ワタリウム美術館で2/15(日)より開催「ジャッド|マーファ展」、ドナルド・ジャッドが残した空間と思考
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1970年代、ジャッドはニューヨークを離れ、メキシコ国境にほど近いテキサス州の町マーファへと移り住んだ。町に残る既存の建物を、自身の生活と制作の場へと作り変えながら、彼は作品の恒久的な設置に向き合っていく。そこには、展示を「その場限りのパフォーマンスにしてはならない」という、アートと展示の完全性に対するジャッドの強い信念があった。

15点の無題の作品 1980–1984年コンクリート チナティ財団、テキサス州マーファ Permanent collection, The Chinati Foundation, Marfa, Texas. Photo by Florian Holzherr, courtesy The Chinati Foundation. Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS, NY/JASPAR, Tokyo.

無題 1991 年 陽極処理したアルミニウム、黄色に透明な琥珀色のプレキシグラス ジャッド財団蔵 Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS, NY/JASPAR, Tokyo.
マーファという場所について、ジャッドは「この場所の主な目的は、アートの真剣で恒久的な展示である」と記している。1971年に初めてマーファを訪れて以降、彼は町中の既存の建物を、自身の生活と制作のためのスペースへと転用していった。それは、「作品にとって作品を取り囲む空間は決定的に重要である」という信念の実践でもあった。1986年には、大規模な作品の恒久展示を目的とした独立した非営利施設としてチナティ財団を設立。チナティにおいてジャッドが意図したのは、アート、建築、土地を融合させ、調和させることだった。マーファにある建物には、ジャッド自身の作品と家具に加え、他のアーティストの作品やデザイナーの家具も設置されており、彼のアートと建築の関係性を理解する手がかりとなっている。
本展では、1950年代に制作された初期の絵画作品から、1960〜90年代の立体作品までを通覧するとともに、マーファにおける空間構想を、ドローイング、図面、写真、映像、地図などの資料を通して紹介する構成となっている。作品の制作、展示、設置、そして生活を切り離さずに考え続けたジャッドの実践が、複数の視点から辿られる。

無題 1955年 キャンバスに油彩 ジャッド財団蔵 Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS,NY/JASPAR, Tokyo.

ウェルフェア・アイランド 1956年 キャンバスに油彩 ジャッド財団蔵 Donald Judd Art © 2026 Judd Foundation/ARS, NY/JASPAR, Tokyo.
1950年代の初期絵画は、抽象表現主義や同時代の作家たちの影響を受けながら制作された作品群で、日本初公開となる作品も含まれる。風景のような具体的なものを対象としつつ、画面は次第に抽象化し、自然界の形や色彩が強調されていく過程を見ることができる。
1960年代以降、ジャッドは絵画から離れ、立体作品の制作へと向かった。本展では、1960年代半ばから1970年代の作品に加え、10個のユニットが垂直に設置される「スタック」と呼ばれる作品(1990年代の作例)などが展示される。
また、1978年にワタリウム美術館の創設者・和多利志津子がジャッドを日本に招聘して開催した「ジャッド展」(1978年2月22日〜3月22日)に関する、ドキュメントのコーナー展示も設けられる。当時の資料やカタログ、収蔵作品、ドローイングを通して、日本とジャッドの関係が紹介される。
作品、建築、土地、そして展示という行為。それらを切り離すことなく考え続けたドナルド・ジャッドの実践は、完成された答えというよりも、いまなお問いとして残されている。
【プロフィール】
ドナルド・ジャッド(1928–1994)
20世紀を代表する重要なアーティストの一人であり、アートのみならず建築やデザインの分野にも大きな影響を与えた。
1928年、アメリカ・ミズーリ州エクセルシオール・スプリングスに生まれる。第二次世界大戦後、アメリカ合衆国陸軍に従軍したのち、コロンビア大学で哲学と美術史を学び、アート・スチューデント・リーグで絵画を修めた。1959年から1965年にかけては美術評論家としても活動し、同時代の美術を批評の立場から捉えていた。
1960年代前半までは絵画を制作していたが、その後三次元作品へと移行し、アートの概念に大きな変化をもたらす。ジャッドは、恒久展示(パーマネント・インスタレーション)という考え方を展開し、1968年にニューヨークのスプリング・ストリートに建物を購入、作品の恒久的な設置を試みた。
1970年代以降はテキサス州マーファを拠点に活動し、作品、建築、土地を切り離さずに捉える実践を続ける。1977年にジャッド財団の構想を立ち上げ、1986年にはチナティ財団を設立。自身および同世代作家の大規模作品を恒久的に展示する場を築いた。
約40年にわたり、アメリカ、ヨーロッパ、アジア各地で展示を行い、作品は世界中の美術館に収蔵されている。
【開催情報】
展覧会名:ジャッド|マーファ展
会期:2026年2月15日(日)– 6月7日(日)
会場:ワタリウム美術館
開館時間:11:00–19:00
休館日:月曜日(2/23、5/4は開館)
入館料:
大人 1,500円、大人ペア 2,600円、学生(25歳以下)・高校生・70歳以上・身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方および介助者(1名まで)1,300円、小・中学生 500円
主催/会場:ワタリウム美術館
特別協力:ジャッド財団
資料協力:チナティ財団
URL:http://www.watarium.co.jp
Instagram:@watarium
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