頑張った手を一旦止めて、珈琲片手に読んで欲しい本3選
私自身もその一人で、時間管理の厳しさを痛感している。
今回は、頑張った手を一旦止めてゆっくり珈琲でも飲みながら読んで欲しい本をご紹介。
本を読みたいけれど、大人になってから小説を読むとなると少し気合を入れなければ読めなくなった方も多いのではないだろうか。
だが、今回紹介する本は3作品とも短編集なのでなかなかまとまった時間が取れない方も合間時間に読書を取り入れたい方にも読みやすい作品になっている。
短編集は、複数の作品が一冊にまとまっているので、本棚で好きな本を選ぶように、気になった物語から読むのもおすすめ。
コーヒーブレイクに読む喫茶店の物語 – 『このミステリーがすごい!』編集部
“チーム・バチスタ”の海堂尊、“珈琲店タレーラン”の岡崎琢磨、“サイレント・ヴォイス”の佐藤青南など大人気作家達の書き下ろし短編集で、ほっこり泣ける物語から、ユーモア、社会派、ミステリーまで様々なジャンルの”喫茶店”に関する物語が25作収録されている。
有名なシリーズのスピンオフものがあったり、一つ一つの物語は短いのにきちんと作者の個性を感じられた。
知らない作者も多かったが、作者の他の作品読んでみようかなという気にさせてくれる新しい出会いのある一冊だった。
全て物語の舞台が”喫茶店”という馴染み深い場所なので想像しやすく、実際に喫茶店に行って空気感を味わいながら読むのもおすすめ。
私が特に気に入った物語は、柏てん の「高架下の喫茶店」。
”俺の職場は、高架下にある古い喫茶店。電車が通るたび地響きが鳴り、設備も古いが、こんな店でも意外と人は途切れることなくやってくる。中には俺目当てで店にやってくる客というのも存在する。常連客の美枝子さんもその一人。
(「高架下の喫茶店」より引用)
ショートショートなのであまり詳しく内容は言えないが、6ページという短い物語の最後に一気に物語の見方が変わる展開がある。少し切なくてほっこりするお話。結末を知ってから読み返すときちんと伏線があって、ついもう一度読み返したくなる物語。
25もの異なるジャンルの物語がその時その時の私を異空間に連れていってくれる。
作家と珈琲 – 平凡社編集部
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毎日の食卓で、行きつけの喫茶店で、異国の地で味わう、一杯の珈琲。昭和の文豪や現代の人気作家によるエッセイ、詩、漫画、写真資料を収録。珈琲の香りただよう52編。
「コーヒーはゼイタクなようでもあるが、いつまた家計がゼロになるかわからないから、飲める時に飲んでおく。」(「ある一日」 水木しげる より引用)
「僕はコーヒーの知識はないけれど、飲みだしたとき、もう一杯飲んでもいい思うのに、飲み終わったとき、それだけで良くなってしまうのが、おいしいコーヒーだ。」(「喫茶店で本を読んでいるかい」植草甚一 より引用)
様々な作家たちの珈琲にまつわるエピソードや詩に触れる事ができる一冊。
今や当たり前に私たちの生活の一部にある”珈琲”やカフェだが、一昔前の人間にとっては贅沢であり憧れでもあったのだ。
だが、いつの時代も人々は珈琲と共にあるのだなと実感する。
月とコーヒー – 吉田篤弘
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【忘れられたものと、世の中の端の方にいる人たちのお話です。】 帯に書いてあったこの言葉に惹かれて、私はこの本を手に取ったのだった。
『「月とコーヒー」というタイトルは自分が小説を書いていく上での指針となる言葉の一つです。
生きていくためには必要ではないかもしれない。でも、日常を繰り返していくためにはなくてはならないもの。
いつでも書いてみたいのは、そうそうしたとるにたらないもの、忘れられたもの、世の中の隅の方にいる人たちの話です』
(「月とコーヒー」あとがき 引用)
最近引っ越してきたお隣さんの料理が気になり、匂いを嗅いで次の日自分も真似て作ってみる。「隣のごちそう」。
映写技師に恋をしているアオイは毎日その映写室にサンドウィッチを届けにいく。「映写技師の夕食」。
小さな工場で青いインクを作る青年と、その青いインクに惹かれた戸島がインクを作っている人に会うためにある町に出かける。「青いインク」、「青いインクの話のつづき」。
一つ一つのストーリーに大きな展開はないものの続きがとても気になって、ついその先を想像してしまう話ばかり。
自分が知らないだけで、今日もどこかの街の誰かの1日に起こっていそうな、優しくてささやかな物語たち。
忙しなく過ぎて行く1日に、心の余裕と少しの文学を。
頑張った手を止めて、珈琲と読書で疲れた頭を癒して。
- ライター : Rina Shijo