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虚構の画家が描く“戦争の残響”、ユアサエボシの初個展「でいかい」がギャラリー小柳にて12/20(土)より開催

Dec 12, 2025
12月20日(土)より、東京・銀座のギャラリー小柳にて、ユアサエボシによる初個展「でいかい」が開催される。本展では、金沢21世紀美術館で発表された作品3点と新作7点を含む計10点が展示され、虚構と現実が交錯する“戦争の風景”が描き出される。

虚構の画家が描く“戦争の残響”、ユアサエボシの初個展「でいかい」がギャラリー小柳にて12/20(土)より開催

Dec 12, 2025 - NEWS
12月20日(土)より、東京・銀座のギャラリー小柳にて、ユアサエボシによる初個展「でいかい」が開催される。本展では、金沢21世紀美術館で発表された作品3点と新作7点を含む計10点が展示され、虚構と現実が交錯する“戦争の風景”が描き出される。

ユアサエボシ(1983-)は、自らを「大正生まれの三流画家・ユアサヱボシ(1924-1987)」と偽って創作活動を行うアーティストだ。シュルレアリスムに影響を受けた絵画表現を用いながら「擬態する画家」として、歴史の隙間に巧みに“嘘”を滑り込ませる。今回の展示作品もすべてこの“ヱボシ”が遺したとされる戦争にまつわる絵画だ。

《少年》には、荒れた草原に佇む若い男の姿が描かれる。茶色く濁った海と、彼方にかすむ工場群。作家はこの構図を「彼岸と此岸」と語り、少年の姿に“戦地に赴かぬ者”の死と記憶を重ねる。少年のモデルとなったのは、戦時中に作られた土人形の玩具であり、背景の草花や建築も時代資料をもとに構成されている。

ユアサエボシ《少年》 2024 年、キャンバスにアクリル、162 x 227.3 cm、© Ebosi Yuasa / Courtesy of Gallery Koyanagi

そのほか、胸に勲章を輝かせながらも滑稽な表情の《似非元帥》、戦後の健康至上主義を風刺する《健康第一》など、多面的なアプローチで「戦争の残響」を描いた作品が並ぶ。

ユアサエボシ《似非元帥》 2025 年、キャンバスにアクリル、53 x 45.5 cm、© Ebosi Yuasa / Courtesy of Gallery Koyanagi

ユアサエボシ《健康第一》 2025 年、キャンバスにアクリル、145.5 x 145.5 cm、© Ebosi Yuasa / Courtesy of Gallery Koyanagi

展覧会タイトル「でいかい」は、土人形(泥の塊)と濁った海(泥の海)という、戦争に“行かなかった者”が見た記憶と時代の象徴だという。個人の物語ではなく、時代の感情を刻むというコンセプトが、本展全体を通して静かに流れている。

歴史に潜む“もうひとつの視点”と、美術における虚構の可能性。その境界線を撹乱するような体験が、静かな余韻とともに広がっていく。

【作家プロフィール】
ユアサエボシ
1983年千葉県生まれ。大学卒業後に金融関係の会社が倒産し、画家への道へ。東洋美術学校で学んだのち、「大正生まれの三流画家・ユアサヱボシ」に擬態し、架空の美術史の中に作品を差し込む独自の表現を展開する。金沢21世紀美術館、東京都現代美術館などに作品が収蔵されている。
Instagram:@ebosi_yuasa

【開催情報】
展覧会名:でいかい
会期:2025年12月20日(土)〜2026年3月7日(土)
オープニングレセプション:12月20日(土) 17:00〜19:00
会場:ギャラリー小柳
住所:東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル 9F
開廊時間:12:00〜19:00
休廊日:日・月・祝日(2025年12月28日〜2026年1月12日は冬季休廊)
観覧料:無料
問い合わせ:03-3561-1896 / mail@gallerykoyanagi.com
公式サイト
Instagram:@gallerykoyanagi

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