潮田登久子「玉里文庫 ―鹿児島大学附属図書館貴重書庫の景色―」、PGIで9/12(金)から開催
潮田は、家庭の冷蔵庫を撮影した代表作『冷蔵庫/ICE BOX』や「BIBLIOTHECA/本の景色」シリーズで知られる。身近な対象を通して、人々の時間の蓄積や空間の佇まいを静かに映し出してきた。

『字林⽟篇⼤全』 ©Tokuko Ushioda, Courtesy PGI
本展は、潮田が20年以上にわたり撮影を続けている「BIBLIOTHECA/本の景色」シリーズの第五作目となる最新作である。きっかけは、丸山眞男『戦中と戦後の間』(みすず書房)の本の美しさに惹かれ、「本をオブジェとして撮りたい」と感じたことに始まる。これまでに『みすず書房旧社屋』(2016年)、『先生のアトリエ』(2017年)、『本の景色/BIBLIOTHECA』(2017年)、『改修前 前川國男設計 神奈川県立図書館』(2024年)を発表し、書物やその周辺に広がる魅力を追い続けてきた。

桐箱九⼗⼋番 ©Tokuko Ushioda, Courtesy PGI

『理学類編』 ©Tokuko Ushioda, Courtesy PGI
今回展示されるのは、鹿児島大学附属図書館に収蔵される「玉里文庫」や、同館の貴重書庫に収められている他の貴重書を、2019年から3年にわたり撮影した作品群である。玉里文庫は、薩摩藩主・島津家の分家である島津久光が興した玉里島津家に伝わる蔵書群で、歴史資料や和漢書を中心に約18,900冊に及ぶ膨大な文献を所蔵する。鎌倉時代から幕末・明治維新にかけて南九州を治めた島津家の伝来文書のなかでも、学術的価値の高いコレクションとして知られている。

桐箱六⼗五番 ©Tokuko Ushioda, Courtesy PGI

桐箱六番、⾚塗り ©Tokuko Ushioda, Courtesy PGI

『漂海紀聞』 ©Tokuko Ushioda, Courtesy PGI
書庫内の室内灯と隣室から差し込む自然光を用いて撮影された写真は、モノクロとカラーで表現され、静謐な収蔵空間と本の存在感、さらに史料に宿る時間の重みまでもが描き出されている。長い歴史を抱えた蔵書と、その場の光が織りなす景色は、観る者を思索へと誘うに違いない。
【プロフィール】
潮田登久子(うしおだ とくこ)
東京都生まれ。1963年、桑沢デザイン研究所リビングデザイン研究科写真専攻卒業。大辻清司の指導を受け、写真家の道へ。1966年から1978年まで桑沢デザイン研究所及び東京造形大学で講師を務める。1975年頃よりフリーランスとして活動を開始。代表作に『冷蔵庫/ICE BOX』、「BIBLIOTHECA/本の景色」シリーズなど。2018年に土門拳賞、日本写真協会作家賞、東川賞国内作家賞、2019年に桑沢特別賞を受賞。2022年には写真集『マイハズバンド』がParisPhoto–Aperture PhotoBook Awards審査員特別賞を受賞。
【開催情報】
展覧会名:潮田登久子「玉里文庫 ―鹿児島大学附属図書館貴重書庫の景色―」
会期:2025年9月12日(金)- 11月9日(日)
会場:PGI(東京都港区東麻布2-3-4 TKBビル3F)
開館時間:月~土 11:00-18:00
休館日:日曜・祝日(11/9を除く)
観覧料:無料
展示カタログ:『玉里文庫 ―鹿児島大学附属図書館貴重書庫の景色―』 A4変形16ページ、¥2,200(税込)
URL:https://www.pgi.ac/