「Obla」セルバン・イオネスクが色と線で組む円のコンポジション
イオネスクは1984年にルーマニアに生まれ、ニューヨークで育ち、現在はパリとニューヨークを拠点に活動する。プラット・インスティテュートで建築学を学び、レンセラー工科大学で非常勤教授を務めた経歴を持つ。徹底したドローイングの実践から生まれる特有の線と鮮やかな色彩、そして線に動きを与えるカトゥーン的なジェスチャーを特徴とし、擬人化された形と抽象的な形を融合させながら、スケールと形態を変化させ、即興的な動きを生み出している。
展覧会名の「Obla」は、古ルーマニア語の“Oblamnic”に由来し、頭上で荷を支える円形の枕を指す。Oblamnic が外側の重さを受け止めて頭部を保護する構造であることは、イオネスクが円を開口部であり負荷の象徴とも捉える視点と響き合う。円はのぞき穴のように内部を覗かせる形態でもあり、「支えること」と「さらけ出すこと」という本展のテーマを導く要素になっている。

《Bear》(2025), H80 × W149 × D5.2 cm, oil on panel with shaped painted steel frame and steel hardware, ©︎Serban Ionescu, Courtesy of AKIINOUE

《Ambulance》(2025), H75.2 × W76.5 × D5.5 cm, oil on panel with shaped painted steel frame and steel hardware, ©︎Serban Ionescu, Courtesy of AKIINOUE

《Slider》(2025), H48.7 × W49.5 × D5.5 cm, oil on panel with shaped painted steel frame and steel hardware, ©︎Serban Ionescu, Courtesy of AKIINOUE
9点の円形絵画はアルミニウムの円形フレームを器とし、内部に配置された色面と線が多方向へ向かう構成だ。中心を持たずに像が内側へ広がり、イオネスクはこのシリーズを「内的具象」と呼ぶ。内面を構造として扱う姿勢が示されている。

《Hermit》(2025), H198 × W110 × D90 cm, powder coated steel, steel hardware, acrylic paint and plastic hardware, ©︎Serban Ionescu, Courtesy of AKIINOUE
あわせて発表される2体の彫刻作品は、断片を組み合わせることで人体的な形態と建築的な構造を行き来する造りになっている。遊戯性と構造的な厳密さがひとつの造形に重なり、スケールの違いが空間の印象を変えていく。パリで制作され東京で再構築されるプロセスは、作品にある分解と再形成の動きを際立たせている。また、「Obla」という語の響きはビートルズの“Ob-La-Di, Ob-La-Da”を思わせる反復を含み、イオネスクが扱う円の継続性ともゆるやかに重なる。
色と線の積層が、円を軸にした構造の広がりを空間に引き出す。
【プロフィール】
セルバン・イオネスク
1984年ルーマニア生まれ。ニューヨークで育ち、現在はパリとニューヨークに拠点を構える。プラット・インスティテュートで建築学の学士号を取得。2010年から2016年までレンセラー工科大学建築学部の非常勤教授を務める。彫刻、絵画、デザイン、建築など多領域にわたる制作を展開。
Instagram:@serbanserban
【開催情報】
「Obla」
会期:2025年11月25日(火) ‒ 2025年12月27日(土)
時間:11時 - 19時(日・月・祝 休廊)
会場:AKIINOUE(〒150-0034 東京都渋谷区代官山町2−3 THE ROWS 2F)
オープニングレセプション:2025年11月23日(日) 17時 - 19時
※アーティスト来日予定
URL:https://akiinoue.com/ja/
Instagram:@akiinoue_tokyo