構成と偶然が織りなす緊張と調和の美、前田紗希の個展「Interplay」5/10(土)よりMISA SHIN GALLERYで開催
前田紗希は、これまで油彩による抽象絵画で独自の表現を展開してきたが、近年その表現はさらに深化しており、本展はその現在地を提示する機会となる。
前田の作品に共通するテーマは「構成と偶然」、「抽象と物質感」、「感覚と理性」の間に立ち上がる緊張と調和だ。画面を斜めに貫く線や、幾重にも重なる三角形のレイヤー、繊細にコントロールされた色面が織りなす構造は、均衡を保ちながらも常に変化の可能性を秘めている。静かに立ち現れる画面の奥行きには、透視図法の残像や折り紙の展開図のような二次元と三次元を往還する感覚が宿っており、観る者に豊かな視覚体験を提供する。
特に注目すべきは、前田が油彩で用いるペインティングナイフの独自の使用法である。これにより生まれるマチエールは、擦りガラスのように画面を覆い隠し、その奥に広がる空間を想像させる。さらに青を基調に、金、銀、白、黒といった色彩の選択は、光と影、前景と背景を反転させるような視覚的揺らぎを生み出し、作品に深みを与えている。
また、本展で初めて発表されるドローイング作品では、より即興性と軽やかさが強調されており、これまでの油彩作品とは異なる側面を見せている。メディウムや技法の違いがあるものの、紙の表層に宿る鋭い構成感と静かな緊張感は、油彩画とドローイングの間に生まれる関係性を通して、前田の思考の動線を浮かび上がらせている。
展覧会タイトル「Interplay(インタープレイ)」には、「相互関係」「相互作用」という意味が込められている。油彩とドローイング、線と面、素材と身体性が互いに影響を与え合いながら展開される本展は、前田紗希の新たな挑戦と、絵画における豊かな対話を示すものとなるだろう。
是非この機会に、新たな表現世界を探求する前田紗希の最新作をご覧いただきたい。
Maeda Saki, 24_27, 2024, Oil on canvas, 130 x 162 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
Maeda Saki, 24_27, 2024, Oil on canvas, 130 x 162 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
Detail : Maeda Saki, 24_27, 2024, Oil on canvas, 130 x 162 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
Detail : Maeda Saki, 24_27, 2024, Oil on canvas, 130 x 162 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
Maeda Saki, 25_11, 2025, Oil on canvas, 72.7 x 60.6 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
Detail : Maeda Saki, 25_11, 2025, Oil on canvas, 72.7 x 60.6 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
Maeda Saki, line_2025, 2025, Oil-based ink, acrylic pen, gouache on Maya black paper, 18.7 x 14.6 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
Maeda Saki, line_2025, 2025, Oil-based ink, acrylic pen, gouache on Maya black paper, 18.7 x 14.6 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
展覧会情報
会期:2025年5月10日(土) ~ 6月7日(土)
会場:MISA SHIN GALLERY
住所:〒106-0047 東京都港区南麻布 3-9-11 パインコーストハイツ 1F
開館時間:12:00 〜 19:00
休館日:日・月・祝日
入館料:無料
URL:https://www.misashin.com/