)、京都・西陣において大寺院御用達の織屋として創業した。京都の先染め織物である西陣織は1200年前より、貴族をはじめ武士階級、さらには裕福な町人たちの支持を受けて育まれてきた。HOSOOは今、帯やきものといった伝統的な西陣織の技術を継承しながら、革新的な技術とタイムレスなデザイン感性を加えることで唯一無二のテキスタイルを生み出し、国内外のラグジュアリーマーケットに向けて展開している。
URL:www.hosoo.co.jp
Instagram: @hosoo_official