銀座で光の記憶に触れる、鈴木のぞみ個展「Slow Glass — The Mirror, the Window, and the Door」10/3(金)開催
鈴木のぞみは、絵画の出自をもちつつ独学で写真表現を深め、写真の原理を通して事物に宿る記憶を顕在化させる制作で注目を集めてきた。代表作《Other Days, Other Eyes》(「窓」のシリーズ)では、実在の窓そのものに写真乳剤を塗布して直接焼き付けるという独自の手法を用い、かつてその窓が受けとめてきた光と時間の層を静かに浮かび上がらせる。本展では「窓」に加え、「鏡」「扉」をモチーフにした新作を含む約15点が並ぶ予定だ。

Light of Other Days:吉田理容室壁に設えた大きな3枚の鏡 2020 H. 160×W. 380×D. 92cm Photo by Shinya Kigure Courtesy of Arts Maebashi ©Nozomi Suzuki

Other Days, Other Eyes:高山邸2階廊下の窓 2017 H. 110×W. 55×D. 5cm Photo by Shinya Kigure ©Nozomi Suzuki

Light of Other Days:白河二丁目町会会館勝手口の扉 2018 H. 170×W. 71×D. 16.5cm ©Nozomi Suzuki
展覧会タイトルにある“Slow Glass”について、鈴木はステートメントで次のように述べている。
「“Slow Glass”とは、イギリスのSF作家ボブ・ショウが短編集『Other Days, Other Eyes』(1966)に描いた、過去の光を遅れて届ける空想上のガラスです。その性質は、光を受けとめ、時間を経て像を現す写真の根本的な原理と似ています。」
この空想上のガラスの概念を参照しながら、鈴木は写真が光と時間を受けとめ像を立ち上げる仕組みと響き合わせ、窓・鏡・扉といった日常の境界に潜む記憶をすくい上げようとしている。
会期中の10月17日(金)18:30–19:30には、美術史家・伊藤俊治とのトークイベントも予定されている。
作品の前に立つと、視線はガラスのこちら側と向こう側を往復する。光が置いていった残響のような像をたどりながら、私たち自身の記憶もまた、静かに更新されていくのを体験できるだろう。 
【作家プロフィール】
鈴木のぞみ
1983年埼玉県生まれ。東京造形大学絵画専攻卒業、東京藝術大学大学院修了(先端芸術表現/博士後期課程)。2025年「第41回 写真の町東川賞」新人作家賞受賞。個展に「HIRAKU Project Vol.16 鈴木のぞみ『The Mirror, the Window, and the Telescope』」(ポーラ美術館 アトリウム ギャラリー、2024)ほか。作品は東京都写真美術館、アーツ前橋などに収蔵。
Instagram:@nozomisuzuki.0914
【開催情報】
展覧会名:Slow Glass — The Mirror, the Window, and the Door
会期:2025年10月3日(金)〜10月26日(日)
会場:ポーラ ミュージアム アネックス(〒104-0061 東京都中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階)
開館時間:11:00〜19:00 ※10月17日(金)のみ18:00まで(入場は閉館30分前まで)
休館日:会期中無休
観覧料:無料
URL:https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/
Instagram:@pola_annex