Photo by Kanichi Kanegae Courtesy of Ota Fine Arts

Photo by Kanichi Kanegae Courtesy of Ota Fine Arts

Photo by Kanichi Kanegae Courtesy of Ota Fine Arts

ミャンマー出身のソー・ユ・ノウェは、民間伝承や民俗芸術、仏教、アニミズムといった、地域に根ざした信仰や芸術の伝承から着想を得て、神話的なイメージを通じて女性の身体やアイデンティティの多層性を彫刻で探っている。とりわけ「蛇の女神」というモチーフは、自己や再生、女性性を象徴する存在としてたびたび登場する。また、信楽で制作された新作には、観音像を題材としたシリーズも見られる。ミャンマーでは一般的に美しい女性像として表される観音が、日本の三十三間堂では男性像として表現されている点に着目し、神話的存在を通じて、ジェンダー・アイデンティティをめぐる新たなシリーズへと展開している。

ソー・ユ・ノウェ 《Four Revolutions》、2025年、炻器、釉薬、ガラス、95 x 105 x 90 cm © Soe Yu Nwe、Courtesy of Ota Fine Arts

ソー・ユ・ノウェ 《Kannon x Circle》、2025年、陶器、釉薬、エポキシ、17 x 30 x 32 cm © Soe Yu Nwe、Courtesy of Ota Fine Arts

ソー・ユ・ノウェ 《Kannon x Dentata》、2025年、陶器、釉薬、ガラス、エポキシ、24 x 40 x 38 cm © Soe Yu Nwe、Courtesy of Ota Fine Arts

一方、京都を拠点とする樫木知子は、日本画を想起させる柔らかな描線と、滑らかで多層的な絵肌を特徴とする絵画を通じて、身体を描き続けている。新作《私を探す》では、水面に吸い込まれるような人物像や、子どもの頃に摘んだという野花、風に逆らうオタマジャクシといったモチーフが丁寧に描き込まれ、浄土を思わせるような白昼夢的な情景が広がる。

樫木知子 《私を探す》、2025年、木パネルに麻布、アクリル、パステル、100 x 65.2 cm ©Tomoko Kashiki、Courtesy of Ota Fine Arts

樫木知子 《ツツジ》、2024年、木パネルに麻布、アクリル、パステル、100 x 72.7 cm ©Tomoko Kashiki、Courtesy of Ota Fine Arts

樫木知子 《僕はあの世の入り口だ》、2025年、木パネルに麻布、アクリル、パステル、49 x 68 cm ©Tomoko Kashiki、Courtesy of Ota Fine Arts

文化的・神話的なイメージを媒介に、現代における「美」の在り方とその根源を問い直す本展。二人の視点が交差する空間は、見る者にとって、美という概念をもう一度静かに見つめ直す時間となるかもしれない。

【プロフィール】
［ソー・ユ・ノウェ］
1989年ミャンマー生まれ。アメリカのロードアイランド・スクール・オブ・デザインで陶芸を学び修士号取得。2024年より信楽の滋賀県立陶芸の森にてアーティスト・イン・レジデンス参加中。主な展覧会に、「Burma to Myanmar」（大英博物館、2023年）、「Thailand Biennale」（チェンライ、2023年）、「Art Spectrum: Dream Screen」（ソウル、2024年）ほか。

［樫木知子］
1982年京都生まれ。京都市立芸術大学美術研究科で修士号・博士号取得。主な個展に「樫木知子」（オオタファインアーツ、2024年）、「アペルト05 樫木知子 ～Daydream～」（金沢21世紀美術館、2016年）など。主要コレクションとして、国立国際美術館、金沢21世紀美術館、トヨタアートコレクションほかに作品が収蔵されている。

【開催情報】
展覧会名：「ソー・ユ・ノウェ　樫木知子」
会期：2025年7月5日（土）－8月16日（土）
開館時間：11:00－19:00
休館日：日曜・月曜・祝日
会場：オオタファインアーツ（東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル3階）
入場料：無料
URL：https://www.otafinearts.com/ja/exhibitions/336-soe-yu-nwe-tomoko-kashiki-soe-yu-nwe-tomoko-kashiki/
Instagram：https://www.instagram.com/otafinearts/