本展では、コスタが1994年の長編第2作『溶岩の家（Casa de Lava）』の制作過程で編んだスクラップブックをもとに構成された写真作品群と、プリンシペの近年のプロジェクト『内なる海（Mar Interior）』を中心に紹介する。

Casa de lava - Caderno page #4 ©︎Pedro Costa, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

Breakfast guests, Ankara, Turkey, 2012, 16 x 20 in. ©︎André Príncipe, Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

『溶岩の家』の制作準備段階で編まれたスクラップブックには、絵画や写真、手紙、新聞記事、文学の引用、ポートレイトなど多様なイメージが静かに貼り重ねられている。コスタはこれを「視覚的シナリオ」と呼び、「映画が持ちえなかった皮膚の下の臓器」であり、「失われゆくものへの静かな詩」だと語っている。それは映像に先立って存在し、作品のトーンを決定づけた。これをもとに制作されたプリント群が、写真作品として展覧会で紹介されるのは今回が初めてとなる。

Casa de lava - Caderno page #8

Casa de lava - Caderno page #22

Casa de lava - Caderno page #39

同時に展示されるプリンシペの『内なる海』は、神話的な風景と記憶の断片が交錯する写真群で構成される。彼の言葉を借りれば、そこでは「古い神話が呼び起こされ、野生の動物たちは足場（スキャフォルディング）に向き合う」。鏡と窓は出口であり、同時に罠でもある――映像では語りきれないものを、写真によって掘り起こそうとする行為がそこにある。

Going back home, Comporta, Portugal, 2011, 16 x 20 in.

Dinner in Galata apartment, Istanbul, 2013, 16 x 20 in.

Fire, Portugal, 2021, 16 x 20 in.

ふたりは長年にわたり親密な関係を築いてきた。プリンシペが主宰する出版社〈Pierre von Kleist〉では、コスタの作品集も刊行されており、その協働は制作の枠を越えて展覧会の構造そのものに響いている。

会期中の8月30日（土）には、作家ふたりによるサイン会も予定されており、オンラインショップで作品集を予約購入した来場者には、ギャラリーにて直接サインが手渡される。

また、8月28日（木）からは東京都写真美術館にて、コスタの大規模個展「総合開館30周年記念 ペドロ・コスタ インナーヴィジョンズ」も開催される。本展とあわせて、現在進行形の思考と実践をたどってみてほしい。

【プロフィール】
ペドロ・コスタ（Pedro Costa）
1958年リスボン生まれ。『溶岩の家』（1994）、『ヴァンダの部屋』（2000）、『コロッサル・ユース』（2006）などで知られる。『ホース・マネー』（2014）、『ヴィタリナ』（2019）でロカルノ国際映画祭金豹賞を受賞。東京造形大学客員教授。
・フィルモグラフィーほか詳細はこちら

アンドレ・プリンシペ（André Príncipe）
1976年ポルト生まれ。アーティスト、映画監督、出版者。荒木経惟や森山大道を追ったドキュメンタリー『日記をたどる』（2011）や『Flamingo Field Without Flamingos』（2014）などで国際的に注目される。出版社〈Pierre von Kleist〉を主宰し、編集・デザインも担当。
・PierrevonKleist公式サイト https://www.pierrevonkleist.com/

⸻

【開催情報】
展覧会名：ペドロ・コスタ「溶岩の家」＆アンドレ・プリンシペ「内なる海」
会期：2025年8月7日（木）− 9月6日（土）
開館時間：火曜〜土曜 11:00‒19:00（土曜 13:00‒14:00 CLOSED）
休館日：日曜、月曜、祝日、夏期休廊 8月12日（火）− 8月16日（土）
会場：Akio Nagasawa Gallery Ginza
〒104-0061 東京都中央区銀座4-9-5 銀昭ビル6F
TEL：03-6264-3670
公式ページはこちら