「Future Echoes / フューチャーエコー」、9/13(土)まで nca | nichido contemporary artで開催中
会場には、絵画から映像、インスタレーションまで多様な表現が並び、作家たちが自らの経験や環境に応答する姿が示されている。グローバル化の陰で進行する公害や気候変動、労働や人権、分断といった問題を背景に、各作家が自身の経験や環境と向き合い、未来への問いを観客へと投げかける場となる。

Courtesy of nca | nichido contemporary art. Photo by Kei Okano
出展作家の実践は、それぞれの立ち位置や経験を起点にしている。ブスイ・アジョウは、ミャンマーからタイへ移り住んだ来歴やアカ族の伝統を手がかりに、女性であり母である視点から、家父長制や貧困といった社会の現実に対峙する。井上亜美は、京都の山里で養蜂や狩猟を継続的に行いながら、人間と自然の関係を映像として紡ぎ出す。クリスタル・ルパは、夢と現実の境界を漂うような絵画を通じて、無意識や内的な空間を可視化する。ワンゲシ・ムトゥは、女性の身体が文化的な欲望や価値観を投影される場であることを、女性型ロボットや植物と同体化する身体などのモチーフを通して、多様なメディアで提示する。そしてしまうちみかは、コロナ禍や大地震の経験を背景に、地域に根付く信仰や祭事を掘り起こし、来訪神や祖霊の物語を絵画・彫刻・インスタレーションとして現在の風景へと呼び込む。
異なる背景をもつ5名の作品は、それぞれ固有の物語を語りながらも共鳴し合い、未来がいまここに反響するかのような気配を生み出している。
【出展作家】
・ブスイ・アジョウ|1986年ミャンマー生まれ、タイ・チェンライ拠点。近年の展覧会に「Berlin Biennale13 - passing the fugitive on -」(2025)、「AWT FOCUS/ Earth, Wind, and Fire: VISIONS OF THE FUTURE FROM ASIA」(2024)など。
・井上亜美|1991年宮城県生まれ。東京藝術大学大学院映像研究科修士課程修了。京都在住。猟や養蜂の実践を軸に制作。個展「The Garden」(2023)など。
・クリスタル・ルパ|1989年カリフォルニア生まれ、台北拠点。絵画から作曲まで横断。個展「PHOSPHENE REVERIE」(2025)、「EXOTICA」(2024)など。
・ワンゲシ・ムトゥ|1972年ケニア・ナイロビ生まれ。イェール大学MFA。個展「Black Soil Poems」(2025)、「Intertwined」(2023–24)など。
・しまうちみか|1987年熊本県生まれ・在住。崇城大学大学院修了。近年の個展「辺境の宇宙」(2024)など。
【開催情報】
展覧会名:「Future Echoes / フューチャーエコー」
会期:2025年7月26日(土)~9月13日(土)
会場:nca | nichido contemporary art(東京都港区六本木7-21-24 102)
開館時間:火–土 11:00–19:00
休館日:日・月・祝
観覧料:無料
URL:https://www.nca-g.com/