カリム・B・ハミド日本初個展「Upon The End of Play and Infancy」
イラストレー ションの流れを汲む作品が人気を博すアジアにおいて、彼の個展の開催は、今後の美術の在り方を示す一つの転換点となることだろう。
この度メグミオギタギャラリーでは、カリム・B・ハミドの日本初個展 ‘Upon The End of Play and Infancy’ を開催。
1966 年カリフォルニア州ロサンゼルス生まれのハミドは、イギ リスのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツに学び、その後 1994 年にサンフランシスコ芸術大学で修士号を取得、現在はコロラド州を拠点に活動。これまで欧米を中心に数多くの個展やグループ展を開催し、作品は世界中のコレクターに収蔵されている。
Portrait 61(detail), 2022, 32 x 24 cm, oil and acrylic, mixed media on wood panel
古典的な美術史から現代の大衆文化に至るまで、女性の身体が常に理想化され、消費されてきた点は、ハミドの作品の一貫した主題になっている。歴史やメディアにおいて女性が極めて表面的に表現されることを受け、彼は様々な情報源を参照しながら、歪められ、誇張された女性像を描くことで、男性の視線が何を意味するのかに焦点を当てている。それは見ているものだけでなく、どう見るかという芸術に関する彼の考察だ。作品はかつての世界に存在した親密さやロマンチシズム、人間的要素を詩的に解釈したものであり、それを殊更強調するため、彼は画材の流動性を利用している。また、分解と構築、描画と消去の繰り返しという一見非効率的な制作工程は、慌ただしい現代において希薄な「間」の感覚を作品にもたらし、そこに解釈の余地を与えている。
ハミドは自身の作品を「心霊考古学」と呼び、そのインスピレーションとして分野の異なる3人の作家を挙げている。知性や技巧が持てはやされた美術的潮流に対し、具象画家のフランシス・ベーコン(1909-1992)は即時性のある、直感的で身体的な表現によって全く新しい視覚的価値を提示。映画監督のアンドレイ・タルコフスキー(1932-1986)は、時間や画像、音を曲げ、奇妙で洞察に満ちた映像を作り出した。ハミドはペインティングの中で、特定の時間を曲げたり歪めたり、引き伸ばしたりして、人間が感じられるものの間にある「霊的」な瞬間を抽出。作曲家のアルフレート・シュニトケ(1934-1998)は、初期の協奏曲の多くで、強烈で突発的な、しかし伝統的により親しまれているクラシック音楽の形式に融合した音を開発。こうした美術学生時代の発見をきっかけに、ハミドは長く受け継がれてきたものと、何か新しく、かつ分離したものを作品に導入する方法を独自に追求してきた。
今展では、過激さと神聖さ、荒々しさと繊細さを見事に調和させたペインティングの新作約12点を展示。
観察される人物や物事の要素を、通常の条件付けられた目には映らない深度で描き出す、ハミドの作品をぜひ堪能してほしい。
カリム・B・ハミド / Karim B Hamid
会場:メグミオギタギャラリー 東京都中央区銀座2-16-12銀座大塚ビルB1 03-3248-3405
会期:2023年5月19日(金)- 6月10日(土) 12:00 – 18:00
休 廊 日:日・月・祝