イチ・タシロが初めて企画するグループ展「Fault Lines」、9/7(日)までGallery Commonで開催中
「Fault Lines(断層線)」というタイトルは、地球の内側を露呈させる地質学的な亀裂だけでなく、文化、技術、感情における比喩的な裂け目をも想起させる。出展する3人のアーティストは、層や亀裂、開口部といったテーマを通じ、表層の下に潜む物質的・文化的記憶や歴史の余波を掘り起こすように制作を行っている。
イチ・タシロは、積層したキャンバスを彫刻し、燃焼させる過程を制作に取り入れている。その変容的なプロセスは、切断や燃焼という行為を癒しの動作に変換し、能動的な瞑想であり、内面と外界の両方を探る行為として機能している。

Ichi Tashiro. Untitled. 2025. Oil stick, oil pencil, and charring on cotton canvas and wood. 1620 x 1303 x 35 mm. Courtesy of Gallery Common.
ミン・ラン・トランは、香港出身でパリを拠点に活動。日本滞在中に調達した印刷物、布地、顔料、インク、木材などを用いて、環境や文化的風土、集合的記憶の痕跡に応答するミクストメディア作品シリーズを制作している。その作品は、絵画、書、パフォーマンスを横断しながら、身体性、抵抗、言語への探求を押し広げている。

Minh Lan Tran. Untitled 0. 2025. Sumi ink on wood. 1820 x 910 mm.
ローズ・サレーヌはニューヨークを拠点に活動し、「ダイナミック・セット」と名付けられた、記憶や価値、交換の物語を語る品々のコレクションを扱っている。新作はこの土地の歴史や素材に反応し、個人的な物語と集合的記憶の入り組んだ関係を明らかにする。本展ではさらに、テクノロジーと人間の記憶、感情の相互作用を探求し、日本の文化的・経済的歴史の中心であるテクノロジーとメディアの関係を記録している。

Rose Salane. Resurfaces in the heart: a memory that lingers 心に蘇る 消し去れぬ記憶. 2025. Found computer keyboard pieces on mat, wood frame. 814 x 1118 x 550 mm (framed).
3人のアーティストによって提示される「Fault Lines(断層線)」は、境界でありながら同時に接点でもある。触れられ、崩され、あるいは露出した表層の下に何が潜んでいるのか。観る者はその思索へと誘われるだろう。
見えない裂け目に潜む記憶と感情を、あなた自身の眼で探してみてほしい。
【作家プロフィール】
Ichi Tashiro(イチ・タシロ)
1984年愛媛県生まれ。独学で制作を続け、即興的なプロセスによる層や亀裂の表現を特徴とする。国内外で個展・グループ展を開催し、アートバーゼル香港などにも参加。
Instagram:https://www.instagram.com/ichi_tashiro_/
Minh Lan Tran(ミン・ラン・トラン)
1997年香港生まれ、パリ在住。絵画、書、パフォーマンスを横断し、身体性や言語の可能性を追求。美術史を学び、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで絵画の修士号を取得。
Instagram:https://www.instagram.com/minhlan.tran/
Rose Salane(ローズ・サレーヌ)
1992年アメリカ生まれ、ニューヨーク拠点。都市生活を形作る記憶や価値、制度的構造との関わりを探求。ニューミュージアム・トリエンナーレ(2021)、ホイットニー・ビエンナーレ(2022)などで発表。
Instagram:https://www.instagram.com/rose.salane/
【開催情報】
展覧会名:「Fault Lines」
出展作家:Ichi Tashiro, Minh Lan Tran, Rose Salane
会期:2025年8月8日(金)~9月7日(日)
会場:Gallery Common(東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F)
開館時間:12:00-19:00(水~日)
休館日:月・火
観覧料:無料
URL:https://www.gallerycommon.com/ja/exhibitions/fault_lines
Instagram:https://www.instagram.com/gallerycommon/