「ジェンダーレスメイク」という表現、その向こう側にあるもの
曖昧な地平と潜在的なバイアス
社会的・文化的な“男性らしさ”“女性らしさ”へのカウンター的な文脈を汲んだメイクアップが「ジェンダーレスメイク」とも考えられるが、実際のところ、何をどうしたら「ジェンダーレス」と定義できるのかも曖昧ではある。
“男性らしい顔立ち”の印象を弱めることなのか、“女性らしい顔立ち”の印象を強めることなのか、はたまたその中間点に着地させるものなのか。“個人の趣味嗜好と理想に帰結させる”と判断を委ねられなくもないが、いずれにしても、潜在的なジェンダーバイアスとの関係性は無視できない。
“生命力”に、スポットライトを
するとますます「ジェンダーレスメイク」が、何をどのように表現できるのか考えてみたくなる。ジェンダーギャップを避けること?埋めること?否定すること?ではなく、 “人としての絶対的な共通項”を見つけ出し、そこに光を当てる作業なのかもしれない。
そうなるとやはり、至極シンプルに、“生命力の表現”が一つのキーとして浮かび上がる。限りなくナマっぽい肌、意志を秘めたまなざし、ほどよく毛量のある眉やまつ毛、血色のよい唇と頬…。
「ジェンダーレスメイク」とは、“そこで、その人が、確かに生きていること”をありありと感じさせる手段ともいえそうだ。“その人”から放たれる生命力の強さ、ひいては眩しさそのものをポジティブに表現するように。
生きること、人生を礼賛すること
与太話ではあるが、平安時代の男性(貴族)も化粧を施していたわけだから、その行為自体の歴史は古い。美意識と自信は相関関係にあるだろうし、それを礼賛するスピリットは現代にも受け継がれている、といえる。
「ジェンダーレスメイク」の表現の妙が、誰かの自信や人生の豊かさにつながることを願ってやまない今日。その肌に触れる時、社会的・文化的な性差など、単なる記号と解釈しておけばよいのではないだろうか。
examples of MAKE-UP
eyes
乳液のようなリキッドテクスチャーを、
ラフなタッチで、アイホール全体にオン。
ゴールドトーンとパールが密着し、
繊細でミステリアスな目もとが完成。
THREE
ユナイテッドフルイドアイカラー X02
¥3,850
cheek
頬の外側にブラウンニュアンスをのせ、
落ち着きのある陰影と立体感をプラス。
NARS
オールザットグリターズ ライトリフレクティング チークパレット
¥8,690
lip
ヘルシーな血色感を際立たせるデューイーなレッドで「妖艶さ」をクリエイト。
正装をまとう感覚で、しっかりとストロークして。
RMK
リクイドリップカラー EX-07
¥4,180
—Hair&Makeup : Naoyuki Ohgimoto (POIL)—
年齢やジェンダーを超えた“その人に似合う”メイクを手がける。雑誌のほか、ミュージックPVやCDジャケットなど、アーティストのヘア&メイクアップも担当。
- Model : Taito Hiraiwa(Bravo Models)
- Photography : Kei Matsuura (STUDIO UNI)
- Hair&Makeup : Naoyuki Ohgimoto (POIL)
- Styling : Chiaki Harada
- Art Direction : Mitsunori Ishita (STUDIO UNI)
- Text : Megumi Nakajima (STUDIO UNI)