アレクサ・クミコ・ハタナカとジョニー・ニエムの「根気と継続」、和紙から広がる光と心のつながり
紙の衣服や彫刻、テキスタイルがギャラリー空間に広がり、星座のように散りばめる壮大なインスタレーションが立ち上がる。細長い楮(こうぞ)から垂れる莢(さや)のようなピースは、儚さと同時に内側から輝く生命力を帯び、見る者を包み込む。

Alexa Kumiko Hatanaka, “Aftershocks” Paper patchwork, relief and gyotaku printmaking, natural dye, ink, antique papers, 144 × 192 in.

Alexa Kumiko Hatanaka, “Faultlines and Loneliness” hand carved and hand printed linocuts on handmade gampi paper, 95 × 190 in.

Alexa Kumiko Hatanaka, “freeze or fly, fly or fight” Patchwork of printed, sumi ink painted and naturally dyed washi from Kashiki Seishi, gyotaku, 79 × 51 in. and 83 × 51 in.
本展で用いられるのは、古代の技法で作られる希少な和紙。ハタナカは日本とベトナムの紙職人との交流を通じて作品を生み出し、その制作過程をニエムが映像と写真に記録している。伝統の継承や自然との共生といったテーマを軸に、自然環境を守ることが心の健やかさへとつながるというメッセージが込められている。
さらに、壊れやすさの中に潜む強さを見つめ、芸術と社会的活動を交差させながら「つながり」の大切さを伝える二人の姿勢が、展覧会全体を通して響き合っている。「根気と継続」は、工芸の哲学を根底に据えながら、自然の力と人との関わりをやわらかく、そして力強く映し出す場となっている。

Alexa Kumiko Hatanaka, “Spiral (Ruminate)” Linocut and gyotaku printing, vintage washi from Kashiki Seishi, konnyaku, 95 × 109 in., 2025

Alexa Kumiko Hatanaka, “Namazu” Washi patchwork (scraps collected over three years), gyotaku and linocut printmaking, natural dye, ink, 70 × 128 in.

Alexa Kumiko Hatanaka
長い時間をかけて石を削る水の流れのように、作品群は静かに、しかし確かに、自然の循環と人の心のつながりを思い出させてくれる。
【作家プロフィール】
アレクサ・クミコ・ハタナカ
日系カナダ人のクィア・アーティスト。紙を主な素材に版画、墨のドローイング、天然染料、縫製を組み合わせ、気候変動やメンタルヘルス、生きることの意味と向き合う。これまでにカナダ国立美術館、大英博物館、滋賀県立美術館、KOTARO NUKAGA(東京)などで作品を発表・収蔵。2025年にはセネガル・ブラックロックのレジデンスに参加予定。
Instagram:@alexahatanaka
ジョニー・ニエム
ベルリンを拠点に活動する映像作家・写真家。アナログ写真を中心に制作し、アイデンティティや帰属の感覚を探求。ハタナカとともにベトナムの伝統紙づくりを記録したドキュメンタリーを制作。
Instagram:@jhonny_5
【キュレータープロフィール】
ミャオシュアン・リウ
トロントを拠点とする中国系カナダ人アーティスト。彫刻やインスタレーションを中心に活動し、アジアのアーティスト集団「シューズ・オフ」に参加。国際的研究レジデンシー「モニュメンツ・オブ・ザ・フューチャー」にも参加し、記憶と未来の物語をめぐる研究を行ってきた。
Instagram:@liaomiu
【開催情報】
展覧会名:「根気と継続」
会期:2025年9月19日(金)~12月18日(木)
会場:カナダ大使館高円宮記念ギャラリー(東京都港区赤坂7-3-38 地下鉄「青山一丁目」駅より徒歩5分)
開館時間:月曜~金曜 10:00〜17:30(最終入場 17:00)
休館日:土曜、日曜、大使館休館日および臨時閉館日
観覧料:無料
※入館には政府発行の写真付身分証明書が必要。セキュリティチェックあり。公共交通機関の利用を推奨。