束芋による展覧会「束芋画 国宝」、吉田修一『国宝』の挿絵500点をポーラ ミュージアム アネックスで展示
本展で紹介されるのは、2017年から2018年にかけて朝日新聞で連載された『国宝』の挿絵作品だ。連載当時、束芋はまず墨による線画を描き、その後、小説のストーリーを読み込みながら、場面ごとの感情や空気を色彩として重ねていった。線の上に色を置く過程には、物語の世界だけでなく、その時々の自身の感覚や身体性も反映されていたという。

束芋 「国宝 #499~500」和紙に墨と顔彩 2016-2026 Photo by Keizo Kioku

束芋 「国宝 #166~169」 和紙に墨と顔彩 2016-2026 Photo by Keizo Kioku
今回の展示にあたり、束芋は新聞入稿時にデータ上で合成していた色彩部分を、和紙に描き留めた線画の上に改めて着彩し、作品として完成させた。約10年前に描かれた線やイメージを手がかりに、当時の感覚を現在の身体で呼び起こしながら色を重ねる行為には、時間を経て作品と再び向き合う感覚と、新たな発見があったと語っている。
束芋はアーティストステートメントの中で、「絵を描く」ことについて、自分の中にあるものをそのまま外に出す行為としては難しいものと捉え、自身が手を動かすためには“理由”と“システム”が必要だと記している。『国宝』の新聞連載の挿絵依頼は、その“絵を描く理由”となった。
制作では、吉田修一の『惡人』連載時の挿絵で用いた“システム”の一部を引き継ぎ、横長の和紙の右から左へ時間軸を設定。前日の物語が翌日の物語へ影響していく流れを、イメージの連なりとして描き留めている。一方で、『惡人』とは異なる印象を目指し、『国宝』では一定の細さを保った線を採用。小説に漂う空気や登場人物の感情のような目に見えないものを、色へと置き換えた。
線と色にそれぞれ役割を持たせることで、新聞紙面の小さな挿絵欄にも、繊細さと大胆さが同居する画面を目指したという。新聞という日々更新されるメディアの中で生まれたイメージが、10年の時間を経て、和紙と絵具の質感を伴う作品として改めて提示される。
プロフィール
束芋(たばいも)
現代美術作家。浮世絵を思わせる色使いで独特のリズムを持つ手描きアニメーションを、空間に構成するインスタレーションで知られる。何気ない日常風景の中に、現代社会の歪みや人間の心理をシュールに描き出す作風で、1999年のデビュー以降、国際展にも多数出展。2011年の第54回ヴェネツィア・ビエンナーレでは日本館代表作家に選出された。
舞台作品のクリエーションや、海外のアニメーション作家らとの大型インスタレーションの共作など、異なるジャンルの表現者との協働も重ね、空間と身体の新たな関係性を模索してきた。近年は、自身の内側にある記憶や、身近な物質がまとう時間などをテーマに制作を続けている。
Instagram:@imo.studio
開催情報
束芋画 国宝
会期:【前期】2026年7月17日(金)〜8月9日(日)
【後期】2026年8月11日(火・祝)〜8月30日(日)
会場:ポーラ ミュージアム アネックス
住所:〒104-0061 東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
開館時間:11:00〜19:00
入場:18:30まで
休館日:2026年8月10日(月)
入場料:無料
主催:株式会社ポーラ・オルビスホールディングス
協力:ギャラリー小柳、家具屋利右衛門
お問い合わせ:ポーラ ミュージアム アネックス 050-5541-8600(ハローダイヤル)
ウェブサイト:http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/
Instagram:@pola_annex
