津田直「LO」がタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルムで開催、連なる『LO』の風景をたどる
これまでも津田直は、ブータン王国や北極圏、リトアニアなど世界各地を訪れ、土地の中に潜む人の行いや、人と自然との交感、その関係性をとらえた作品を発表してきた。本シリーズは、仏教の原点を辿るべく、チベット仏教の文化や伝統が色濃く残るネパール北部のムスタン地方を旅して撮影されたものだ。約1か月にわたる旅路では、標高2,500〜4,000mほどの場所を日々移動していたといい、空気が澄み渡れば8,000m峰のヒマラヤの山々を目の前に望むことができる。その広大な景色には、積層した時間と自然の威容が感じられる。

Nao Tsuda “LO - Cupola #31”, 2024/2025, Pigment print, 59 x 108 cm, © Nao Tsuda
『LO』シリーズのランドスケープ作品は、特徴的な半円形のフレーミングによって構成されている。この形状は、「風景に四つ角は必要か」という問いから始まったものだと津田は語る。その後、ネパールの現地や帰国後まで感じていたある種の「浮遊感」が、「キューポラ」を思わせる眺めへとつながり、半円のランドスケープが生まれた。視界の上部が庇で遮られているかのようなこの視覚表現は、風景とそれに対峙する者のあいだにある距離や関係性をあらためて意識させるものでもある。ネパールの地で古代の人々が洞窟の穴から風景を眺めた体験にも、どこか通じるものがある。

Nao Tsuda “LO - Inverted Glass #1”, 2024/2025, Pigment print, 13.3 cm x 10 cm, © Nao Tsuda
タイトルの『LO』という言葉は、英語「look」の古語「locian」に由来すると同時に、撮影地である旧ムスタン王国の首都「Lo Manthang(ローマンタン)」から採られている。本シリーズのテーマには、「見る」こと、「目を向ける」ことがある。自らの仕事を「翻訳」と呼び、「言葉以前の世界を写真を通じて呼び覚ましたい」と語る津田は、土地のもつ記憶や、そこで形づくられてきた人々の生活や営みのなかから、輪郭を帯びはじめた存在へ目を向ける。自らの足で彼の地を歩みながら紡がれた風景は、見るという行為そのものに、あらためて意識を向けさせる。
連なっていく『LO』の流れを追うことで、このシリーズが抱える視線の奥行きにより深く触れられそうだ。
プロフィール
津田直
1976年、神戸市生まれ。2010年に芸術選奨文部科学大臣新人賞(美術部門)を受賞。大阪芸術大学客員教授。主な作品集に『漕』(2007年)、『SMOKE LINE』(2008年)、『Storm Last Night』(2010年)、『SAMELAND』(2014年)、『Elnias Forest(エリナスの森)』(2018年)、『やがて、鹿は人となる/やがて、人は鹿となる』(2021年)、最新作に『LO』(2025年)などがある。
ウェブサイト:https://tsudanao.com/
開催情報
津田直「LO」
会期:2026年4月3日(金)– 5月2日(土)
会場:タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム
住所:〒106-0032 東京都港区六本木5-17-1 AXISビル2F
開館時間:12:00 – 19:00
休館日:日・月・祝祭日
観覧料:無料
ウェブサイト:https://www.takaishiigallery.com/jp/
Instagram:@takaishiigallery