KOSAKU KANECHIKAで武田陽介が二会場同時個展、天王洲と京橋に響く光と記憶
「STRUCT.RE:CALL」(天王洲)
「STRUCT.RE:CALL」は、武田の代表作《Digital Flare》シリーズと最新作、そしてキャリア初期の2006年の作品を含む16点を展示。デジタルカメラが強い光に晒された際に生じるフレア現象を主題とする本シリーズは、光そのものではなく、光と撮影機構の関係性から生まれる「存在の刻印」を写し出す。
本展タイトルは、記憶の再呼び出しを意味する構造的プロトコルとしても示されており、「No field stores the soul. Still, it echoes.」という一文に象徴されるように、形式化されない記憶や名づけ得ぬ痕跡に光をあてる視点が貫かれている。構造と記憶のあいだにある“残響”が、非線形かつ断片的に写真として立ち上がってくる。
武田陽介《122445》2014 ©Yosuke Takeda, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
武田陽介《082055》2015 ©Yosuke Takeda, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
「Lost in Translation」(京橋)
一方、京橋会場では新シリーズ《Lost in Translation》を発表。ここでは結露した水滴をモチーフに、カメラの機種やレンズ、露光時間、動き方といった撮影条件を変えながら、同一の対象に対する多層的なアプローチが試みられている。選び抜かれた20点の作品は、光とテクスチャーが織りなす濃密な画面を生み出し、大胆な構図と微細な揺らぎが共存している。
本シリーズは、異国の地で言葉が通じないときに感じる「翻訳されなさ」や、沈黙の中で交わされる非言語的な感覚に焦点をあてている。武田自身のエッセイも展示に添えられ、言語の外にある“すくいきれなさ”や“声なきもの”を作品と文章の双方から照らし出す試みとなっている。
武田陽介《005226》2022 ©Yosuke Takeda, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
武田陽介《005118》2022 ©Yosuke Takeda, Courtesy of KOSAKU KANECHIKA
天王洲と京橋、ふたつの空間にまたがる武田陽介の現在地。この夏、写真が語る記憶と光の物語に触れてみてほしい。
武田陽介(たけだ ようすけ)
1982年愛知県⽣まれ。2005年に同志社⼤学⽂学部哲学科を卒業。現在は東京を拠点に制作。主な個展に「キャンセル」(3331 GALLERY、2012)、「Stay Gold」(タカ・イシイギャラリー、2014)、「Stay Gold: Digital Flare」(空蓮房、2014)、「Ash without fire here」(タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム、2019)、主なグループ展に「SHOWCASE #1 curated by minoru shimizu」(eN arts、2012)、「FOUR FROM JAPAN: CONTEMPORARY PHOTOGRAPHY」(Condé Nast Gallery、2015)、「The Sun Placed in the Abyss」(コロンバス美術館、2016)、「Japanese Photography from Postwar to Now」(サンフランシスコ近代美術館、2016)がある。作品はカディスト美術財団、サンフランシスコ近代美術館、スペイン銀⾏、ニューヨーク・プレスビテリアン病院などにパブリックコレクションとして収蔵されている。KOSAKU KANECHIKAでは昨年に続き、2回目の個展となる。
Instagram:@yosuketakeda.official
武⽥陽介展「STRUCT.RE:CALL」
会期:2025年7月1日(火)- 8月2日(土)
会場:KOSAKU KANECHIKA[ 天王洲]
住所:東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA ART COMPLEX I 5F
開廊時間:11:00 – 18:00
休廊日:日・月・祝
入場料:無料
武田陽介展「Lost in Translation」
会期:2025年7月5日(土)- 8月9日(土)
会場:KOSAKU KANECHIKA[京橋]
住所:東京都中央区京橋1-7-1 TODA BUILDING 3F
開廊時間:11:00 – 19:00
休廊日:日・月・祝
入場料:無料
URL:https://kosakukanechika.com
Instagram:@kosakukanechika