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水戸で“群島”が立ち上がる「磯崎新:群島としての建築」、建築家の思考を歩く大規模回顧が11/1(土)より開催

Oct 28, 2025
水戸芸術館現代美術ギャラリーで「磯崎新:群島としての建築」が2025年11月1日(土)〜2026年1月25日(日)に開催される。(PHOTO:磯崎 新《水戸芸術館》1988年、シルクスクリーン・プリント)

水戸で“群島”が立ち上がる「磯崎新:群島としての建築」、建築家の思考を歩く大規模回顧が11/1(土)より開催

Oct 28, 2025 - NEWS
水戸芸術館現代美術ギャラリーで「磯崎新:群島としての建築」が2025年11月1日(土)〜2026年1月25日(日)に開催される。(PHOTO:磯崎 新《水戸芸術館》1988年、シルクスクリーン・プリント)

本展は、2022年末に逝去した磯崎新の没後、国内初となる大規模回顧である。建築・都市計画から著述、キュレーション、芸術家との協働まで、60年以上にわたる多領域の実践を「群島(アーキペラゴ)」というコンセプトで編み上げ、当館自体の空間も“ひとつの展示”として横断的に体験する構成だ。

当館の設計者でもある磯崎は、20世紀を代表する最も創造的で先駆的な建築家のひとりであり、2019年には建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞を受賞した。建築や都市計画にとどまらず、著作やキュレーション、芸術家や知識人との協働などを通じて、思想・美術・文化論の分野にも横断的に関わり続けた。

「群島としての建築」と題した本展では、決して単一の領域にとどまらない磯崎の活動を“群島”のように構成する。「都市」「建築」「建築物」「フラックス・ストラクチャー」「テンタティブ・フォーム」「建築外(美術)」を手がかりに、模型や図面、スケッチ、インスタレーション、映像、版画、水彩画など多様なメディアを通じて磯崎の軌跡を辿り、自身が設計した水戸芸術館という舞台で、建築の枠を超えた創造の全貌を体感できる構成となっている。

出品予定には、《空中都市・新宿計画》(1960–61、模型)、《つくばセンタービル》(1979–83/竣工1983)、《群馬県立近代美術館》(1971–74、シルクスクリーン〈1983〉)、《奈義町現代美術館》(1994、水彩)などが挙がる。さらに、熊本県全域に建築を誘発した《くまもとアートポリス》(1988–98)や、国内外6名の建築家が集合住宅を競作した《ネクサスワールド》(1989–91)のコミッショナーとしての仕事もフォーカス。個の作家像にとどまらない、プロジェクト生成のダイナミズムに触れられる構成である。

《空中都市・新宿計画》1960-61年、模型(1: 200)、1990年、木、H240×W240×D180cm ©Kochi Prefecture, Ishimoto Yasuhiro Photo Center, Photo: Yasuhiro Ishimoto

《孵化過程》1962年、展示風景「Arata Isozaki: PROCESS」2011年 Courtesy of MISA SHIN GALLERY, Tokyo, Photo: Keizo Kioku

《水戸芸術館》1990年竣工、展示風景「Arata Isozaki: In Formation」2023年 Courtesy of Power Station of Art, Shanghai

《つくばセンタービル》1983年竣工、竣工写真、1983年 ©Kochi Prefecture, Ishimoto Yasuhiro Photo Center, Photo: Yasuhiro Ishimoto

《東京都新都庁舎計画設計競技》1985-86年、シルクスクリーン、1986年、H80×W120cm ©Estate of Arata Isozaki

《カタール国立コンベンションセンター》2011年竣工、竣工写真、2011年、Photo: Hisao Suzuki

《群馬県立近代美術館》1974年竣工、シルクスクリーン、1983年、H90×W63cm ©Estate of Arata Isozaki

磯崎は「群島(アーキペラゴ)」を、イタリアの哲学者マッシモ・カッチャーリの『L’ arcipelago』(1997)を手がかりに、複数の核がゆるやかに連関する空間思考として展開してきた。本展ではこの概念が、都市から芸術実践までを横断するナビゲーションとして働き、当館という“島”を歩くほどに多様な相貌が立ち上がる。

70年代主要建築を版画化した「還元」シリーズ(1983)や、80年代後半から90年代前半の建築をモチーフにした24点の水彩(1994)も登場する。各地を旅した際のスケッチブックから抜粋されたドローイングの展示や、水戸芸術館そのものをポストモダン建築として体験できる構成も見どころだ。建築を超えて、思考の軌跡そのものに触れるような時間が流れる。

《奈義町現代美術館》1994年竣工、1994年、水彩、H18×W17.1cm ©Estate of Arata Isozaki

スケッチ・ブックより《パルテノン神殿、アクロポリス》、2000年12月、水彩、H14×W19.5×D3 cm ©Estate of Arata Isozaki

ひとつの建築を越えて、思考が漂う。歩くたびに景色が変わる、その瞬間こそが“群島”の中を旅する体験になる。

【プロフィール】
磯崎新
1931年大分市生まれ。1954年東京大学工学部建築学科卒業。
1963年磯崎新アトリエを設立。以後、国際的な建築家として、旧大分県立中央図書館(現アートプラザ)、群馬県立近代美術館、ロサンゼルス現代美術館、バルセロナオリンピック競技場などを設計。
近年では、カタール国立コンベンションセンター、ミラノアリアンツタワー、上海シンフォニーホール、湖南省博物館、中央アジア大学、中国河南省鄭州市の都市計画などを手がけた。
世界各地の建築展・美術展のキュレーションや設計競技の審査員、シンポジウムの議長を務め、代表的な企画・キュレーションに「間-日本の時空間」展(1978–81)、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館コミッショナー(第6~8回)、同展日本館展示「亀裂」で金獅子賞受賞(1996)などがある。
建築思想の国際会議「ANY 会議」を10年にわたり企画(1991–2000)。著書に『建築における「日本的なもの」』(新潮社/MIT Press)、過去50年間の文章を編んだ『磯崎新建築論集』(全8巻、岩波書店)など多数。建築のみならず、思想・美術・デザイン・文化論・批評など多岐にわたる領域で活躍。2019年「プリツカー賞」受賞。

【開催情報】
展覧会名:磯崎新:群島としての建築
会期:2025年11月1日(土)~2026年1月25日(日)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
開場時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日(ただし11月3日、11月24日、1月12日は開館)、11月4日(火)、11月25日(火)、年末年始(2025年12月27日(土)~2026年1月3日(土))、1月13日(火)
観覧料:一般900円、団体(20名以上)700円
※高校生以下・70歳以上・障害者手帳等を持つ方と付き添い1名は無料(要身分証明書)
主催:公益財団法人水戸市芸術振興財団
URL:https://www.arttowermito.or.jp/gallery/

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