セレクトショップ「RESTIR」の新業態「Rest!r」、東京に出現した「美しきカオス」
「RESTIR」のグランドフロアを独立させたコンセプトショップ
カオスとは「混沌」という意味があるが、無秩序な集合体であっても心地よさを感じ、エンターテインメント性を生み出すこともある。赤坂のセレクトショップ「RESTIR」が新たに始動させた「Rest!r」こそ、「美しきカオス」という表現がふさわしいように思う。「RESTIR」の赤坂のフラッグシップショップを訪れた方ならご存知だと思うが、1階で展開されているプロダクトはジェンダーレスでありジャンルレス、ときにはシーズンレス。その編集方針を受け継ぎ、よりライフスタイルに根付くラインナップにしたのが「Rest!r」だ。バイイングを手がけるのは赤坂と同様にクリエイティブ・ディレクターの柴田麻衣子。「Hyper Eclectic(ハイパー折衷主義)」を東京から発信し続ける「RESTIR」を長年率いてきた柴田だからこそキュレーションのコンセプトや方向性が明確で、アパレルもあれば美容関連商品、ファンシーなぬいぐるみとフューチャリスティックなアート作品が同居する空間であっても美しき、そして楽しきカオスが成立している。
ラグジュアリーでありながら瞬間風速的なトレンドも意識する
「Rest!r」は「RESTIR」からは切り離し、インショップやポップアップで東京から離れた地域でも展開していきたいという。「RESTIR」といえば大人の欲望を満たすラグジュアリーセレクトショップとしてファッションフリークに支持されているが、「Rest!r」はそこに加えて「今らしさ」をより強く意識していくという。今回の渋谷PARCOのポップアップでは韓国のブランドやアーティストが顔を揃えるが「トレンドのキャッチや発信に瞬間風速のようなスピードを感じ、ブランドのプレゼンテーションにも勢いがある国のひとつ」と柴田はピックアップの理由を話す。「最旬のカルチャーに関心がある方が自然と集まるコミュニティのようなショップにしたい」というのが柴田が描く「Rest!r」の構想だ。「RESTIR」のオリジナルブランドであり2025年春夏にリブランディングした<LE CIEL BLEU(ルシェルブルー)>の提案も「Rest!r」だからこその新しさを模索していきたいとも。ショップ名に「!(エクスクラメーションマーク)」が使用されているが、「Rest!r」に期待したくなるのは驚き、発見、感動などまさに「!!!」にあふれる出会い。それをきっと叶えてくれるに違いない。
左:LCDCディレクター、ボラ・チョン 中央:LCDCデザイナー、カーラ・イルヘ・ユ 右:「RESTIR」クリエイティブディレクター、柴田麻衣子
今回のフィーチャーブランドのひとつが韓国の<LCDC(エルシーディーシー)>。ポップアップに合わせて来日したディレクター&デザイナーに話を聞いた。

—<LCDC>のスタートはいつですか。
2023年です。
—「Rest!r」のポップアップ以前にも日本での取り扱いはあったのでしょうか。
私たちのブランドが日本で紹介されるのは初めてのことで、「Rest!r」のポップアップが完全に日本初上陸です。
—日本ではまだ知られていないと思うので、ブランドについて教えてもらえますか。
見慣れてしまったものを新しい視点で再解釈することをクリエーションの源泉としていて、「ヴィンテージの再構築」をブランドコンセプトにしています。韓国では30代のお客さんが多くて、それぞれの楽しみ方で<LCDC>をスタイリングに取り込んでくれている印象です。
—デニムもあればスウェットもカットソーもありアイテムはかなり幅広いですが、毎シーズンそうですか。
そうですね。素材やアイテムを特に絞ったりせず、毎シーズン幅広く作っています。スウェットなどはブランドのシグネチャーアイテムのようになっています。
—デザインのインスピレーションは何から得ることが多いですか。
「ヴィンテージの再構築」というのは必ず根底にあるのですが、インスピレーション源というのはシーズンによってバラバラですね。日常で感じたことから着想を得ることもあれば、映画などの作品から思いつくこともあります。
—「RESTIR」はご存知でしたか。
もちろん知っていました。ハイエンドとコンテンポラリーなブランドをキュレーションするのがとても上手なショップというイメージです。自分たちでは<LCDC>はハイエンドとコンテンポラリーの中間に位置するブランドだと思っているので、「RESTIR」からポップアップへの出店オファーがあったときはとてもうれしかったです。
—日本のお客さんに<LCDC>をどう楽しんでほしいですか。
こちらから「<LCDC>の服をこう着てください」というような発信はしないようにしています。選んでくれたお客さんがご自身のアイデンティティの表現のために<LCDC>を自由にアレンジして着てもらえたらそれがいちばんの喜びです。
—日本のブランドやファッションシーンはどのように映っていますか。
韓国のブランドはトレンドに敏感なのですが、一方でトレンドに流されやすいとも言えます。それに対して日本のブランドはトレンドを意識しすぎることなく、自分たちが大切にしている価値観をブラさずにクリエーションと向き合っている印象です。<LCDC>としてもそんなモノづくりをしていきたいという思いは強いです。
—日本だからこそ提案していきたいことなどはありますか。
日本のブランドとのコラボレーションは実現させたいことのひとつです。実は日本のアニメとのコラボレーションはやったことあるんですよ。
この投稿をInstagramで見る
—日本のお客さんとどんなコミュニケーションを楽しみたいですか。
「Rest!r」というイベントのおかげで日本のお客さんと接する機会を得ることができたので、服についてだけではなく、<LCDC>のコンセプトや考え方など大切にしている価値観まで伝えていきたいです。<LCDC>には5wayのカットソーなど、どうやって着たらいいの?って服も多いんです(笑)。私たちもたくさん説明したいので、なんでも聞いてください!
LCDC
韓国・聖水に位置するアート、デザイン、ライフスタイルを融合した複合⽂化空間の「LCDC SEOUL」のアパレルとして2023年にスタート。アーカイブピースを解体してシルエットを再構築、時間の痕跡を現代的な視覚⾔語へと翻訳し、洗練されたミニマリズムを提案している。
◼︎ フィーチャーブランド⽇程

9⽉19⽇(⾦) 〜9⽉22⽇(⽉) / LCDC *ディレクター来店予定

9⽉23⽇(⽕) 〜9⽉24⽇(⽔) / in・stru(men-tal).

9⽉25⽇(⽊) 〜9⽉28⽇(⽇) / 999HUMANITY *ディレクター来店予定

9⽉29⽇(⽉) 〜9⽉30⽇(⽕) / OHT NYC & Glow *両ファウンダー来店予定
◼︎ 詳細
Rest!r at PARCO SHIBUYA
会期:2025年9⽉19⽇(⾦)〜9⽉30⽇(⽕)
会場:渋⾕PARCO 4F POP UP SPACE “STAIRS”
住所:東京都渋⾕区宇⽥川町15−1
- Photograph : Kota Kurokawa
- Text : Akinori Mukaino(BARK in STYLE)
- Edit : Miwa Sato(QUI)






