交錯する眼差し、「アーティストの目は何をみていたか―ビュフェ、エコール・ド・パリ、そして現代アートへ」後期が11/28(金)より開催
ベルナール・ビュフェ(1928–1999)は、時に孤高の天才として語られてきたが、実際にはサロン・ド・メや青年画家展など戦後フランスのアート・シーンを形成する場に積極的に関わり、藤田嗣治やモーリス・ユトリロといったエコール・ド・パリの作家たちと並び立っていた。その一方で、彼は同時代の現代アーティストとして、ヴェネツィア・ビエンナーレにも参加するなど、常に「今」に触れ続けていた存在でもあった。
本展後期では、「抽象」「自然」「美術史」の3つの新たなセクションが加わり、前期に続き多様な文脈の中で作品が交差する構成となっている。特に注目したいのは、ビュフェとユトリロ、そして現代作家・杉戸洋の風景画が一堂に会する場だ。ビュフェがかつて所有していた画集にはユトリロの名が記されており、ユトリロへのまなざしが、ビュフェの作品の中に息づいている。そしてそれを見抜いていた杉戸は、「ダークナイト」という文章の中で、両者の共鳴について触れている。3人の風景画が並置されることで、時間と文脈を超えた対話が立ち上がる。

モーリス・ユトリロ《シャルトルの教会》1936 年頃、油彩・キャンバス、寄託

杉戸洋《untitled》2011 年、油彩・キャンバス ©Hiroshi Sugito
さらに、ビュフェが直接描くことはなかった「抽象」の領域にも光が当たる。1960年代の作品《海》などには、抽象絵画を彷彿とさせる空間と色面が広がる。それをイケムラレイコの《あさのうみ》と並置することで、具象と抽象の間に漂う感覚が呼び覚まされる。

ベルナール・ビュフェ《海》1966 年、油彩・キャンバス

イケムラレイコ 《あさのうみ》2005 年、麻布・油彩 ©Leiko Ikemura, Courtesy of the artist and ShugoArts
「自然」セクションでは、ビュフェが好んで描いた花々や動物たちのモチーフが、丸山直文や持塚三樹の作品とともに展開される。同一の主題を扱いながらも、表現の方法は驚くほど異なり、それぞれのアーティストが見つめる自然の輪郭が浮かび上がる。

丸山直文《der Laubfrosch 2》2005 年 綿布・アクリル ©Copyright the artist, Courtesy of ShugoArts

持塚三樹《light sleep》2012 年 油彩・キャンバス ©Courtesy of the artist and MISAKO & ROSEN

ベルナール・ビュフェ《リンゴの花の咲く道》1990 年 油彩・キャンバス
そして「美術史」セクション。ビュフェは若き日にルーブル美術館へ通い、古今の名画の作例を積極的に吸収していた。《父と息子》に見られるキュビスム的な構図や、竹﨑和征の《広重、りんごと富士》などの作品を通じて、過去の作品に向けられた眼差しが、現代の絵画の構造やモチーフに反映されている。

ベルナール・ビュフェ《父と息子》1945 年、油彩・キャンバス

竹﨑和征《広重、りんごと富士》2009 年 油彩、スプレー、ゴム・カンバス ©Courtesy of the artist and MISAKO & ROSEN
一見バラバラに思える表現たちは、視線を重ね、時代を越えて響き合う。そんな瞬間に、私たちは“見る”という行為の本質にふれるのかもしれない。
【出品作家(後期)】
ベルナール・ビュフェ、モーリス・ド・ヴラマンク、モーリス・ユトリロ、モイーズ・キスリング、ラウル・デュフィ、レイモン・サヴィニャック、デイヴィッド・ホックニー、イケムラレイコ、荻須高徳、佐々木愛、杉戸洋、須田悦弘、竹﨑和征、日高理恵子、藤田嗣治、丸山直文、村瀬恭子、持塚三樹、森村泰昌、山口晃、李禹煥
*出品作家は変更になる場合がございます。
【開催情報】
展覧会名:アーティストの目は何をみていたか―ビュフェ、エコール・ド・パリ、そして現代アートへ(後期)
会期:2025年11月28日(金)~2026年3月24日(火)
会場:ベルナール・ビュフェ美術館(静岡県長泉町東野クレマチスの丘 515-57)
開館時間:10:00〜17:00(11~2月は10:00〜16:30)※入館は閉館の30分前まで
休館日:水・木曜日(祝日の場合は開館し金曜日休館)、年末年始(12月24日〜2026年1月3日)
観覧料:大人1,500円/高校・大学生750円/中学生以下無料(20名以上の団体は100円引き)
アクセス:
・車:新東名・長泉沼津I.C.または東名・沼津I.C.→伊豆縦貫道 長泉I.C.出口から約5km
・電車:JR東海道線「三島駅」南口より富士急シティバス駿河平線
URL:https://www.buffet-museum.jp/
Instagram:@buffet_museum