前田紗希の個展「Interplay」MISA SHIN GALLERYにて開催
MISA SHIN GALLERYにて開催される本展では、前田にとって初の試みとなるドローイング作品を含む新作群が発表される。油彩による抽象絵画を発表してきた前田の表現は、近年さらに深化を見せており、本展はその現在地を提示する機会となる。

Maeda Saki, 24_27, 2024, Oil on canvas, 130 x 162 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
前田の作品に通底するのは、構成と偶然、抽象と物質感、感覚と理性の間に立ち上がる緊張と調和の美。画面を斜めに貫く線や、幾重にも重なる三角形のレイヤー、繊細にコントロールされた色面が織りなす構造は、均衡を保ちながら、常に変化の可能性を内包している。静かに立ち現れる画面の奥行きには、透視図法の残像や折り紙の展開図のような、二次元と三次元を往還する感覚が宿っている。

Detail : Maeda Saki, 24_27, 2024, Oil on canvas, 130 x 162 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
特筆すべきは、前田が油彩で用いるペインティングナイフの独自の使用法である。それによって生成されるマチエールは、擦りガラスのように画面を覆い隠し、見る者にその奥を想像させる。また青を主軸に、金や銀、白や黒といった色彩の選択も、光と影、前景と背景を反転させるような視覚的揺らぎを生み出し、鑑賞体験に深度を与えている。

Maeda Saki, 25_11, 2025, Oil on canvas, 72.7 x 60.6 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
今回初めて発表されるドローイング作品では、より即興性と軽やかさが強調され、これまでの油彩作品とは異なる表情が見られる。メディウムや技法の違いはあるものの、支持体である紙の表層に宿る構成的な鋭さと静かな緊張感は、油彩画とドローイングの間に生まれる関係性を通奏低音として、前田の思考の動線を明確に浮かび上がらせている。

aeda Saki, line_2025, 2025, Oil-based ink, acrylic pen, gouache on Maya black paper, 18.7 x 14.6 cm, Photo by Yasuyo Takahashi
展覧会タイトル「Interplay(インタープレイ)」には、「相互関係」「相互作用」という意味が込められている。油彩とドローイング、線と面、素材と身体性など、交じり合わずともそれぞれが互いに影響し合いながら、作品の世界が広がっていく──本展は、そんな前田紗希の新たな挑戦と、絵画における豊かな対話を感じられるだろう。
展覧会初日のオープニングには、作家も在廊予定。
前田紗希について
1993年福井県生まれ。2015年京都芸術大学美術工芸学科油画コース卒業。ペインティングナイフのみで、油絵具を何十層にも重ね、常に上書き繰り返されてきた歴史の可視化を試みる。主な個展に「Accumulating as we pass by」YUKIKOMIZUTANI(東京、2022年)、GALLERY TOMO(京都、2019年)など。DMG森精機株式会社、OCA TOKYO(三菱地所株式会社)などにコレクションされている。2025年3月に、福井県の足羽川の河川敷にパブリックアートを設置。
MISA SHIN GALLERYについて
Tokyo, Japan / est. 2010
2010年11月に港区白金の元鉄工所の建物にオープン。2018年8月に大使館が多く立ち並ぶ閑静な住宅地、南麻布へ移転。国内外の優れたアーティストによる質の高い展覧会を開催している。アートの垣根を超え、建築や演劇など異なるジャンルと関連性や可能性を追求し、第一線で活躍するアーティストの歴史的な位置づけを行っていくことを目指している。また1960-1970年代の日本のコンセプチュアルリズムに焦点を当て、戦後の日本美術に対する新たな洞察、分析から展示を行い作品の再評価へつなげている。
HP:https://www.misashin.com/
住所:〒106-0047 東京都港区南麻布 3-9-11 パインコーストハイツ 1F
開館時間:12:00 – 19:00
休館日:日曜•月曜•
入場料:無料