松岡一哲「もっと深くて鋭くて、危なくて、たまらなく美しいやつ。 普通じゃないもの。」9/6(土)より開催
松岡は、長年愛用しているフィルムカメラ・オリンパス μ(ミュー)で撮影を続けている。その作品群は統一された淡い色調をまとい、独特の浮遊感を漂わせる。
被写体は旅先で出会った風景や身近な人々、ヌード、光漏れによって偶然写り込んだ抽象的なイメージなど多岐にわたる。被写体のブレや甘いピント、意図しない露光、現場で起こる予期せぬ事象を積極的に受け入れることで、自身の作品の輪郭を柔らかく保ち、何かを断定するのではなく、そっとすくい上げるように世界の一部をやさしく手渡す。

松岡一哲「bird」、2025年、Cプリント © Ittetsu Matsuoka / Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film
さらに、彼の写真には脚光を浴びるものとそうでないものとを分け隔てなく肯定する眼差しが息づいている。見過ごされてしまう場所や、切り取られない部分にも美しさが宿ることを気づかせてくれる。
私たちは外界と自身の内面を言葉によって表象することで他者とコミュニケーションをとるが、その際、大切なニュアンスや周辺的な意味合いが切り捨てられ、鋭く研ぎ澄まされた言葉が時に他者を傷つけてしまうこともある。
松岡は写真という非言語メディアを通して世界を独自の視点で捉え、言葉によって形作られた固定観念や価値観を解きほぐし、人や風景の未知なる様相を写し出す。

松岡一哲「Okinawa」、2025年、Cプリント © Ittetsu Matsuoka / Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film
本展は、写真というメディアの可能性を再考させるとともに、日常の中に潜む予期せぬ美のかたちに出会わせてくれる場となるだろう。
【プロフィール】
松岡一哲
1978年岐阜県生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業。写真家として活動するかたわら、2008年にテルメギャラリーを立ち上げ運営。日常の身辺を撮影しながらも、等価な眼差しで世界をとらえ続けている。主な個展に「マリイ」BOOKMARC(東京、2018年)、「マリイ」森岡書店(東京、2018年)、「Purple Matter」ダイトカイ(東京、2014年)、「やさしいだけ」流浪堂(東京、2014年)、「東京 μ粒子」テルメギャラリー(東京、2011年)など。現在は東京を拠点に活動。
【開催情報】
展覧会名:松岡一哲「もっと深くて鋭くて、危なくて、たまらなく美しいやつ。 普通じゃないもの。」
会期:2025年9月6日(土)– 10月11日(土)
会場:タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム
開館時間:12:00 – 19:00
休館日:日・月・祝祭日
観覧料:無料