小森紀綱と山田康平による二人展「空白の翼廊」、9/6(土)よりHENKYOで開催



会期初日となる9月6日(土)には、彫刻家・名和晃平氏を特別ゲストに迎えたトークイベントも予定されている。入場料は無料で、開催時間は12:00から19:00まで。なお、日曜・月曜・祝日は休廊となる。
今回の展覧会では、二人のアーティストによる独自の表現世界を体感できる機会となっている。
公式ステートメントは以下の通り。
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男は彫刻家だった。昔は祖父に憧れて建築家を志していた時期もあったのだが、気づけば彫刻に魅せられていた。
自身の作品に建築に通ずる美意識を見出し、木や石を削り続けて長い年月を過ごしてきた。だが、いつからか男は違和感を抱いていた。作品は何か(或いは誰か)のために作り続けてきたはずだったが、その「何か」が思い出せない。
ある日、男は夢を見た。柱が立ち並び、アーチが交差し、壁が果てしなく続いていた。見上げれば天井はなく、壁には扉も窓もないのだが、どこからともなく光が降り注いでいた。いや、壁ではなかった。それは果てしなく続く書架だった。書架には無数の書物が並び、そのどれもが彼が彫刻のために描き溜めたデッサンや設計図といった記録だった。中には男の知らない記録まで混ざっていた。やがて、一人の通行人が現れ男に尋ねた。
「これは何の記録ですか?」
「わからない。ただ、書き続けている。」
通行人は本を一冊手に取り、ぱらぱらとめくる。
「これは記録ではなく、空白ですね。」
男は答えなかった。
「あなたの仕事は、いつ終わるんです?」
「終わりはない。」
「では、あなたも書架の一部になっていくんですね。」
目が覚めると、男は奇妙な焦燥感に駆られた。何かを作らなければならない。だが何を作るべきか分からない。
ただ、夢の中の世界がどこかに存在するような気がしてならなかった。
六十歳を目前にしたある日、男が丘の上でデッサンをしていると頭上から二羽の鳥が落ちてきた。
いや、鳥ではない。見事な鳥が彫られた石だった。石は男のすぐ目の前にぼてっと落ち、一方の鳥の片翼は砕けていた。男は頭を上げてみたがそこに広がるのは広大な青空だけだった。
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-展覧会概要
展覧会名:「空白の翼廊」
会期:2025年9月6日(土) 〜 9月27日(土)
開催時間:12:00 〜 19:00
休廊:日曜、月曜、祝日
入場料:無料
会場:HENKYO(東京都渋谷区神宮前5-9-15-B2F)
協力:タカ・イシイギャラリー
-トークイベント
日時:9月6日(土)17:00 〜 18:00
特別ゲスト:彫刻家・名和晃平
※Entrance Free