日比野克彦による60年の軌跡、170点超で辿る回顧展「日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで」、10/5(日)まで水戸芸術館で開催中
「ひとり」から「だれかと」へ——つながりを求める日比野の活動の変遷を、生い立ちから現在まで辿る展覧会「日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで」が、現在、水戸芸術館現代美術ギャラリーにて10月5日(日)まで開催中だ。約60年におよぶ表現の変遷を、170点を超える作品や資料によって多角的に浮かび上がらせていく。
1980年代、段ボールを素材にイラストレーションの概念を拡張し、一躍時代の寵児となった日比野。しかし本展は、そうした初期の活躍だけでなく、90年代には自らと向き合い、形のないものの表現を模索し、2000年代には関係性を探るアートプロジェクトへと移行。さらに2010年代以降は美術館の館長、2020年代には大学長として、美術を福祉や医療などと掛け合わせ、社会と結びつけていく実践までを包括的に見せる構成となっている。

「オートバイ」(1984) 撮影:竹内裕二

「消える時間」《うごき》(1993) 撮影:冨岡誠

「私が初めて立ち止まったのは萱場の橋の上でした」(2002) 写真提供:HIBINO SPECIAL
展示では、幼少期のエピソードや小中学生時代の表現の芽生えを手がかりに、日比野が形成されていく過程を丁寧に掘り下げていく。「線を引く」「つながりを生む」といった「手つき」や、特徴的な「振る舞い」「姿勢」に着目することで、必ずしも形や物として残らない2000年代以降の活動も含め、日比野の拡張し続ける芸術実践に通底するものを探っていく。
さらに、「明後日朝顔プロジェクト」「こよみのよぶね」といった代表的プロジェクトや館長としての取組み等を、絵本作家・イラストレーターの大橋慶子や漫画家・宇佐江みつこが絵本やユーモラスな漫画として紹介。エピソードを重視した年譜や関係者のコメントも交え、多声的に日比野の芸術世界を浮かび上がらせている。

「明後日新聞社文化事業部」(2003-) 2003年の様子 写真提供:HIBINO SPECIAL

「こよみのよぶね」(2006-) 2021年の様子 撮影:日比野克彦

「わたしはちきゅうのこだま」(2020)より 写真提供:HIBINO SPECIAL

撮影:加藤健
個人のまなざしと他者との交差が織りなす日比野の表現を、観る側の視点であらためて問い直す機会となるだろう。
【プロフィール】
日比野克彦
1958年岐阜市生まれ。1984年東京藝術大学大学院修了。段ボール作品により1982年日本グラフィック展大賞を受賞。以降、国内外の展覧会に出品しながら、地域や福祉、教育、行政と連携するアートプロジェクトを多数展開。現在、東京藝術大学長、岐阜県美術館館長、熊本市現代美術館館長などを務める。
【開催情報】
展覧会名:日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで
会期: 2025年7月19日(土)~10月5日(日)
会場: 水戸芸術館現代美術ギャラリー
開場時間: 10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日: 月曜日(ただし9月15日は開館)、9月16日(火)
観覧料: 一般900円、団体(20名以上)700円
高校生以下/70歳以上/障害者手帳所持者と付き添い1名は無料(要証明書)
URL:https://www.arttowermito.or.jp/gallery/lineup/article_5358.html