炸裂する墨跡とデザインの邂逅、「井上有一の書と戦後グラフィックデザイン 1970s-1980s」9/6(土)松濤美術館で開幕
井上有一(1916-1985)は、教師としての日常を送りながら、書に生涯を捧げた人物。戦争の記憶を背負い、墨と筆でしか表せない生の痕跡を刻んできた。その力強い書に反応したのが、1970年代以降のグラフィックデザイナーたちである。浅葉克己や井上嗣也、糸井重里らとともに、井上の作品は広告や印刷物を通じて街へ広がっていった。

井上有一《花》1957年 墨・紙 個人蔵 Ⓒ UNAC TOKYO

井上有一《母》1961 年 墨・紙 京都国立近代美術館蔵 Ⓒ UNAC TOKYO

井上嗣也「1986年正月/貧」ポスター、1986年 AD・D:井上嗣也 A:井上有一(ウナックトウキョウ) C:糸井重里 PL:對馬壽雄 ADV:パルコ 個人蔵 Ⓒ UNAC TOKYO

井上嗣也「COMME des GARÇONS '96-'97AUTUMN WINTER DM」1996年 AD・D:井上嗣也 A:井上有一(ウナックトウキョウ)CD:川久保玲 ADV:COMME des GARÇONS Ⓒ UNAC TOKYO
本展では、初期から晩年までの代表作に加え、福田繁雄が装丁を手がけた『花の書帖』(1971年)、東京大空襲を背景に生まれた《噫横川国民学校》(1978年)、そして晩年の《夢幻記》(1979年)が並ぶ。

井上有一著・福田繁雄造本『花の書帖』求龍堂 1971年 個人蔵 Ⓒ UNAC TOKYO

井上有一《噫横川国民学校》1978年 墨・紙 群馬県立近代美術館蔵 Ⓒ UNAC TOKYO

井上有一《夢幻記》ベニヤ板・油彩 1979 年 個人蔵 Ⓒ UNAC TOKYO
書とデザインが響き合った時代を振り返ることで、「戦後」という言葉に重ねられた記憶と想像の幅を見つめ直す機会になるはず。静かな余韻とともに、今に続く問いを投げかけてくれる展覧会になりそうだ。
【開催情報】
展覧会名:井上有一の書と戦後グラフィックデザイン 1970s-1980s
会期:2025年9月6日(土)~11月3日(月・祝)
前期:9月6日(土)~10月5日(日)
後期:10月7日(火)~11月3日(月・祝)
会場:渋谷区立松濤美術館(〒150-0046 東京都渋谷区松濤2-14-14)
開館時間:10:00~18:00(金曜は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし9月15日、10月13日、11月3日は開館)、9月16日(火)、9月24日(水)、10月14日(火)
観覧料:一般 1,000円(800円)、大学生 800円(640円)、高校生・60歳以上 500円(400円)、小中学生 100円(80円)
※( )内は団体10 名以上及び渋谷区民の入館料
※土・日曜、祝日は小中学生無料
※毎週金曜は渋谷区民無料
※障がい者および付添1名は無料
※リピーター割引あり
URL:https://shoto-museum.jp/exhibitions/209inoue/